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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第209話 兄弟の和解と、更地になった境界線

 大地の化身である超巨大なベヒーモスと、天空の化身である超巨大なジズ

 天を衝く山脈と大森林を巻き込んで、果てしなく子供っぽい「縄張り争い」を繰り広げていた規格外の神獣たちは、おばちゃん特製の『超特大・飴ちゃん特濃フルーツポンチ』を胃袋にぶち込まれ、すっかり毒気を抜かれとった。


『……コォォ……』


『……フシュー……』


 メロン飴の限界突破する満腹感と、オレンジ飴の強烈なリラックス効果。

 二匹は、なぎ倒された巨木の上にドスンと並んで座り込み、うつろな目で満足げなゲップを漏らしとる。


「……さて。お腹も膨れて、頭も冷えたみたいやな」


 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、パイプ椅子をガシャンと広げて、二匹の巨体の真正面にどっかと座り込んだ。

 アレンが西の大陸の長剣を鞘に納め、うちの斜め後ろで静かに見守っとる。


「喧嘩の仲裁は、ここからが本番やで! あんたら、自分が周りの森にどんだけ迷惑かけたか、分かっとるんか!」


 うちが拡声魔道具メガホン越しに怒鳴りつけると、熊と鷲はビクッと肩を揺らし、バツが悪そうにスッと視線を逸らした。


「目ぇ逸らすな! あんたら、『地面から生えてる木は俺のモンだ!』『空に向かって伸びてるから私のモンだ!』って言うて、ずっと意地張ってたんやろ? アホか! 木は地面から栄養吸って、太陽の光浴びて育つんや! どっちが欠けても枯れてまうやろが!」


『……グルル……』


『……キュル……』


 正論すぎるオカン説教に、神獣たちがまるで叱られた子犬のようにシュンと首を垂れる。


「あんたら、別々の生き物やけど、この大自然っちゅう一つの『家』に住んでる家族やろ! 兄弟で部屋の真ん中にテープ引いて、『ここからこっちに入ってくるな!』って縄張り作って威張ってるから、ちょっと手が触れただけで特大の喧嘩になるんやわ!」


 うちはアイテムボックスからタロットカードを取り出し、バシッと一枚、岩のテーブルに叩きつけた。

 出たのは、『節制(Temperance)』の正位置や。


「よう見なはれ! 異なる二つの水が、一つのカップの中で綺麗に混ざり合っとるやろ! これが『調和』や! どっちのモンでもええ! お互いの領域が重なってるからこそ、この森は豊かになるんや! 境界線なんか消して、仲良く半分こ(シェア)して使いなはれ!」


===========


 静江の言葉は、魔法やない。

 ただの、どこにでもある「オカンの説教」や。

 やけど、飴ちゃんの効果で素直になっていた二匹の神獣の心に、その「家族としての当たり前の理屈」は、どんな呪文よりも深く、温かく染み込んでいった。


『……クゥゥン……』


 巨大な熊が、申し訳なさそうに巨大な前足をモジモジと動かし、隣に座る鷲の方をチラッと見た。


『……ピィ……』


 鷲もまた、黄金の羽を少しだけすぼめ、熊の方へとそっと頭をすり寄せた。

 さっきまで殺し合いのようにぶつかり合っていた空と大地の化身が、互いの体温を確かめ合うように、不器用な「仲直り」のハグを交わしたんや。


「……静江さん。本当に、ただの兄弟喧嘩の仲直りですね。スケールが大きすぎて麻痺しそうですが、見ていると心が温かくなります」


 アレンが、信じられないものを見る目で微笑む。


「せやろ? どんなにデカい神様かて、根本は人間と一緒やわ」


 うちはパイプ椅子から立ち上がり、パンパン! と大きく柏手を打った。


「よし! 仲直りしたんやったら、次ぎは『お片付け』の時間や! あんたらが暴れて散らかしたこの部屋(森)、自分らの手で綺麗に元通りにしなはれ!」


『オォォォォッ!』


『ピギャァァァッ!』


 二匹の神獣は、うちの指示に元気よく雄叫びで応えた。

 そして、ここからは「規格外の原状回復工事」の始まりや。


 ズズズンッ!


 巨大な熊が、隕石が落ちたようにボコボコに空いていたクレーターを、持ち前の大地の魔力と巨大な前足で、まるで砂場をならすように綺麗に平らにしていく。


 バサァァァッ!


 巨大な鷲が、へし折られて倒れていた巨木を、その強靭な爪でヒョイと掴み上げ、元の場所へ真っ直ぐに立て直していく。そして、巨大な翼で優しい風を巻き起こし、森中に「生命の息吹(治癒の魔力)」を降り注がせた。


===========


 大地の力と、天空の力。

 対になる二つの力が「争い」やのうて「協力」のために使われた時、その相乗効果は凄まじかった。

 折れていた木々の断面がピタリと繋がり、枯れかけていた葉が瞬く間に青々とした緑を取り戻す。荒れ果てていた大森林が、ほんの数十分で、喧嘩をする前よりも遥かに豊かで、生命力に満ちた姿へと再生していったんや。


「……見事ですね。互いの力を反発させるのではなく、補い合わせる。これが、この森の本来の姿だったんですね」


 アレンが、清浄な魔力で満たされた森の空気を胸いっぱいに吸い込む。


「せや! 兄弟は助け合わなアカンってことやな」


 うちは、すっかり元通りになった大森林を見渡し、満足げに特大トングを肩に担ぎ直した。


『……ルルルルル……』


 お片付けを終えた熊と鷲が、うちらの前に並んで顔を近づけてきた。

 その瞳には、子供っぽい意地や怒りはもうない。大自然の化身としての穏やかな威厳と、特大のおやつと説教をくれた「オカン」への、深い感謝の光が宿っとった。

 熊がうちのポンチョに大きな鼻先をすりすりと擦り付け、鷲がアレンの肩に金色の羽をそっと落としていく。


「よしよし。もう二度と、くだらんことで喧嘩したらアカンで。あんたらの家は、境界線なんかなくても、十分すぎるくらい広いんやからな」


 うちが笑いかけると、二匹は「コォォ……」と心地よい喉鳴らしで応え、そのまま寄り添うようにして、深い森の奥へと帰っていった。


「……ふぅ。これで、空と大地の兄弟喧嘩も一件落着やな」


 うちは、アイテムボックスから自分用のメロン飴を取り出し、口に放り込んだ。

 アレンも、剣の汚れを拭いながら、晴れやかな笑顔を向けてくる。


「ええ。今回は帝国が絡んでいなくて本当に良かった。純粋な大自然のトラブルを解決するのも、悪くないものですね」


「せやな。まぁ、たまにはこういう『純度100パーセントの身の上相談』もないと、おばちゃんの腕が鈍るわ」


 うちは特大のサングラスを押し上げ、木漏れ日が差し込む大森林の道を振り返った。


 新大陸に足を踏み入れてから、色んな神霊たちの痛みを和らげ、特大のゴミ(帝国の不法建築)を片付けてきた。

 蛇神、大地の亀、有翼の獅子、不死鳥、そして今回のベヒーモスとジズ。

 気がつけば、この広大な未知の大陸にこびりついていた「一番大きな汚れ」は、うちらの手でほとんど綺麗に漂白ブリーチされとったんや。


「……さてと! アレン、そろそろこの新大陸での出張鑑定も、ええ区切りみたいやで」


「えっ? ということは……」


「おう。この大陸の『総仕上げ』をして、また次の新しい海へ向かう準備や! 気合入れ直すで!」


 果てしなく迷惑な兄弟喧嘩を、オカンのおやつと説教で見事に仲裁したおばちゃん一行。

 新大陸の大掃除の旅は、いよいよ一つの大きな「終わり」と、次なる目的地への「始まり」を迎えようとしとったんや!



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