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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
最終章:帝国本社ガサ入れ! 笑顔のディストピアと最強オカンの卒業

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第229話 冷徹な財務局と、オカン流・家計簿の黒字化

 嘘まみれの広報局を電波ジャックで完全論破したうちらは、ついに中枢タワーの最上層エリアへと足を踏み入れとった。

 皇帝のいる社長室まで、あと少しや。


「……静江さん。この階層、空気がひどく重いです。魔力というより、何か強烈な『執着』の匂いがします」


 カイルがインテリ眼鏡を光らせて警戒する。

 昇降機の扉が開いた先は、黄金と宝石で埋め尽くされた、目が眩むほど悪趣味で豪華なフロアやった。

 壁一面に巨大な金庫が並び、部屋の中央には、天秤の形をした巨大な魔導計算機が鎮座しとる。

 そしてその前に、純白の軍服の上に悪趣味な金糸のケープを羽織った、丸々と太った男が座っとった。


「ようこそ、帝国中央財務局へ。私は局長のゴールドマン。……侵入者の皆様、あなた方のこれまでの『破壊行為』による損害額、すでに国家予算の三年分に達していますよ」


 ゴールドマンが、手元の分厚い帳簿をパラパラとめくりながら、冷たい豚のような目でうちらを値踏みした。


「財務局やて? ちょうどええわ。あんたらの国が世界中から巻き上げた『不当な税金と搾取』、きっちり全額返還(払い戻し)してもらうで!」


 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、金ピカの部屋のド真ん中へとズンズン歩み出た。


「返還? 愚かな。この部屋にある黄金は、帝国の『幸福』を維持するための正当な対価です。新大陸の資源、魔族領の素材、そして下等種族の労働力……すべてを数字と金に変換し、皇帝陛下の下へ集約する。これこそが、我が財務局の完璧な集金システム」


 ゴールドマンが指を鳴らすと、巨大な天秤の魔導計算機がガシャガシャと動き出した。


「……静江さん! あの天秤に乗っている金貨、ただの金じゃありません! 人々から吸い上げた生命力や魔力を、無理やり物質化させた『命の結晶』です!」


 カイルが解析魔法を展開し、血相を変えて叫んだ。


「命をカネに換えとるんか……! ほんまに血も涙もないブラック企業やな!」


 アレンが激怒し、西の大陸の長剣を抜こうとする。

 だが、ゴールドマンは余裕の笑みを崩さへん。


「怒りなど無意味です。あなた方の命も、今ここで『赤字の補填』として金貨に変えてさしあげましょう。……防衛システム、起動」


 部屋中の黄金の装飾が動き出し、無数の金貨が刃のように鋭く変形して、うちらに向かって吹雪のように襲いかかってきた。


「アレン! カイル! 金の吹雪を弾きなはれ!」


「了解しました! 『雷の障壁』!」


「させません! 『刹那の観測』!」


 カイルの魔法とアレンの神速の剣が、襲い来る金貨の刃を次々と叩き落としていく。

 だが、金貨は落としても落としても、天秤の計算機から無限に湧き出してきよる。


「……おばちゃん、あのおじさん、すっごく寂しい顔してる」


 うちの横で、立派な占い師として成長したリリルが、タロットカードを胸に抱えて静かに呟いた。

 彼女が空中にシュバッと展開したのは、『ペンタクル(金貨)の4』の正位置や。


「……カードが言ってるよ。お金をいっぱい抱え込んでるけど、誰にも心を開かなくて、本当はすっごく貧しいんだって」


 リリルの、一切の混じり気のない真っ直ぐな言葉。


「だ、黙れ小娘! 私は帝国の金庫番! この富こそがすべてだ!」


 図星を突かれたゴールドマンが顔を真っ赤にして怒鳴る。


「リリルちゃんの言う通りやわ! カネっちゅうのはな、貯め込むためやのうて、誰かを笑顔にするために『使う』から価値があるんやろが!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに両腕を突っ込んだ。


「あんたのその歪んだ家計簿、おばちゃんが『特大の還元セール』で黒字化リセットしたるわ!」


 うちは、空腹を満たす緑色の『メロン味』と、ポジティブな活力を生み出す赤色の『リンゴ味』の飴ちゃんを、限界まで大量に取り出した。

 そして、それをすり鉢で粉々に砕き、カイルに頼んで風の魔法で部屋中に巻き上げさせた。


「アレン! あの趣味の悪い『天秤(計算機)』のド真ん中を、一刀両断にしなはれ!」


「はいッ! 風よ、我が剣に! はあああッ!」


 アレンの神速の一撃が、黄金の天秤を真っ二つに叩き斬った。


 ガガァァァンッ!!

 計算機が破壊され、閉じ込められていた『命の金貨』が空中に解放された瞬間。

 そこに、うちがばら撒いたメロンとリンゴの飴ちゃんの粉末が、桜吹雪のように混ざり合ったんや。


「ほら! 溜め込んだもんは、みんなのところに還元(お返し)や!」


 飴ちゃんの魔力と混ざり合った命の金貨は、黄金の輝きを持ったまま、温かい光の粒へと変化していった。

 そして、部屋の窓を突き破り、帝国全土の空へと、まるで恵みの雨のように降り注いでいったんや。


「あ、あぁぁぁっ! 私の、私の財産がぁぁっ! 帝国の予算が、空っぽに……!」


 ゴールドマンが頭を抱えて絶叫し、床にへたり込んだ。


「カネが空っぽになったんやない! 元の持ち主のところに、美味しいご飯と笑顔になって戻っていっただけや! これがほんまの『生きたお金の使い方』やで!」


 うちは、特大トングを肩に担ぎ、へたり込む財務局長を見下ろした。


「あんたも、数字ばっかり見てんと、たまにはそのカネで部下に美味い飯でも奢ったったらどうや。そうすりゃ、誰もあんたを恨んだりせえへんわ」


「……ううっ……。私の、完璧な計算式が……オカンの家計簿に、負けた……」


 ゴールドマンは、すっかり毒気を抜かれ、白目を剥いて気絶してしもうた。


「……ふぅ、えらい派手な散財やったな。でも、これで帝国の資金源サイフは完全にスッカラカンや」


 うちはポンチョの埃を払い、ニカッと笑った。


「ええ。これでもう、帝国は戦争を継続することも、洗脳装置を維持することもできません。……残るは、本当にあの最上階の『社長室』だけですね」


 アレンが剣を鞘に納め、天井を見上げる。


「せや! いよいよ親玉との直接対決や! アレン、カイル、リリルちゃん! 気合入れて、最後の階段登るでぇぇッ!」


 財務局の歪んだ集金システムをオカン流の還元セールで粉砕したうちら。

 大帝国アルビオンを支配する皇帝との最終決戦の扉が、ついに目の前に迫っとったんや!


読んでくれてありがとうございます!


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