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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明


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第47話 魔王城への遠足と、魔界の不法投棄パトロール

「ちょっと、バアル! あんた背筋伸ばしなはれ! 研修生がそんな猫背で、魔王様にまともな報告ができると思てんの?」


 魔族領の荒れ果てた街道に、うちの怒声が響き渡った。


 ピンクブロンドの盛り髪をポニーテールに結び直し、背中に龍が躍る銀色のスカジャンを羽織ったうちは、ギラギラのデコネイルを光らせてバアルの背中をバシッと叩いた。


 重たい黒鎧を脱ぎ捨て、ゾルゲが用意した清潔なシャツとズボンに身を包んだバアルは、ビクッと肩を揺らしながら情けない声を出す。


「す、すみません静江さん……。ですが、魔王城が近づくにつれ、胃のあたりが雑巾絞りにされたみたいに痛むのです。我……いや、僕が鎧も持たずに戻れば、不敬罪で即座に処刑されてもおかしくありません」


「何が処刑や! 処刑する前に、あんたが溜め込んだ未処理の書類の山をどうにかしろって話やろ? それに見てみ、この街道の惨状を。管理職のあんたが倒れてる間に、不法投棄のやりたい放題やないの!」


 うちは厚底ブーツで、道端に転がっている折れた魔槍や、出所の分からん不気味な骨の山を指差した。


 魔王城へと続くこの道は、まさに「ゴミの山」やった。魔族たちが勝手に武器を捨て、魔獣が死骸を放置し、そこから漏れ出した瘴気がカビとなって地面を覆い尽くしている。


 アレンが聖水のモップ槍を構え、カイルが眉間に皺を寄せて空気中の汚染度を測る中、うちは我慢の限界が来て、アイテムボックスから一本の「特大ゴミ拾いトング」を取り出した。


「カイルちゃん、アレン! 遠足のついでや、この街道の『不法投棄物』を全部回収しながら進むで! ゾルゲ、あんたは後ろからリサイクル用の大袋を持ってついてきなはれ!」


「了解しました、静江様! 従業員たち(ゾンビ)を呼び寄せ、一掃させましょう!」


 かつての屍術師が、今は清掃主任として手際よくゾンビたちに指示を飛ばす。魔族領の住人が見れば、腰を抜かして失神するような光景やけど、うちにとっては「近所の溝掃除」と同じことや。


====================


 魔王城の巨大な城門が見えてきた頃、うちらの後ろには、パンパンに膨らんだリサイクル用の魔法袋が数十個も連なっとった。


 だが、城門を守る衛兵たちは、そんなうちらを見て槍を突き出してきた。


 「止まれ! 貴様ら、何者だ! その汚らわしい袋の中身は何だ! ……何、バアル様!? そのような腑抜けた格好で、何を……」


 「汚らわしいとは何やねん! これはあんたらがポイ捨てした『資源』やろうが!」


 うちは衛兵の槍をトングでパシッと弾き、盛り盛りの付けまつげ越しに鋭い眼光を飛ばした。


 「ええか、兄ちゃん。あんたら、門番やってるんやったら、足元の吸い殻(魔石の燃えかす)くらい片付けなはれ! こんなん、子供が間違えて食べたらどないするんや! 責任者、呼びなはれ! 今すぐ魔王様に、この街道の清掃管理不足について苦情クレーム入れさせてもらうわ!」


 おばちゃんのあまりの迫力に、衛兵たちは「ひ、ひぃ……」と後ずさる。


 見た目は派手な若作りギャル、中身は数多の修羅場をくぐり抜けてきた大阪のオカン。


 そのオーラに気圧された衛兵を無視して、うちはバアルの背中を押して門を潜り抜けた。


 だが、一歩足を踏み入れた魔王城の内部は、外の街道以上に「深刻」やった。


 豪華な絨毯の上には、何年も掃除機をかけてへんような分厚い埃の層。


 壁に掛けられた歴代魔王の肖像画は、すすけて顔も見えへん。


 何より、城全体に漂う「湿気」と「淀んだ空気」。これは、換気扇の詰まった台所なんてレベルやない。


「……あかん。これは重症や。バアル、あんたが鎧の下に溜め込んでたストレス、この城そのものの縮図やったんやな」

 うちはハチミツ飴をガリリと噛み砕き、スカジャンの袖を捲り上げた。

 頭の奥には、いつものノイズが走り出す。一瞬、日本の巨大な「廃病院の清掃現場」の景色が重なった。


(……あ、あの配管、結露で腐りかけてるわ……。あのカーテン、埃を吸いすぎてカチカチや……。これ、一回全部剥がして、天日干しせなあかんわ……)


「アレン、カイル! 武器を置きなはれ。ここから先は、剣や魔法やない。……『洗剤』と『気合』の勝負や! 魔王の寝室まで、一ミリの埃も残さず、徹底的にガサ入れ(大掃除)したげるわ!」


 おばちゃんの宣言が、淀んだ魔王城に爆音のように響き渡った。

 世界を統べる魔王との謁見は、もはや「外交」ではなく、史上最大の「特殊清掃」になろうとしとったんや。


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