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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第14章:東西家族の大集結! ルミナ湾の特大バーゲンセール

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第215話 特売行列の防衛戦と、東から来た狂戦士たち

 海賊諸島の入り口に構築された、廃船の残骸によるジグザグの浅瀬……名付けて『特売行列コース』。

 そこに、真っ白な帆を張り、分厚い鋼鉄の装甲を纏ったアルビオン帝国の先遣隊、五十隻の軍艦が怒涛の勢いで押し寄せてきた。


 ドォォォォンッ!! ドォォンッ!!


 無数の魔導砲が火を噴き、海賊諸島の防波堤や浅瀬のバリケードに着弾して凄まじい水柱を上げる。


「慌てなさんな! 敵の船はデカすぎて、この細いジグザグ道じゃ横に並ばれへん! 縦一列になったところを、両側から集中砲火や!」


 うちは防波堤の安全な場所にパイプ椅子を広げて立ち、特大のゴミ拾いトングを指揮棒代わりに振りかざした。


「ガトー! アーニャ! 手前まで引きつけてから、一気に撃ち返しなはれ!」


「「応ッ!!」」


 ガトーとアーニャが率いる海賊衆が、砦の大砲や魔導銃を一斉に放つ。

 狭い水路に誘い込まれた帝国軍の先頭の船は、身動きが取れないまま両側面から十字砲火を浴び、次々と帆柱をへし折られて海上で立ち往生していく。

 だが、相手は腐っても世界最大企業の正規軍や。


『ええい、構わん! 前の船を盾にしてでも、強引に突破しろ! 反乱分子の海賊どもを島ごと海に沈めろ!』


 帝国軍の指揮官の怒号が響き、後続の軍艦が、味方の壊れた船を無理やり押し退けながら、防波堤へ向かってジリジリと距離を詰めてきよる。


「静江さん、砲撃だけでは止めきれません! 僕が出ます!」


 アレンが、西の大陸の長剣を抜き放ち、防波堤の縁に立った。


「アレン、無茶しなや! 敵は五十隻もおるんやで!」


「無茶はしません。……僕はもう、あなたの背中に隠れて震えていた、昔の僕じゃない。あなたを護るための、一人前の騎士です!」


 アレンはうちに向かって、迷いのない、清々しい笑顔を向けた。

 その顔を見て、うちは思わず息を呑んだ。

 敵の少年兵を拾ったあの日から、どこか冷たく張り詰めていた彼との間の「すれ違いの空気」が、完全に氷解しとったんや。


===========


「風よ! 『刹那の跳躍』ォォッ!」


 アレンが防波堤を蹴り、荒れ狂う海面を飛び石のように駆け抜けていく。

 彼の瞳が青白く輝き、極限の動体視力『刹那の観測』が発動する。飛来する魔力弾の軌道をスローモーションで読み切り、紙一重で躱しながら、アレンは先頭の帝国軍艦の甲板へと隕石のように降り立った。


『なっ!? 剣士が一人で乗り込んできたぞ! 撃てェッ!』


「遅い!」


 アレンの長剣が閃く。

 血は流さない。だが、その神速の刃は、帝国兵たちが構えた魔導銃の銃身を次々と真っ二つに斬り裂き、返す刀の峰打ちで、彼らの意識を正確に刈り取っていく。

 さらにアレンは、船の操舵輪を強烈な蹴りで粉砕し、帆を張るためのロープをスパスパと切り落とした。

 動力を失った巨大な軍艦は、波に流されて完全にコントロールを失い、後続の味方の船の進路を塞ぐ巨大な「障害物」と化したんや。


「……すごい。アレンの旦那、前よりずっと動きがキレてやがる」


 大砲の弾を込めながら、ガトーが感嘆の声を漏らす。

 うちは、敵船の上を風のように舞うアレンの背中を見つめながら、小さく、そして嬉しそうに笑った。


(……ほんまに、立派になったもんやわ)


 彼はもう、守られるだけの子供やない。

 うちが過去のトラウマに囚われて、過保護に抱え込もうとしなくても、彼は自分の足で立ち、自分の意志で、大切なもんを護るために戦える強さを持っとるんや。


「アレン! その調子で、後ろの船のハンドル(舵)も全部引っこ抜いてきなはれ!」


「了解です! この海賊諸島には、指一本触れさせません!」


 アレンの圧倒的な遊撃と、海賊衆の地の利を活かした砲撃。

 序盤の防衛戦は、完全にうちらオカン・ユニオンのペースで進んどった。

 だが、時間の経過とともに、どうしても埋められない「絶望的な壁」が、重くのしかかってきよった。

 数の暴力や。


『……ひるむな! 敵の体力も限界だ! 次の部隊、前へ出ろ!』


 五隻を無力化しても、後ろからまだ四十五隻もの無傷の軍艦が控えている。

 対するうちらは、三十の海賊団とはいえ、連日の防衛準備とぶっ通しの砲撃戦で、すでに体力が底を突きかけとった。


===========


「ハァッ……ハァッ……。オカン! 砲身が焼け付いて、もうこれ以上大砲が撃てねえ! 弾も残りわずかだ!」


 顔をススで真っ黒にしたアーニャが、息を切らして報告してくる。

 海上で無双していたアレンも、何百人もの兵士を相手にし続け、魔力の消耗で肩で息をし始めとった。


 ドゴォォォォンッ!!


 ついに、帝国軍の一斉砲撃が、うちらのジグザグのバリケードの一部を粉砕した。

 瓦礫が吹き飛び、海賊諸島の港へと続く「直線の道」が、ポッカリと開いてしもうたんや。

『バリケードが崩れたぞ! 今だ、一気に港へなだれ込めェェッ!』


 帝国軍が歓喜の声を上げ、十隻以上の装甲船が、黒煙を上げながら防波堤へと猛スピードで突っ込んできた。


「……くそっ! ここまでか……!」


 ガトーが、焼け付いた魔導銃を投げ捨て、悔しそうに拳を叩きつける。

 アレンも、迫り来る巨大な軍艦の群れを前に、剣を杖代わりにして膝をつきそうになっとった。



「諦めたらアカン!!」


 うちはパイプ椅子から飛び降り、特大のゴミ拾いトングを両手で構えて、防波堤の最前線に立った。


「まだ店は閉めへんよ! おばちゃんの『待ち合わせの約束』は、絶対に破られへんのや!」


 その時やった。


 ドォォォォォォンッ……!!!


 敵の砲撃とは違う、腹の底を震わせるような、重く、太い太鼓の音が、海賊諸島の東側の海域から響き渡った。


「……な、なんだ? 今の音は……」


 帝国軍の指揮官が、突撃の号令を止めて東の海を見る。

 朝霧が立ち込める東の水平線。

 そこから、凄まじい水飛沫を上げて姿を現したのは……真っ白な帆の西洋船ではない。

 分厚い鋼鉄の装甲で船体を覆い、家紋が描かれた無数の幕をはためかせる、異国の『巨大な鉄甲船』の大船団やった。


「――チェストォォォォォォォォッ!!」


 海鳴りかと思うほどの、狂気を孕んだ数万の男たちの咆哮。


「おばちゃん!! 待たせたなァァッ!!」


 先頭を走る一番巨大な鉄甲船。

 その舳先へさきに立ち、抜身の日本刀を肩に担いで爛々と目を血走らせているのは、あの『背水の修羅』から立派な新社長へと成長した若武者、佐吉やった。


「大和郷の島津グループ、特大の『出資(カチ込み)』に来たぜ!!」


「佐吉! 久義! 黒戸と半月の兄ちゃんらも! ……って、あんたら来るん早すぎひんか!? 手紙出してまだ数日しか経ってへんで!」


 うちが驚いて特大のサングラスをずらすと、佐吉の後ろに立つ天才軍師コンビが、算盤と図面を手に不敵な笑みを浮かべた。


「フッ……静江さん。我々二人の軍師の計算を舐めないでいただきたい。帝国本国との特大の商談(戦)がそろそろ始まる頃合いだと予測し、我々は数ヶ月前からすでに出航していたのですよ」


「ええ。あなたからの『同窓会の案内状』は、ここへ向かう途中の海上で受け取りました。……ついでにカリカに立ち寄り、職人たちも船に乗せて拾ってきましたよ」


 半月が顎でしゃくると、甲板の奥からカリカのドワーフたちが、油まみれの顔でニカッと笑った。


「ガハハハ! この鉄甲船の分厚い装甲は、俺たちが航海中に大和郷の船を『魔改造』してやったんだ! 帝国の砲弾なんか弾き返してやるぜ!」


「マジか! あんたら、ホンマに優秀な役員(家族)やな!」


 うちはパァッと顔を輝かせた。


 おばちゃんのSOSを待つまでもなく、はるか東の島国から海を駆け抜けてきていた『最強の家族』。

 ドワーフの技術で鉄甲船を手に入れた大和郷の狂戦士軍団が、今、帝国軍の背後という最悪の死角に、怒涛の勢いで到着を果たしたんや!


読んでくれてありがとうございます!


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