第207話 神速の分断作業と、オカンの仲裁準備
大森林の上空で、天を衝くような巨大な山脈を巻き込んで繰り広げられる、規格外の神獣たちの取っ組み合い。
大地の化身である超巨大な熊と、天空の化身である超巨大な鷲が、「この土地は俺のモンだ!」「私のモンだ!」という果てしなく子供っぽい意地の張り合いで、ドッタンバッタンと特大の兄弟喧嘩を続けとった。
『グルルォォォォォォォッ!!!』
熊が後ろ脚で立ち上がり、山肌から引き剥がした家ほどもある巨岩を、空の鷲に向かって連続でブン投げる。
『ピギャアアァァァァァッ!!!』
鷲はそれを巨大な翼で巻き起こした竜巻で弾き返し、そのまま鋭い鉤爪を突き出して熊の鼻先へと急降下する。
ドゴォォォォンッ!!
二匹の巨体がぶつかり合うたびに、凄まじい衝撃波が巻き起こり、うちらのいるふもとの大森林の木々が、まるでマッチ棒のように次々とへし折られていく。
「……あかん! あいつら、このままやと自分らが怪我する前に、周りの森が全部ハゲ山になってまうわ!」
うちは、暴風の中で特大のサングラスを必死に押さえながら、アイテムボックスから拡声魔道具を取り出した。
「おーい! そこのデカいバカ兄弟! ええ加減にしなはれ! ご近所迷惑考えんかい!」
腹の底から怒鳴ってみたが、うちのオカン声は、二匹の神獣が放つ轟音と咆哮にかき消されて、全く届く気配があらへん。
完全に頭に血が上って、周りの声なんか一ミリも聞こえへん状態や。
「静江さん! 駄目です、完全に理性を失っています! あの二体の間には、不用意に近づくことすら不可能です!」
アレンが、飛んでくる岩の破片を剣で弾き落としながら叫ぶ。
「分かっとるわ! 子供が本気で取っ組み合いの喧嘩してる時はな、外からいくら言葉で怒鳴っても無駄なんや!」
うちはメガホンを下ろし、特大のゴミ拾いトングをアレンの方へとビシッと突きつけた。
「アレン! こういう時は、間に『物理的な壁』を作って、強制的に引き離して頭冷やさせるんが一番や! あんたの神速で、あの二匹の間に割って入りなはれ!」
「……えっ!? ぼ、僕があの間に!?」
アレンが目を丸くして、上空で激突を繰り返す「山」と「雲」のような巨体を見上げる。
普通の人間の剣士が割って入れば、文字通り一瞬でミンチにされる絶望的なスケールや。
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「アホ! まともに受け止めろとは言うてへんわ! 熊の投げる岩と、鷲の放つ突風の『隙間』を突いて、二匹の間にあんたの剣圧で『特大の真空の壁』を作るんや!」
うちの無茶振りに、アレンは一瞬だけ引きつった笑いを浮かべた。
「……隙間を突いて、真空の壁……。相変わらず、静江さんのオーダーは規格外ですね」
だが、彼はすぐに西の大陸の長剣を構え直し、その瞳に青白い『刹那の観測』の光を強く宿した。
「……分かりました。喧嘩の仲裁(分断)なら、僕の剣の得意分野です!」
「よっしゃ! 頼んだで! その間に、おばちゃんが『特大のお説教』の準備しといたるからな!」
「風の精霊よ、我が剣に極限の旋風を! 『刹那の跳躍』!!」
ドゴォォォッ!
アレンが地面を蹴り飛ばし、自らを砲弾のようにして、暴風が吹き荒れる上空へと一気に跳躍した。
『グルルォォォッ!』
ちょうどその時、巨大な熊が、空の鷲めがけて特大の岩の雨を投げ放った。
そして鷲も、それを迎え撃つために無数の真空の刃を放つ。
二つの破壊のエネルギーが激突しようとした、まさにその『中間地点』。
そこに、神速の風を纏ったアレンが滑り込んだんや。
「……遅い!」
アレンの極限の動体視力が、岩と風の軌道をすべてスローモーションで捉える。
彼は空中で身体をコマのように高速回転させながら、長剣にありったけの魔力を込めて全方位に振り抜いた。
ガガァァァァァンッ!!!
アレンの剣から放たれた凄まじい竜巻が、飛来する巨岩を粉々に砕き、鷲の放った真空の刃を完全に相殺した。
さらに、その剣圧が空気を極限まで弾き飛ばし、熊と鷲の間に、一瞬にして見えない『分厚い真空の壁(防風林)』が形成されたんや。
『……ピギャッ!?』
『……グルルッ!?』
突然、自分たちの攻撃が空中で見えない壁に弾かれ、謎の銀色の光が目の前に現れたことに、二匹の神獣が驚いて動きを止めた。
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「……ふぅ。なんとか、間に合いましたね」
アレンが風の魔法で空中に滞空したまま、熊と鷲を両手で制止するように剣を構える。
虫ケラのようなサイズの人間が、規格外の自分たちの喧嘩に堂々と割って入ってきたことに、二匹の神獣は完全にパニックを起こして、ポカンと口を開けとった。
「よっしゃ、アレン! ナイス足止めや! そのままあいつらの気を引いときなはれ!」
うちは、二匹の動きが止まったのをふもとから確認すると、ニヤリと笑ってアイテムボックスの奥深くに両腕を突っ込んだ。
喧嘩を止めて頭を冷やさせるには、分断しただけじゃアカン。
腹を空かせてイライラしてる子供には、お腹いっぱい甘いもんを食わせて、強引に『おやつタイム』に引きずり込むんが、オカン流の最強の仲裁術や。
「ええか! これだけデカいバカ兄弟の胃袋を満たすには、それ相応の『スケール』と『カロリー』が必要やで!」
うちは、アイテムボックスに溜め込んでいた、これまでの旅の「備蓄」をドサドサッと森の広場に放り出し始めた。
大和郷の市場で買い占めた大量のスイカや桃、そして南のジャングルで現地住民たちからもらった特大のマンゴーやバナナといった、フルーツの山や。
さらに、それらを調理するための『超特大の金タライ』と、巨大な『すり鉢』をドンッと地面に置く。
「……アレン! あとちょっとだけ待っときや! 今からこのおばちゃんが、あいつらの意地もワガママも全部まとめて飲み込ませる、究極の『おやつ』を作ったるからな!」
うちは特大のゴミ拾いトングの持ち手をすりこぎ代わりにして、ド派手なフルーツの山へと向き直った。
空と大地の規格外の兄弟喧嘩。
それを力やのうて「胃袋」で完全制圧するための、オカン流『超特大フルーツポンチ』の調理が、大森林のド真ん中でいよいよ豪快に始まろうとしとったんや!
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