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大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第3章:王都大掃除! 貴族の不正と地下のヘドロ

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第24話 王都の門番と、タロットの警告

 ルミナの街を出発してから一週間。

 馬車の窓から見える景色は、活気ある農村から、高く、冷たく、そして傲慢な石造りの城壁へと変わっていった。王国随一の巨大都市、王都『ソル・グランデ』。

 そこは、カネと権力と「お上品な建前」が、どろどろのスープみたいに煮込まれた、うちにとっては最高に値切り甲斐のある獲物や。


「……静江さん。見えてきました、王都の第一正門です。あそこを抜ければ、いよいよ貴族街ですよ。……でも、なんだか様子がおかしいな。普段なら商人の馬車でごった返しているはずなのに、妙に殺気立っているというか……」


 御者台で手綱を握るアレンが、緊張で声を上擦らせた。

 彼はルミナを出る前に、静江の強い勧めで新調した「高級そうに見える銀糸入りのマント」を羽織っとる。そのマントの裏側には、もちろん護身用の短剣と、そして何より大事な「黄金の算盤」が隠されとる。


「ええねん、アレン。肩の力抜きなはれ。……エルゼちゃん、あんたもや。……あんた、そんなに扇子を強く握りしめて、今にも隣の公爵の首を跳ねそうな顔してるで。もうちょっと余裕持ちなはれ。……おばちゃんがついてるんやから」


 馬車の中で、エルゼは鋭い眼光を崩さぬまま、窓の外を睨みつけていた。

 彼女は今回、ルミナの領主として「水路問題の解決と所属変更の受理」を報告するために王都へ召還された。だが、それは形ばかり。実態は、自分たちを出し抜いた生意気な伯爵令嬢を呼びつけ、王都の「格付け」で精神的に屈服させ、利権を奪い取ろうとする公爵家たちの仕掛けた罠や。


「分かっています、静江さん。……ただ、この街の空気……。かつて私がいた頃よりも、さらに鼻につく。……権力の腐った匂いと、それから……」


「せやな。……さて、カイル。あんたの親父さんの息がかかった門番、どいつや?」


 向かい側で、王都の最新ゴシップ新聞を広げていたカイルが、窓の外を一瞥して鼻で笑った。

「あそこの、金ピカの鎧をつけた隊長さんだよ。……父上が失態を演じたせいで、侯爵家は今、王都で笑い者だ。せめて入口で君たちを足止めして、伯爵家の格の低さを民衆に印象づけろと命令されているはずだ。……ほら、槍を交差させたよ」


 案の定、馬車が門に差し掛かった瞬間、クロスボウを構えた騎士たちが仰々しく立ち塞がった。


「止まれ! この馬車はルミナ伯爵家のものか! 武器の所持、および公衆衛生上の魔力検査を行う! 全員降りろ!」


 隊長らしき男が、わざとらしく大声で怒鳴る。その声を聞きつけ、周囲の平民や物売りたちが何事かと集まってくる。

 アレンが「正式な招待状はここに……」と反論しようとしたが、うちが先に馬車の扉を**「バーン!」**と蹴り開けた。


 うちが馬車から降り立つと、野次馬たちから「ヒッ……!」という短い悲鳴が上がった。

 今日のうちは、黒い革のタイトスカートに、背中に巨大な龍の刺繍が入ったスカジャン風ブルゾン。頭には、王都の流行を完全に無視した特大のサングラス。


 うちは懐から、おもむろに一枚のカード――**『塔(The Tower)』**の逆位置を取り出し、それを門番の隊長に向けて掲げた。


「やかましいわ、兄ちゃん! 検査やなんや言うて、あんたさっきから、うちの馬車の車輪のガタつきより、自分の足元のグラつき、占ってあげよか? ……『塔』の逆位置。崩壊の暗示や。……兄ちゃん、あんたのその金ピカの鎧。……これ、胸当ての裏側の固定ネジ、三本目が緩んでるで」


「な、なんだその格好は! 貴様、ルミナの占師だな。あまりに不敬! 控えろ!」


「控えへんわ。……あんた、これ以上声を張り上げたら、そのネジが完全に馬鹿になって、鎧がバラバラに崩れ落ちるで。……パンツ一丁で王都にさらされることになってもええの?」


「な、何を馬鹿な……! 我が鎧は王都の……」


 隊長が嘲笑おうとした瞬間、**「ギィィィ」**と不吉な金属音が響いた。

 カードの暗示は、物理現象を加速させる。ガシャリ、ガコォン! と音を立てて、隊長の右の肩当てと胸当ての留め具が、地面に転がった。


「ほら、言うたやん。……あんた、最近の王都の予算削減で、鎧の手入れも外注の安い三流業者に回されてるやろ。……そういう『見えないところでケチったツケ』はな、一番大事な時に、一番恥ずかしい形で回ってくるもんやで」


 周囲の野次馬から、クスクスという笑い声が漏れる。隊長はバラバラになりかけた鎧を必死に手で押さえながら、顔を真っ黒にして絶句しとる。


「……さて。修理代にもならんけど、これでも舐めて落ち着きなはれ」


 うちは動揺する隊長の口に、真っ赤な「激辛唐辛子味」の飴を無理やり放り込んだ。

 

 馬車が再び動き出す。

 正門を抜けて街に入った瞬間、うちはサングラスの奥の目を細めた。

 うちは手元のタロットを、十五番目のカード――**『悪魔(The Devil)』**に入れ替えた。


「……静江さん。見ましたか、今の路地裏。……人が、まるで抜け殻みたいに倒れていました」


「せや。……アレン、鼻押さえなはれ。……カードが『悪魔』のカード、それも『搾取』を示しとる。王都では今、原因不明の『衰弱死』が流行っとるというけど、これ、病気やないで」


 うちは窓から、美しくも不気味な王城を見上げた。


「……瘴気が、人の生命力――つまり『鮮度』を少しずつ食らっとるんや。……エルゼちゃん、あんたが相手にせなあかんのは、公爵だけやない。……その影に潜んで、この街を『家畜小屋』に変えようとしてる奴らや」


 エルゼは扇子を閉じ、冷徹な目で頷いた。

「……面白いわ。私のルミナを、自分の財布だと思っている公爵。そして、この街を餌場だと思っている魔族。……どちらも、私の『所属変更』のリストに載せてやります」


 うちはスカジャンの襟を立て、銀糸の『必勝』の文字を輝かせた。


「その意気や。……おばちゃんが、王都まるごとリフォームしたげるわ!」


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