第210話 新大陸の夜明けと、オカン・ユニオンの合流
大地の化身である巨大熊と、天空の化身である巨鷲。
二匹の神獣が仲直りし、協力してメチャクチャだった大森林を「お片付け」した翌朝。
新大陸の空には、これまでで一番澄み切った、眩いばかりの朝日が昇っとった。
「……ふぅ。ええ空気や。深呼吸するだけで、寿命が三年くらい延びそうやわ」
うちは特大のゴミ拾いトングを杖代わりにして、朝露に濡れた大森林の丘の上から、広大な新大陸の景色を見下ろした。
隣では、アレンが西の大陸の長剣を背負い、清々しい笑顔で風を感じとる。
「ええ。帝国のプラントや不法建築が消え、この大陸の魔力循環が完全に正常に戻ったのが分かります。……静江さん、見てください!」
アレンが指差した先。
朝日に照らされる空の彼方から、紅蓮の炎を引いて飛んでくる『不死鳥』と、大空の王者『有翼の獅子』が、並んでうちらの上空へとやってきた。
さらに、地響きとともに、丘の下の巨大湖からは山のような『大地の亀』が首をもたげ、南の熱帯雨林の方角からは、美しい極彩色の羽毛を持つ『巨大蛇神』が、空を泳ぐようにして姿を現したんや。
そしてもちろん、目の前の森の奥からは、昨日仲直りしたばかりのベヒーモスとジズが、嬉しそうに顔を出しとる。
「……なんやなんや。全員集合かいな。朝礼にはちょっと豪華すぎる顔ぶれやで」
うちは特大のサングラスを少しだけずらし、ニカッと笑った。
『ピィィィィッ!』
『ルルルルル……』
言葉の通じない伝承の神霊たち。
だが、彼らが放つ温かい魔力の波長からは、この大陸の「特大のゴミ(帝国軍の施設)」を綺麗に掃除してくれたオカンに対する、心からの深い感謝と敬愛がヒシヒシと伝わってきた。
「あんたら、わざわざ見送りに来てくれたんか。義理堅い子らやな」
うちは、パイプ椅子をガシャンと広げてどっかと座り、彼らを見渡してパンパンと手を叩いた。
「でもな! うちらが掃除したからって、油断したらアカンで! この大陸は、今日からあんたら自身が管理する『特大のシェアハウス』や! 帝国みたいに、他人の庭に勝手に土足で踏み込んでくるマナーの悪い業者が来たら、今度はあんたらが全員で協力して、ド派手に追い返したるんやで!」
うちのオカン説教に、神霊たちは一斉に力強い雄叫びを上げ、頼もしく頷いてみせた。
これで、この新大陸の「大自然の防衛ネットワーク」は完璧や。アルビオン帝国がどれだけ軍隊を送り込もうが、この神霊たちが結託して立ち向かえば、絶対に自然を汚されることはない。
「よし! ほな、うちらはそろそろ行くわ! あんたらも、しっかりご飯食べて、元気におるんやで!」
うちは立ち上がり、アレンと共に丘を下り始めた。
背後からは、神霊たちの名残惜しそうな、けれど力強い見送りの鳴き声が、いつまでも響き渡っとった。
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大森林を抜け、荒野を越え、数日間の行軍を経て。
うちらはついに、新大陸の沿岸部……海風が吹き付ける海岸線へと帰還した。
「おーーい! おばちゃーーんっ! アレンの旦那ァァッ!」
海岸の岩場から、野太い歓声が上がった。
そこには、うちらが内陸の探索に向かっている間、海上の防衛と留守番を任せていた『オカン・ユニオン』の海賊衆たちが、小舟を出して迎えに来とったんや。
「おう! ガトー! アーニャ! 留守番ご苦労さんやったな!」
うちが手を振ると、ピンクにデコられた魔導銃を肩に担いだ巨漢のガトーが、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら飛びついてきた。
「姐さん! 無事でよかったぜ! 内陸部から、とんでもねぇ落雷やら地震の音が毎日のように聞こえてくるから、生きた心地がしなかったんですよ!」
「アホ、誰が死ぬかいな! おばちゃんは不老不死や言うてるやろ!」
うちはガトーの頭を特大トングでスパーンと叩き、アレンと一緒に彼らの小舟に乗り込んだ。
沖合に出ると、そこには壮観な景色が広がっとった。
ド派手な『ヒョウ柄のライン』が入った統一の帆を掲げる、三十隻の巨大な海賊艦隊。
赤鯱一家、金鯱一家、黒海亀一家……かつては魔の海域でいがみ合っていた荒くれ者たちが、今や一つの強固な「家族(会社)」として、ピカピカに磨き上げられた船の上にズラリと並び、うちらの帰還を熱烈な拍手で出迎えとる。
「静江姐さん! お帰りなさい! 海の防衛は完璧よ、帝国の偵察船は一隻残らず海の藻屑にしてやったわ!」
アーニャが双剣を掲げて誇らしげに笑う。
「おう! みんな、ええ仕事してくれたな! おかげで、こっちは内陸部の厄介なクレーム処理(神霊たちのお悩み解決)、全部まとめて綺麗に片付けてきたで!」
うちが拡声魔道具で艦隊全体に報告すると、三十隻の船から地鳴りのような歓声が沸き起こった。
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「……静江さん。これで、この新大陸での大掃除は、本当に『完了』ですね」
旗艦の甲板に降り立ったアレンが、黄金の算盤と長剣を腰に下げ、眩しそうに振り返った。
「せやな。西の大陸から始まって、大和郷、魔の海域、そしてこの新大陸。……気がつけば、世界中の特大のゴミ(理不尽)を、ぎょうさん分別してきたもんや」
うちは、アイテムボックスからタロットカードを取り出し、潮風の中でシャシャッとシャッフルした。
そして、まだ見ぬ海の向こう……世界の歪みの元凶である、巨大な黒幕が待つ方角へ向けて、バシッと一枚のカードを展開した。
出たのは、『審判(Judgement)』の正位置や。
「『審判』の正位置。……最終的な決着、復活、そして過去のすべての行いに対する『答え合わせ』の時や」
うちはカードの絵柄をデコネイルで弾き、特大のサングラスの奥で、ギラリと目を細めた。
「ええか、あんたら! 新大陸の掃除は終わったけど、この理不尽な法律と環境破壊を世界中に撒き散らしとる『悪徳元請け』……神聖アルビオン帝国の本国(本社)が残っとる!」
海賊たちの歓声が止み、全員の顔に凄まじい闘志が宿る。
「このまま逃げ帰ったら、またすぐにゴミを捨てに来よるわ! 次はうちらの方から、帝国のド真ん中にカチ込んで、溜まりに溜まった迷惑料、全部まとめて値切り倒しに行くでぇぇッ!!」
「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!! 一生ついていきやす、オカン社長ォォッ!!」」」
三十の海賊艦隊が、一斉に新大陸を背にして、新たな海へと帆を張った。
新大陸の伝承存在たちを新たなネットワークとして味方につけ、留守番していた海賊衆と無事に合流したおばちゃんとアレン。
彼らが留守番中に集めていた『新たな海の噂(お悩み相談)』を土産に、うちらの新しい航海が、今ふたたび賑やかに幕を開けるんや!
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