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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明


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第54話 更地からの再出発と、忍び寄る強欲の影

 赤黒い瘴気が晴れ渡った「世界の最終処分場」跡地には、今、吸い込まれるような青空が広がっとった。

 ついさっきまで、数万年分の未練と泥が渦巻いていた場所とは思えへん。

 そこにあるのは、どこまでも続く真っ平らな「更地」や。


 うちは、ギラギラのデコネイルを太陽にかざして、眩しそうに目を細めた。

 茶色の綺麗なロングヘアが、魔族領の乾いた風に吹かれてサラサラと揺れとる。


「なぁ、カイル、アレン、バアル。あんたらに聞きたいんやけど、この広大な空き地、ただの原野にしておくのはもったいないと思わへんか?」


 うちは腰のトングをバシバシと叩きながら、三人の顔を順番に覗き込んだ。

 カイルは眼鏡のレンズを一生懸命拭きながら、不思議そうな顔をしとる。


「静江さん、もったいないと言われましても……ここはもともと、不浄の極致だった場所です。瘴気が消えたとはいえ、普通の植物が育つまでには、まだ何年も浄化を続ける必要があるでしょう。再開発なんて、夢のまた夢ですよ」


「カイルちゃん、あんたは頭がええのに、商売のセンスはまだまだやな。植物が育たへんなら、植物を育てへん施設を建てればええんや! ええか、ここはかつて『捨てられたもの』が集まる場所やった。やったら、これからは『捨てられたものを蘇らせる場所』にすればええんやわ。名付けて、『異世界合同・静江式リサイクル総合センター』や!」


 うちが拳を突き出すと、アレンが「リサイクル……?」と首を傾げた。


「静江さん、それって、ゴミをまた使うってことですか? でも、壊れた剣や破れた服なんて、新しいものを買った方が早いんじゃ……」


「アレン、あんたは若いからそう思うんやろうけどな。物には魂が宿るんや。さっきの『掃き溜めの主』のミトンを見たやろ? 大切な記憶が詰まったもんを簡単に捨てるから、心に隙間ができて、そこに瘴気が湧くんや。ここでは、壊れたもんを魔族の器用な手先で直し、人間界の技術で新しく作り替える。それを安く流通させれば、魔族も人間も豊かになれる。ゴミが宝に変わる瞬間に、差別も争いも消えていくんやで!」


 うちの熱弁に、魔王の側近であるバアルが、感動したように震える声で答えた。


「静江殿……なんと素晴らしいお考えだ。魔族はこれまで、その強大な魔力を破壊にしか使ってきませんでした。しかし、その繊細な魔力操作を『修復』や『創造』に使えば、これほど有意義なことはない。魔王陛下も、きっとお喜びになります。この地が、魔族と人間が手を取り合う、共生の象徴になるのですね!」


「せや。さらにな、センターの横には、おばちゃん特製の『天然魔力温泉・極楽の湯』も併設するで。掃除でかいた汗は、湯船で流すのが一番やからな。看板娘は、もちろんこのうちが務めたげるわ!」


===========


 うちらがそんな未来予想図を語り合い、更地を歩き回っていたその時や。

 背後の空間が、不自然な歪みを見せ始めた。

 カイルが即座に反応し、魔導書を構える。


「静江さん、伏せてください! 高位の転移魔法……しかも、魔族のものではありません。これは、人間界の聖教国で使われる、王族クラスの転移術式です!」


 眩い光と共に現れたのは、黄金の刺繍がこれでもかと施された、見るからに悪趣味で高価な法衣を纏った男たちやった。

 先頭に立つのは、脂ぎった顔に卑屈な笑みを浮かべた、初老の男。

 その男は、周囲の更地を見渡し、満足げに頷きながらこちらへ歩み寄ってきた。


「おお、これは素晴らしい。数万年もの間、瘴気に閉ざされていた魔界の最深部が、これほど清らかな土地に生まれ変わっていようとは。……貴女が、この地を浄化したというルミナの占師ですね。私は王都の神殿を預かる大司教、ザドックと申します」


 ザドックと名乗った男は、大仰な身振りで頭を下げてみせた。

 だが、その目はうちへの敬意など微塵もなく、ただ足元の「広大な土地エモノ」をどうやって金に換えるかという、計算高い光だけがギラギラと渦巻いとった。

 うちはハチミツ飴をバキッと噛み砕き、胡散臭い目でその大司教を見返した。


「……王都の神殿の偉いさんが、こんな辺境の元・ゴミ捨て場まで何の用や? うちが王宮の大掃除をしてた時は、埃かぶるのが嫌で奥の方に逃げ隠れとったくせに」


「おやおや、手厳しい。ですが、それも今日で終わりです。王都では、貴女の素晴らしい功績に皆が驚嘆しております。そこで教会からの正式な提案なのですが……この浄化された広大な土地、教会の聖域として王国の管理下に置くことで、さらなる聖なる加護を与えようではないですか。もちろん、貴女には相応の位と、莫大な報奨金をお約束しましょう」


 ザドックの背後には、強欲そうな目をした王都の貴族たちが控え、すでにこの更地の境界線を測量し始めようとしとる。

 ……なるほどな。

 瘴気が消え、安全な土地になったと知った途端、これまで「悪魔の土地」だと言って見捨てていた連中が、手柄と利権を求めてワラワラと湧いてきおったんや。

 安全になってから旗を立てに来る。いつの時代も、こういう図々しいおっさん連中のやることは変わらへん。


「ほう、報奨金なぁ。あんたら、ここがどんな場所やったか、一秒でも考えたことあるんか? 泥にまみれて、絶望に震えていた魂の上に、あんたらはまた『欲』っていう一番汚いゴミを積み上げようとしとるんか」


「ゴミとはご挨拶ですね。私たちは、この迷える土地を正しく導こうとしているだけですよ」


「笑わせんといて。……アレン、カイル、バアル。トングを用意しなはれ。どうやら、まだ『仕分け』なあかん不燃ゴミが、向こうから歩いてきてくれたみたいやわ」


 うちは、スカジャンの袖を捲り上げ、ギラギラのデコネイルでザドックの鼻先をビシッと指差した。


「ええか、ザドックさん。この土地はな、誰のもんでもあらへん。ここに流れ着いた悲しい記憶を、一生懸命磨いてきたうちらのもんや。あんたらみたいな『心の掃除』ができへん連中に、一歩でもこの更地を踏ませるわけにはいかへんねん。さっさと王都へ帰りなはれ! さもないと、あんたらをリサイクル不可の粗大ゴミとして、地の果てまで追い出し遂せたげるわ!」


 おばちゃんの怒りの咆哮が、澄み渡った魔族領の空に響き渡る。

 平和への第一歩は、人間界からやってきた「強欲」という名の最大級の汚れとの、新たなバトルの幕開けやったんや。


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