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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
最終章:帝国本社ガサ入れ! 笑顔のディストピアと最強オカンの卒業

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224/240

第224話 帝国中枢の役員会議と、オカン流・強制リセット

 末端の軍需工場をストップさせ、皇帝のいる中枢へとカチ込んだうちら。

 分厚い魔鋼の扉をアレンの剣で強引にこじ開け、タワーのさらに奥へと足を踏み入れた。


「……静江さん。この扉の奥から、とてつもない魔力と……何やら不気味なほど整然とした気配を感じます」


 アレンが長剣を構え、カイルが結界を展開する。

 うちらの背後では、立派な一人の占い師として成長したリリルが、タロットカードを胸に抱いて静かに前を見据えとる。


「ええねん。どんなに立派な扉でも、中におるのはただの『ブラック企業の役員』や。アレン、開けなはれ!」


「はいッ!」


 アレンの神速の一撃が、最後のロックを綺麗に十文字に斬り裂いた。

 ズゴォォォンッ! と重たい音を立てて扉が崩れ落ちる。

 だが、その奥に広がっていた光景は、うちらの予想を遥かに超えるほど「異様」やった。


===========


 そこは、見渡す限りの真っ白な空間やった。

 巨大な円卓を囲んで、アイロンの効いた純白の軍服を着た数十人のエリート(役員)たちが、外の騒ぎなど一切聞こえていないかのように、淡々と会議を進めとったんや。


「……第4プラントにおける労働力の損耗率が3パーセント上昇。速やかに予備の『部品(市民)』を補充し、幸福度マニュアルの読み上げ時間を倍に設定せよ」


「承認します。すべては、皇帝陛下の偉大なる幸福計画のために」


 誰一人として、顔に感情がない。

 まるで機械のように、ただ「数字」と「効率」だけを追い求め、人間の命をグラム単位で消費する計算を繰り返しとる。


「……なんやこれ。完全に狂っとるわ」


 うちは思わず眉をひそめた。

 すると、上座に座っていた、一際冷たい瞳を持った初老の男――このタワーの最高管理官が、ゆっくりとうちらの方へ顔を向けた。


「……不法侵入者ですね。防衛部隊の子供たちも、工場の労働者たちも、貴女の持ち込んだ『不純物(感情)』によってエラーを起こしたと報告を受けています」


「不純物やて? アホか! 痛い時に泣いて、疲れた時に休むんが、人間の当たり前の姿やろが!」


 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、円卓のド真ん中へとズンズン歩み寄った。


「あんたら、上の安全な部屋でふんぞり返って、数字ばっかり弄り回しやがって! 下でどれだけの人間が血反吐吐いてるか、自分の目で見に行ったことあるんか!」


「見る必要などありません。我らアルビオンの民は、自らの命を削って帝国に貢献することに『至上の幸福』を感じるように最適化されています。貴女のような野蛮な感情論は、この完璧なシステムにおいて、ただの『バグ』に過ぎない」


 管理官が指を鳴らすと、天井から無数の魔導砲塔がうちらに狙いを定めた。


「静江さん、ここは僕が!」


「待ちなはれ、アレン。こんな機械に頼り切った頭でっかちのエリート、力でねじ伏せても意味があらへん。……リリルちゃん、あんたはどう見る?」


 うちが視線を向けると、リリルは一歩前に出て、円卓の役員たちを静かに見渡した。

 そして、手元のタロットから一枚をバシッと展開した。


「……『隠者(The Hermit)』の逆位置だよ。……おじさんたち、自分たちの作った狭い世界に閉じこもって、本当の現実から目を逸らしてる。……それに、おじさん」


 リリルは、冷徹な管理官を真っ直ぐに見据えた。


「おじさん、さっきから机の下で、貧乏ゆすりが止まってないよ。……本当は、その分厚いマニュアル通りに計算が合わなくて、すっごく焦ってるんじゃない?」


 管理官の顔が、一瞬だけピクリと引きつった。


「……戯言を」


「戯言ちゃうわ! リリルちゃんの言う通りや!」


 うちはリリルの言葉を引き継いで、特大トングで机をバンッと叩いた。


「あんたらの言う『完璧なシステム』とやらを維持するために、あんたら役員自身も、実は寝る間も惜しんで、数字の辻褄合わせに必死になっとるんやろ。……本当は、こんな息苦しい生活、一番投げ出したいんはあんた自身なんとちゃうか?」


===========


 図星を突かれた管理官の呼吸が、微かに乱れる。


「……黙れ。我々は皇帝陛下の頭脳。疲労などという下等な感覚は……ッ!」


「強がらんでええ! そんなに数字が大事なら、おばちゃんが極上の『サプリメント』で、あんたの限界突破した数値を叩き直したるわ!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに手を突っ込み、疲労を回復させる赤色の『イチゴ味』と、精神を安定させるオレンジ色の『オレンジ味』の飴ちゃんをドサッと取り出した。

 そして、それらを特大トングで器用に挟み込み、円卓を囲む役員たちの口元めがけて、次々と正確に弾き飛ばしていったんや!


「んぐっ……!?」


「な、なんだこの甘露は……!」


 マニュアルによって極限まで感情を殺し、痛みを麻痺させていたエリートたちの口内に、イチゴとオレンジの暴力的なまでの甘さと回復魔力が弾けた。


「あ……れ……?」


 数秒後。

 最高管理官の目から、あの不気味なほどの冷徹さがスゥッと抜け落ちていった。

 代わりに押し寄せてきたのは、何十年分も溜め込み、無理やり見ないふりをしてきた『圧倒的な過労』と『プレッシャー』やった。


「……あ、あぁ……。頭が、割れるように痛い……。……なぜ私は、こんな終わりのない計算を……毎日、毎日……」


「……休みたい。もう、数字を見るのは嫌だ……。家に帰って、温かいスープが飲みたい……」


 次々と机に突っ伏し、分厚いマニュアル本を放り出して泣き崩れる役員たち。

 彼らもまた、皇帝という絶対的なブラック社長に心を縛られ、限界まで使い潰されていた「可哀想な社畜」に過ぎんかったんや。


「……ふぅ。これで役員会議も強制終了(お開き)やな」


 うちは泣きじゃくる管理官の背中を、トングの先で優しくトントンと叩いてやった。


「……お疲れさん。完璧な人間なんて、この世のどこにもおらへんねん。しんどい時は、素直に『しんどい』って泣いて、甘いもん舐めて寝るんが一番やで」


 末端の防衛部隊、工場の労働者、そして中枢の役員たちまで。

 おばちゃんの「飴ちゃんとド正論」によって、アルビオン帝国の狂った常識は、いよいよその根底からガラガラと崩れ去ろうとしとった。


「……静江さん。彼らもまた、被害者だったのですね」


 アレンが剣を納め、静かに呟く。


「せや。悪いのは、この国の人間の心を全部『数字とマニュアル』に書き換えた、一番上の親玉(社長)だけや! さぁ、アレン、カイル、リリルちゃん! 次はいよいよ、皇帝のいる社長室(玉座)へ、最後の大掃除(ガサ入れ)に行くでぇぇッ!」


 大帝国アルビオンの中枢タワー。

 役員たちに強制的な「有給休暇」を与えたオカン一行は、このディストピアの元凶である皇帝の首を取るべく、ついに最上階へと向かって歩みを進めるんや!


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