第206話 空と大地の兄弟喧嘩と、迷惑すぎる縄張り争い
火山の頂上で不完全燃焼を起こしていた不死鳥に特濃の着火剤を飲ませ、大地の魔力を搾取していた帝国のプラントを解体したうちら。
不死鳥の歓喜の炎に見送られながら、さらに新大陸の奥地へと足を進めとった。
次に目指すのは、遠くからでも分かるほど「ドッタンバッタン」と騒がしい気配が漂ってくる、天を衝くような巨大な山脈地帯や。
数日歩き、その山脈のふもとに広がる大森林に足を踏み入れた途端、うちらは尋常やない「大自然のクレーム(被害)」を目の当たりにすることになった。
「……なんやこれ。台風が通り過ぎた後みたいになっとるで」
うちは特大のゴミ拾いトングを杖代わりにしながら、周囲の惨状を見て呆れ果てた。
本来なら樹齢数百年はあろうかという巨木が、まるで爪楊枝のように根元からへし折られ、あちこちに散乱しとる。地面には、隕石でも落ちたかのような巨大なクレーターがボコボコと空き、空からは季節外れの雪……やのうて、人間の背丈ほどもある「巨大な極彩色の羽毛」がハラハラと舞い落ちてきとった。
「静江さん、気をつけてください。……この森、ただの自然災害で荒れたわけじゃありません。何か、とてつもなく巨大な『二つの力』が、真正面からぶつかり合った痕跡です」
アレンが西の大陸の長剣の柄に手を当て、油断なく周囲を警戒する。
ズズズンッ……! ドゴォォォォンッ!!
突然、うちらの足元がトランポリンのように大きく跳ね上がった。
「うおっ!? また地震か!」
「上です、静江さん!」
アレンの叫びに空を見上げると、太陽の光を完全に遮るほどの、黒い雲のような巨大な影が、山脈の上空で激しくぶつかり合っとった。
『グルルォォォォォォォッ!!!』
『ピギャアアァァァァァッ!!!』
大地を揺るがすような獣の咆哮と、鼓膜を劈くような怪鳥の鳴き声。
雲が晴れ、その二つの巨大な影の正体が露わになる。
一つは、山そのものが立ち上がったかのような、岩のように分厚い毛皮を持つ『超巨大な熊(大地の化身・ベヒーモス)』。
もう一つは、翼を広げれば街一つを覆い尽くせそうなほどの、極彩色の羽を持つ『超巨大な鷲(天空の化身・ジズ)』やった。
「な、なんちゅうデカさや……。今まで見てきた蛇や亀かて規格外やったけど、あれは完全に山と雲が取っ組み合いの喧嘩しとるようなもんやで!」
うちは風圧にポンチョをバタバタと煽られながら、特大のサングラスを必死に押さえた。
巨大な熊が、大地を抉るように後ろ脚で立ち上がり、空を飛ぶ鷲に向かって山頂の巨岩をバレーボールのように投げつける。
鷲はそれを巨大な翼で巻き起こした竜巻で弾き返し、鋭い鉤爪で熊の背中を削り取ろうと急降下する。
ドゴォォォォンッ!!
二匹が激突するたびに、衝撃波で森の木々がなぎ倒され、うちらのいるふもとにまで凄まじい暴風が吹き荒れた。
「……静江さん! あんな規格外の神霊同士が本気で殺し合えば、この山脈一帯が完全に消滅してしまいます! 帝国の連中が、また何か卑劣な罠でも仕掛けたのでしょうか!?」
アレンが風の防壁を展開しながら、焦燥の声を上げる。
「……どうやろな。でも、あの二匹の喧嘩の仕方、なんや『殺し合い』っちゅうよりは、えらいガキっぽい意地の張り合いに見えるんやけど」
うちは、暴風が吹き荒れる森の中で、アイテムボックスからパイプ椅子をガシャンと広げてどっかと座り込んだ。
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「アレン! あんたは飛んでくる岩と羽毛を弾くことだけに集中しなはれ! おばちゃんが、あの特大の喧嘩の『原因』を占ったる!」
うちは、使い込まれたタロットカードを取り出し、強風の中でバシッ、バシッと二枚のカードを展開した。
出たのは、『ワンド(杖)の5』の正位置、そして『皇帝(The Emperor)』の逆位置や。
「『ワンドの5』は、若者たちのゲームのような闘争、終わりのない小競り合い。そして『皇帝』の逆位置は、未熟な支配欲と、子供っぽいワガママや」
うちはカードの絵柄をデコネイルで弾き、上空で取っ組み合いを続ける熊と鷲をジッと鋭く観察した。
「……やっぱりな! アレン、安心しなはれ! あいつら、帝国に操られとるわけでも、恨みあって殺し合いしとるわけでもあらへんわ!」
「えっ!? では、なぜあんなに激しくぶつかり合っているんですか!?」
「ただの『兄弟喧嘩』や!!」
「……はい?」
アレンが、剣を振りかざしたままポカンと口を開ける。
「見てみぃ! あの熊さん、『地面から生えてる木は全部俺のモンや!』って言うて、鷲さんが木に止まるんを邪魔しとる! そしたら鷲さんの方は、『空に向かって伸びてるんやから私のモンや!』って言い返して、熊さんの頭に石落としてちょっかい出しとるんや!」
うちは、二匹の神獣の動きと波長から、そのスケールのデカすぎる喧嘩の理由を完璧に読み解いた。
「どっちがこの山の主か、どっちが偉いか。そんなしょうもない『所有権(縄張り)争い』で、意地張ってドッタンバッタン暴れ回っとるだけやわ! ほんまに、男兄弟の喧嘩は体がデカくなっても性質が悪いわ!」
おばちゃんのオカン的解釈(ド正論)を聞いて、アレンは「ええええっ……」と深く脱力した。
「そ、そんな……。大自然の化身ともあろう存在が、まるで子供のおもちゃの取り合いのような理由で、この森を破壊しているというんですか……?」
「神様やからって、みんな大人とは限らへんのや! むしろ、力がデカい分、ワガママになったら手に負えんのやわ!」
うちはパイプ椅子から立ち上がり、特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ直した。
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「……でもな。兄弟で喧嘩するんは勝手やけど、そのせいで近所(森)の木ぃへし折って、周りに迷惑かけるんは絶対に許さへんで! 家の中で暴れて障子破るガキには、おばちゃんの特大の『雷(お説教)』を落としたらなアカンな!」
『グルルルォォォォォッ!!』
『ピギャアアァァァァッ!!』
上空では、まだ二匹の神獣が「俺のモンだ!」「私のモンだ!」と意地を張り合って、特大の衝撃波を撒き散らしとる。
「アレン! 行くで! まずはあのバカ兄弟の喧嘩を『物理的に』分断して、頭冷やさせなあかん!」
「了解しました! スケールが大きすぎて気が遠くなりそうですが……僕の剣で、彼らの間に割って入ります!」
大自然を巻き込んだ、神獣たちの果てしなく迷惑な兄弟喧嘩。
帝国すら寄り付かない危険な領域で、オカン流の「特大の仲裁(お仕置き)」が、いよいよド派手に幕を開けようとしとったんや!
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