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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明


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第39話 魔界のスクラップ工場と、リサイクルの理

 ゴミの巨人を「自動洗浄」でドロドロの液体に変えた後、うちはぬかるんだ地面にしゃがみ込んで、スカジャンの袖を捲り上げた。


「……あー、やっぱりな。こんな汚い塊でも、芯の方はまだ使えるもんが残っとるわ」


 うちは泥の中から、親指ほどの大きさの、紫色に輝く小さな結晶を拾い上げた。カイルが目を丸くして、それを覗き込む。


「……それは、魔力結晶の純核!? 静江さん、そんな汚泥の中からよく見つけましたね。普通、巨人が崩壊すれば魔力は霧散するはずですが……」


「カイルちゃん、甘いな。主婦の目はな、換気扇の油汚れの奥にあるネジ一本も見逃さへんねん。……これ、不法投棄の賠償金として、うちの『リサイクル・ボックス(アイテムボックス)』に入れとくわ。これ一つで、王宮の高級ディナー三回分くらいにはなるやろ?」


 うちはニヤリと笑って、結晶をボックスへ放り込んだ。それを見ていた案内人のギルバートが、眼鏡をクイッと押し上げ、慇懃に、やけどどこか苦々しく口を開いた。


「……さすがは督察官。目敏い(めざとい)ですな。……実を言いますとね、私も困っていたのですよ。あのゾルゲ様、素材の扱いが雑でして。あのように低品質なゴミ(死骸)を野放しにされると、魔族領の魂の市場価格が暴落してしまう。私の仲介ビジネスも、この『不法投棄』のせいで大赤字ですよ」


「仲介業者も大変やな、ギルバート。……よし、決まりや。あんたは道案内だけやなくて、ゾルゲの屋敷にある『換金できそうなもん』の目利きもしなはれ。仕事きっちりしたら、後で手数料、一割くらい上乗せしたげてもええで?」


「……ククッ、一割ですか。交渉の余地はありそうですな」


 ギルバートの案内でさらに進むと、森の景色が変わり、巨大な鉄屑や骨がうずたかく積まれた**『廃棄物集積場』**のような場所に出た。そこは、ゾルゲの屋敷の「裏庭」に当たる場所やという。


「……ひどいな、これ。ここ、不燃ゴミの日が千年来てへんのとちゃうか?」


 うちは鼻をつまみ、積み上がったガラクタの山を見上げた。そこには、壊れた魔導兵器や、鎧が肉ごと癒着した成れの果て、さらには「可燃か不燃か分からん」ような、不気味に蠢く肉の塊が放置されとる。


 その時、ガラクタの山がガサガサと動き出し、中から**『粗大ゴミの亡霊』**たちが姿を現した。

 かつての名誉も名前も捨てられ、ただの「廃棄物」として連結された魔族たちの執念。彼らは虚ろな目で、侵入者であるうちらを排除しようと迫ってくる。


「静江さん、下がって! ここは僕が……!」


「待ちな、アレン。……あんた、これを見て何とも思わんか?」


 うちは一歩前に出ると、アイテムボックスから王宮の書斎で書き殴った**『特別清掃・請求明細書』**の束を取り出した。そこには、さっき使い切った塩の代金から、アレンが曲げた槍の修理費、さらにはうちの精神的苦痛に伴う「知恵熱手当」まで、細かく算出された金額が並んどる。


「ええか、そこのゴミ山に埋もれてる兄ちゃんら! あんたらな、ゾルゲに使い捨てられて、こんな不潔な場所で腐っててええんか!? おばちゃんはな、分別されてへんゴミを見るのが一番嫌いやねん!」


 うちは水晶玉を高く掲げ、廃棄物たちに向かって「魂の分別」を開始した。


「……そこの右側の鎧の兄ちゃん! あんたはまだ『金属資源』としてリサイクル可能や! 腐った肉を剥がして磨けば、立派な鍋の材料にでもなれるわ! ……そっちの左側の煙みたいな幽霊! あんたはもう『可燃ゴミ』や! 湿っぽい未練をさっさと燃やして、夜空のチリになりなはれ!」


 おばちゃんのあまりにも現実的な「分別の宣告」に、亡霊たちは一瞬、攻撃の手を止めた。

 カイルはその隙を見逃さず、解析魔法を全開にする。


「……静江さんの指示通り、鎧の接合部を魔法で強制冷却します! 収縮させて、肉と金属を分離させる!」


「アレン! あんたはあの『可燃ゴミ』どもを、聖水のモップで思いっきり掃き出しなはれ! 湿気を飛ばせば、あいつら勝手に成仏するわ!」


「はい! ……はあああッ!」


 アレンのモップ槍が空を切るたびに、湿った怨念が「乾燥」して消えていく。カイルの魔法で分離された鎧の破片が、ガチャンと音を立てて床に落ちた。その中心部からは、またしても高品質な魔力結晶がポロリとこぼれ落ちる。


「……よし、回収! 回収や!」


 うちは戦場のど真ん中を、ゴミ拾いばさみ(これもアイテムボックスにあったやつや)を片手に走り回り、リサイクル可能な素材を次々とボックスへ回収していった。


「……静江さん、戦いの最中に素材の回収なんて、普通はあり得ませんよ……」

 アレンが呆れ顔で汗を拭うが、その表情にはどこか清々しさがあった。


「何言うてんねん。ゴミ屋敷の掃除はな、捨てると同時に『価値のあるもん』を仕分けるのが鉄則や。……ギルバート、見てたか? これがうちのやり方や」


「……感服しましたよ、督察官。まさか、廃棄物たちの執念を『分別』という理屈で解体するとは。ゾルゲ様も、これには胃を痛めるでしょうな」


 ギルバートは楽しそうに眼鏡を光らせ、屋敷の正門を指し示した。


「さぁ、庭の整理は済みました。いよいよ本丸……ゾルゲ様の『不法投棄御殿』へご案内しましょう。……ああ、その前に、その『請求書』の束。ゾルゲ様に見せるのが、今から楽しみでなりませんな」


 うちはスカジャンの襟をシャカッとなぞり、不適に笑った。

 頭の奥には、まだ「スーパーのポイントカード」を探すノイズが走っとる。

 でも、今のうちは「魔族領の不法投棄」を許さない、最強の掃除屋や。


「行くで、あんたら。……ゾルゲの兄ちゃんに、特大の『ゴミ処理費用』を叩きつけたげるわ!」


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