表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
最終章:帝国本社ガサ入れ! 笑顔のディストピアと最強オカンの卒業

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/240

第235話 終わらない承認の迷宮と、オカン流・直談判ルート

 無数の監視の目を「図太い井戸端会議」とオレンジ茶で強制終了させたうちらは、親玉の引きこもり部屋(真の闇)の、さらに奥深くへと歩みを進めとった。


「……静江さん。この空間、歩いても歩いても景色が変わりません。それに、足元に散らばっているこの白い紙の束は……」


 アレンが、長剣の先で床に積もった紙切れを拾い上げる。

 見れば、空間のあちこちに、天井まで届くほどの巨大な「書類の山」が、まるで迷路の壁のようにそびえ立っとった。

 カイルがインテリ眼鏡を光らせ、その紙切れを覗き込む。


「……『決裁書』に『稟議書』、それに『始末書』ですか。どれもこれも、何重にも承認のハンコを押す欄が設けられていますが、すべて途中で処理が止まっていますね」


 すると、巨大な書類の山の奥から、青白い顔をした無数の「サラリーマン(幻影)」たちが、フラフラと歩み出てきた。

 彼らの顔には生気がなく、両手には山のような書類の束を抱えとる。


『……ハンコを……。次の部署の、承認印を……』

『……私の責任ではない……。上の指示通りにやっただけだ……。私に責任を問わないでくれ……』


 彼らはブツブツとうわ言を呟きながら、うちらの周りをぐるぐると歩き回り、持っていた書類を吹雪のように撒き散らし始めた。


「な、なんやこれ! 鬱陶しいわぁ!」


 うちが特大のゴミ拾いトングで紙吹雪を払いのけようとしたが、紙は払っても払っても無限に湧き出してくる。


『……不確定要素(侵入者)を検知。処理ルートを通せ。……第一承認、第二承認、第三承認……すべてのハンコが揃うまで、この迷宮から出ることは許可されない』


 空間全体に、あの機械的で冷徹な親玉の声が響き渡った。


「ハンコが揃うまで出られへんやて!? アホか! こんな紙切れの迷路、力ずくで突破したるわ!」


「僕が道を切り拓きます! 『刹那の観測』!」


 アレンが神速の踏み込みで、目の前の書類の壁めがけて長剣を振り下ろす。


 ガガァァァンッ!


 だが、アレンの剣は分厚い紙の束に「ズブッ」と深く食い込んだだけで、壁を切り裂くことはできへんかった。


「……っ! 剣が、紙の束に絡め取られて抜けない……!」


「アレン! 下がってください、『炎の矢』!」


 カイルが炎の魔法を放ち、書類の壁を燃やそうとするが、紙の表面に青白い魔力のバリアが張り巡らされており、炎はシュンと音を立てて消滅してしもうた。


「……静江さん、物理攻撃も魔法も、この『手続きの壁』には通用しません! 相手のルール(承認)に則らない限り、空間そのものが攻撃を無効化してしまうようです!」


 カイルが焦燥の声を上げる。

 書類の吹雪は激しさを増し、うちらの足元を徐々に埋め尽くしていく。

 このままやと、うちらもこの終わらない決裁ルートの迷宮に飲み込まれ、紙の下で窒息してまうわ。


「……おばちゃん、このおじさんたち、すっごく怯えてるよ」


 リリルが、タロットカードを胸に抱きながら、うわ言を呟く幻影たちを見つめて言った。

 彼女は空中にバシッと一枚のカードを展開する。

 出たのは、『審判(Judgement)』の逆位置や。


「……カードが言ってるよ。失敗して怒られるのが怖くて、みんなで責任を押し付け合ってるんだって。……一番上のおじさん(親玉)も、本当は自分で決めるのが怖くて、こんなにいっぱい『壁(書類)』を作って隠れてるだけだよ」


 リリルの真っ直ぐな言葉が、迷宮の空気をピリッと震わせた。


「……なるほどな。失敗の責任を取るんが怖くて、ハンコっていう『言い訳の壁』を何重にも作って引きこもっとるんか」


 うちは大きくため息をつき、アイテムボックスの奥深くに両腕を突っ込んだ。


「ええか、親玉の坊ちゃん! 組織っちゅうのはな、下に責任を押し付けるためのもんやない! 一番上の社長が『全部俺が責任持ったるから、好きにやれ!』って言うためにあるんやろが!」


 うちは、アイテムボックスから、真っ赤なインクがたっぷり染み込んだ『特大のハナマル・スタンプ(直径一メートル)』と、前向きな活力を生み出す『リンゴ味』の飴ちゃんを限界まで取り出した。


「アレン! カイル! こんな回りくどい手続き、付き合う必要あらへん! うちらは労働基準監督署オカン・ユニオンや! 下請けすっ飛ばして、社長に『直談判』や!」


「直談判……!? でも、この壁をどうやって!?」


「こうやるんや!」


 うちは、特大のハナマル・スタンプに、すり潰したリンゴ飴の粉末をたっぷりと振りかけた。

 そして、それを特大のゴミ拾いトングでガシッと挟み込み、書類の壁めがけて、思いっきり全力で叩きつけた!


承認ハナマルなんか、おばちゃんが全部まとめて押したるわ!! オカン特権、『全決裁・強制通過フリーパス』やぁぁッ!!」


 ドゴォォォォンッ!!!


 スタンプが書類の壁に激突した瞬間、リンゴ飴の「絶対的な肯定ポジティブ」の魔力が、分厚い言い訳の壁を内側から爆発的に吹き飛ばした。

『責任』という重圧から解放された書類たちは、キラキラと輝く光の粒子となって、迷宮ごとサラサラと崩れ去っていく。


『な、なんだと……!? 規定のルートを無視して、壁が……私の防壁が、こんな強引な肯定で崩されるなど……!』


 親玉のパニックになった声が空間に響き渡る。


「当たり前や! 失敗したって、命まで取られるわけやない! そんな紙切れで心にバリケード張ってんと、堂々と表に出てきて責任取らんかい!」


 うちは、崩れ去った書類の山を踏み越え、トングを肩に担ぎ直した。


「……すごい。終わらない迷宮が、たった一つのスタンプで……」


 アレンが呆然としながらも、剣を取り戻してニカッと笑う。


「ええ。理不尽な手続きには、理不尽なまでの『強行突破』が一番効くということですね」


 カイルもインテリ眼鏡を押し上げ、頼もしく頷いた。


「さぁ、行くで! くだらん言い訳の壁はこれで全部ぶっ壊した! 次はいよいよ、この引きこもり部屋の『ド真ん中』にカチ込みや!」


 責任逃れの迷宮を、オカン流の特大ハナマルで強引に突破したうちら。

 大帝国アルビオンのすべてを操る、孤独で冷徹な親玉(ブラック社長)との直接対決は、もうすぐそこまで迫っとったんや!


読んでくれてありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、

作品ページ上部の【☆評価】【ブックマーク】、そして【リアクション】ボタンをポチッと押していただけるととても励みになります!


みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ