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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明


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第25話 社交界の毒蜘蛛と、ヒョウ柄の鑑定眼

 王宮の『月光の間』は、眩暈がするほどの光と香水の匂いに満ちていた。


 天井の巨大なシャンデリアから降り注ぐ光は、集まった貴族たちの宝石をギラつかせ、優雅な旋律が空気に溶け込んでいる。けれど、うちの目には、その華やかな光景の裏に潜む「どす黒いもん」がはっきりと見えていた。


「……静江さん。さっきから、皆が僕たちをバイ菌でも見るような目で見ていますよ。……あと、あの柱の影にいる衛兵、三回くらい剣を抜きかけました」


 アレンが借りてきた猫のように丸まって、うちの背後に隠れとる。


 今日のうちは、黒いスパンコールが夜空みたいに輝くタイトなロングドレス。その上には、背中に「天下無双」と金糸で刺繍されたヒョウ柄のファーボレロを羽織り、首元にはバブル時代を彷彿とさせる巨大なイミテーションパールのネックレスを三重に巻いとる。


「ええねん、アレン。あんな扇子バタバタさせてる連中、中身はスカスカやわ。……それよりエルゼちゃん、あんたの出番やで。顔上げなはれ」


 エルゼは、うちが選んだ深い紺色のドレスを纏い、背筋をピンと伸ばして歩いとる。

 かつての弱々しさは微塵もない。彼女は今、ルミナの領主として、そして「侯爵」の座を虎視眈々と狙う一人の政治家としての風格を漂わせていた。


 そこへ、蜘蛛のような薄笑いを浮かべた一団が、うちらの進路を塞ぐように近づいてきた。

 中心におるのは、王都の派閥争いの中心人物、グレミオ公爵や。丸々と太った身体を無理やり豪華な法衣に押し込み、脂ぎった手で最高級のワイングラスを弄んどる。


「……おやおや、これはルミナの伯爵令嬢ではありませんか。……最近、不遜にも侯爵家の権利を横取りし、成り上がったという噂を聞きましたが……。そちらの、夜会のマナーも知らぬ『派手な家畜』は、あなたの新しい飼い犬ですか?」


 周囲からクスクスと下品な笑いが漏れる。

 エルゼが言い返そうと唇を噛んだが、うちは一歩前に出て、グレミオ公爵の顔をじっと見つめた。


「……兄ちゃん、あんた。さっきから『犬』やなんて言うてるけど、自分の首に巻いてるそのネックレス、去年の税金で買ったもんやろ? ……それ、占うまでもなく『呪い』かかってるで」


「……何だと? 貴様、無礼な……!」


「無礼なんはどっちや。……あんた、自分とこの領民がどんどんルミナに籍を移してるせいで、懐具合が寂しなってるんちゃうか? ……占ってあげよか?」


 うちは懐から、おもむろに一枚のカード――『皇帝(The Emperor)』の逆位置を取り出し、公爵の鼻先に突きつけた。


「『皇帝』の逆位置。権威の失墜、そして支配の崩壊や。……あんた、体面を保つために王都の銀行から無理な借金して、その穴埋めに公金をちょろまかしてるやろ。……カードに全部出てんで。あんたのその脂ぎった顔、カネに困ってる証拠やわ」


 グレミオ公爵の顔から、一瞬で血の気が引いた。

 公金横領は極秘。それを、この「ヒョウ柄の女」が、まるで昨日の献立を言い当てるみたいに看破したからや。


「な、何を根拠に……! 妄言だ! 衛兵、この狂女を捕らえろ!」


「動くな。……公爵様。ルミナの商業ギルドを舐めてもらっちゃ困るな」


 背後から、優雅にカイルが歩み出た。彼の手には、バネッサから託された、グレミオ公爵が関わっている商会の不自然な帳簿の写しが握られとる。


「あなたの商会が、王都の食糧価格を吊り上げるために不当な在庫を抱え込んでいる記録……。王妃様が知ったら、どう思われるかな? 『民が苦しんでいるのに、公爵は私腹を肥やしている』とね」


 カイルの冷徹な一言に、公爵は言葉を失い、持っていたグラスを床に落として砕いた。

 その高い音が、静まり返った『月光の間』に響き渡る。


「……あんた、この飴舐めて、一回地獄の味でも予習しなはれ」


 うちは動揺する公爵の口に、真っ黒な、そして炭のように苦い「薬草味」の飴を放り込んだ。


「ごふっ……!? 苦い……! 毒か、毒を入れたのか!」


「毒やない、ただのデトックスや。……その苦さが消えるまでに、自分のしたことの清算をしなはれ。……さもないと、あんたのその爵位、エルゼちゃんへの『お詫び』としてうちが値切り倒したげるからな」


 公爵は飴を飲み込み、震える足でその場から逃げ出した。

 周囲の貴族たちは、今のやり取りを見て、一斉にエルゼを――そしてその後ろに立つ「ヒョウ柄の鑑定士」を、畏怖の眼差しで見つめるようになった。


 その時、会場の奥から、鈴の音のような声が響いた。


「……面白い占師ですね。……私の『悩み』も、そのカードで見通せるのかしら?」


 現れたのは、美しくもどこか影のある女性。この国の王妃・イザベラやった。


「王妃様。……うちの占いは高いですよ。……でも、エルゼちゃんの『侯爵への推薦状』、書いてくれるんなら、おまけしたげますわ」


 うちはニカッと笑い、タロットを切り直した。

 

 王都・社交界編。

 おばちゃんの「大掃除」は、いよいよ王宮の深部へと入り込む。


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