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【完結保障】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第5章:本物の聖女と、呪われた大地の極楽温泉

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第67話 呪いの譲渡と、したたかな女帝の条件

 王宮の最も格式高い『太陽の玉座の間』。

 そこは今、異様な緊張感と、どす黒い嫉妬の念に包まれとった。

 豪奢な絨毯が敷かれた玉座の前に進み出たのは、漆黒の扇子を手にした若き女侯爵、エルゼ・ルミナ。

 彼女の背後には、護衛のアレンと、軍師気取りでヒョウ柄のポンチョを羽織ったうちが控えとる。


「――ルミナ侯爵。そなたのこれまでの功績、そして王都の流通を安定させた手腕を高く評価し、空位となっていた『旧グレミオ公爵領』の統治権を、正式にそなたへ下賜する」


 国王の厳かな宣言が響き渡ると、周囲に並ぶ古参の貴族たちから「おお……」というどよめきと、歯噛みするような音が漏れた。

 彼らは知らへんのや。

 その「旧公爵領」が、昨日うちが倒した地下の悪魔によって、すでに『二度と作物が育たぬ死の呪いの地』へと変貌させられとることを。


(……ふん。昨日までは喉から手が出るほど欲しかった土地やけど、今となってはただの『超特大の不良物件ババ』やからな。……さぁ、エルゼちゃん。おばちゃん直伝の『交渉術』、見せたりなはれ)


 うちは口角を上げ、エルゼの美しい背中を見守った。

 エルゼは、自分がこれから「最悪の負債」を引かされると知っていながら、微塵も表情を崩さない。それどころか、氷のように冷たく、気高い微笑みを浮かべて深く頭を下げた。


「ありがたき幸せに存じます、陛下。……ですが、一つだけ、お聞き届けいただきたい儀がございます」

「ほう。何だ、申してみよ」

「旧グレミオ公爵領は、先の公爵の失政により、ひどく荒廃していると聞き及びます。私がその土地をかつてのように豊かに復興させるためには、莫大な資金と時間が必要となります」


 エルゼがパチン、と扇子を閉じ、玉座を真っ直ぐに見据えた。


「つきましては、復興の特例として……向こう十年の『完全免税』と、王室からの干渉を一切受けない『絶対的な自治権』をお約束いただきたいのです」


 その言葉に、静まり返っていた広間が爆発したようにざわめいた。


「なっ……! 虫が良すぎるぞ、小娘!」

「広大な公爵領から十年も税を取らぬなど、前代未聞だ!」


 貴族たちが口々に非難の声を上げる。


 だが、エルゼは彼らを「路傍の石」でも見るような冷たい目で一瞥し、再び国王へと向き直った。


「陛下。荒れ果てた土地を押し付け……いえ、お任せいただくのです。これくらいの条件は、当然の『初期投資』かと存じますが?」

「……ふむ」


 国王は顎を撫で、少しだけ考え込んだ。

 王室にとっても、旧公爵領の管理は頭の痛い問題やった。広大すぎるがゆえに、下手に手を出せば反乱の火種になる。それをこの小娘がすべて被ってくれるというなら、十年の免税など安いものだ……そう踏んだんやろう。


「……よかろう。そなたの覚悟に免じ、特例としてその条件を認めよう。見事、あの土地を復興させてみせよ」

「寛大なご処置、感謝いたします」


 エルゼが優雅にカーテシー(お辞儀)をした瞬間、うちは心の中でガッツポーズを決めた。

 罠だと知りながら、あえて平然と受け取り、逆にそれを利用して国から「最高の言質」をふんだくったんや。

 これぞ、浪速の商い魂を受け継いだ「したたかな女帝」の誕生や!


===========


「……くくっ、あはははは!」


 謁見を終え、王宮の長い回廊を歩きながら、エルゼは扇子で口元を隠しきれずに笑い声を漏らした。


「見たかしら、静江。あの古狸どもの顔! 私が荒れ果てた土地を押し付けられて損をしたと思い込みながら、十年の免税を許してしまった悔しさに歪んでいたわ!」

「ほんま、あんた立派な悪徳領主……いや、したたかな女帝になったなぁ。おばちゃん、感動して涙出そうやわ」


 うちはアイテムボックスから「オレンジ味」の飴ちゃんを取り出し、エルゼとアレン、そして後ろをついてきとったカイルに放り投げた。


「でも、静江さん。本当に良かったんですか? 確かに免税と自治権は得ましたけど、あそこは悪魔の呪いで『死の土地』になっているんですよ?」

 アレンが飴を口に含みながら、心配そうに聞いてくる。


「アレン君、あんたはまだ商売の基本が分かってへんな。……ええか、『呪われてる』っちゅうことは、裏を返せば『誰も寄り付かへん』っちゅうことや。つまり、誰の目も気にせずに、うちらの好き勝手に『超大型の再開発』ができる最高のアトリエなんやわ!」


 うちがウインクすると、カイルが眼鏡を押し上げてニヤリと笑った。


「なるほど。……魔族領のバアル殿たちと繋ぐ『異種族合同・リサイクル物流ハブ』。……それを王都の貴族たちに気付かれずに建設するには、むしろ『呪われていて誰も立ち入れない』という状況は、最高の隠れ蓑になるというわけですね」


「その通りや、カイルちゃん。さっすがインテリやな」


 うちはスカジャンの襟をバサッと立て、王宮の大きな窓から、北の空――旧公爵領の方角を睨みつけた。


「相手は土地に呪いをかけて、うちらを絶望させたつもりやろうけどな。……甘いわ。おばちゃんを誰やと思てんねん。どんなドブ泥みたいな呪いの土地でも、気合でピカピカに漂白したるわ!」


「ええ、頼りにしているわ、私の専属占い師。……さぁ、私たちの新しい領地へ行きましょう。あの忌まわしい呪いを、最高の『黄金』に変えてやるのよ」

 エルゼが扇子を開き、誇り高く宣言する。


 罠と知りながら堂々と受け取り、最大の負債を最高の資産へと変えるための旅立ち。

 王都の権力闘争を制した「最強の女帝」と「無敵のオカン」は、いよいよ『呪われた旧公爵領』へと乗り込む準備を整えたんや。



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