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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明


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第26話 水晶に映る「嘘」と、オカンの大掃除

 グレミオ公爵を激辛飴で追い出した後の『月光の間』は、まるで嵐の後のような奇妙な静寂が漂っていた。

 うちは、王妃イザベラの側近に案内され、王宮の奥深く――白磁の壁に囲まれた、静かすぎるほど豪奢な私室へと招かれた。


「……さて。人払いも済んだわ。占師、あなたのその『眼』には、この王宮がどう映っているのかしら?」


 王妃はソファーに深く腰掛け、長い睫毛を伏せた。

 近くで見ると、彼女の肌は透けるように白いが、その奥に深い疲れ……いわゆる「心労」の影がべったりと張り付いとる。


「王妃様、単刀直入に言わせてもらいますわ。……あんた、最近寝つきが悪いでしょ。夜中に誰かの『ひそひそ話』が聞こえて、耳を塞ぎたくなるんとちゃう?」


「……なぜ、それを。宮廷医でさえ、ただの過労だと言ったのに」


「タロットに『月』が出てますわ。不安と、目に見えない敵。……でもな、カードだけやと情報はボヤけるんや。……ちょいと、テーブル借りるで」


 うちは、ヒョウ柄の袖をまくり、アイテムボックスから特大の水晶玉をスッと取り出した。

 前世の占い館で、一番高いローンを組んで買った本水晶や。それを大理石のテーブルにどっかと置くと、うちは両手を冷たい表面にぺったりと密着させた。


 ――その瞬間、視界が「カチッ」と切り替わった。


 水晶に触れている間だけ、うちの目には「あやかし」たちの姿がはっきりと映る。

 王妃の椅子の陰、カーテンの裏、天井の隅。そこには、普段人間には見えへん「付喪神つくもがみ」たちが、真っ黒いヘドロのような汚れを被って、えげつない顔で蹲っとった。


「……あちゃー、やっぱりや。……これ、王宮の『壁飾りのあやかし』に、『香炉の精霊』やん。みんな、えらいすすけて……。おい、あんたら。ちょっとこっち来なはれ」


 水晶越しにうちが睨むと、あやかしたちは「見えるんか!?」と驚き、わらわらと近寄ってきた。


『おばちゃん、助けてや! この部屋、最近変な女が毎晩「呪いの言葉」を吐き散らして、うちら息ができへんねん!』

『そうや! マリアっていう女や! あの女、王妃様の髪を梳きながら、耳元でずっと「死の暗示」を囁いてるんやで!』

『証拠なら、あそこの飾棚の三段目! 奥の板を外してみなはれ。グレミオ公爵からの「密書」が隠されてるわ!』


 あやかしたちの情報は、どんなスパイの報告書よりもナマナマしい。

 うちは水晶から手を離さず、傍らで青い顔をして控えている側近のマリアを、サングラス越しにじろりと見据えた。


「王妃様。……あんたを蝕んでるのは病やない。……そこに立ってる、あんたが幼い頃から信じてた『側近の女』。あいつが吐き出すドロドロした『念』やわ」


「な、何を馬鹿な……! 王妃様、騙されないでください! この女、先ほどから奇妙な独り言を――」


「黙りなはれ、マリアさん。……あんた、グレミオ公爵から『次の王妃の座』でも約束されたんか? ……アレン! あそこの棚、三段目の裏板を外してみ!」


 うちの怒声に、アレンが弾かれたように動いた。

「失礼します!」

 ガラン、と板が外れる音がし、そこから数通の封筒が転がり落ちた。王妃の顔から血の気が引いていく。


「……これは、グレミオ公爵の印章……? マリア、あなたが、なぜ……」


「……ひっ、あ、あわわ……」


 マリアは腰を抜かし、その場にへたり込んだ。言い逃れできへん証拠を、あやかしたちにバラされたんやから当然や。うちは水晶から手を離し、アイテムボックスから**「ハチミツ味の飴ちゃん」**を取り出して、震える王妃の掌に置いた。


「これ舐めて、一回落ち着きなはれ。……王妃様、これで『掃除』の第一歩や。……でもな、マリアさん一人追い出したところで、王都の膿は出し切れへんよ」


 うちは、スカジャンの襟を正し、エルゼの肩を抱き寄せた。


「エルゼちゃんを侯爵にする。……それはな、ただの出世やない。……この腐った王都を、内側からひっくり返すための『杭』を打ち込むことなんやわ。……王妃様。あんたにその覚悟、ありますか?」


 イザベラ王妃は、飴を口に含み、ハチミツの甘さに一瞬だけ目を細めた。

 そして、その瞳には、絶望ではなく「冷徹な反撃」の光が宿った。


「……ええ。占師、あなたの言う通りだわ。……エルゼ・ルミナ伯爵。あなたの『侯爵昇叙』、私が責任を持って国王へ進言しましょう。……ただし。グレミオ公爵をはじめとする守旧派の反発は、これまでの比ではないわよ?」


「望むところやわ。……特売日の主婦を舐めたらあかんで。……王都まるごと、ピカピカにリフォームしたげるわ!」


 王妃との密約は成った。

 だが、部屋を出るうちの耳に、水晶に触れていなくても聞こえるような、不気味な風の音が響いた。


 ――王都の闇は、マリアごときで終わるほど浅くはなかった。


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