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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第203話 大空のカチ込みと、迷惑アンテナの強制撤去

 赤茶けた岩肌が連なる大渓谷グランドキャニオンの谷底。

 おばちゃん特製の「フワフワのヒョウ柄イヤーマフ」と、オレンジ味の飴ちゃんで完全にノイローゼから回復した伝承の神霊――『有翼の獅子グリフォン』は、うちらの前にその巨大な背中を差し出しとった。


「よっしゃ! ほな、お言葉に甘えて乗せてもらうで! アレン、しっかり掴まっときや!」


「はい! ……しかし、まさか大空の王者の背に乗って空を飛ぶ日が来るとは思いませんでした」


 うちらが黄金の羽毛に覆われた背中にまたがると、有翼の獅子は「ピギャアァァッ!」と誇り高い雄叫びを上げ、強靭な獅子の後ろ脚で大地を蹴った。


 ドゴォォォッ!


 凄まじい風圧とともに、景色が一瞬にして下へと遠ざかっていく。


「……うおぉぉっ! えらい急発進やな! 遊園地の絶叫マシンより迫力あるわ! せやけど、上空は風が強くてお肌が乾燥してしゃあない!」


 うちはヒョウ柄のポンチョをバタバタと風になびかせながら、有翼の獅子の首元にしっかりとしがみついた。


 目指すは、大渓谷の切り立った崖の頂上。

 そこには、周囲の環境も住人の迷惑も一切考えずに、強烈な電磁波(キィィィンという高周波ノイズ)を撒き散らし続けている、神聖アルビオン帝国の『巨大な黒い鉄塔(魔力通信アンテナ)』がそびえ立っとる。


「……見えました、静江さん! 崖の上の平らな岩盤に、通信基地が築かれています。警備の帝国兵も多数!」


 アレンが強風の中で目を細めて叫ぶ。


「よっしゃ! 騒音クレーマーの家に、空からの特大ガサ入れや! 鳥ライオンさん、あのふざけたアンテナのド真ん前に、ド派手に着陸したって!」


『キュルルルッ!』


 有翼の獅子が応え、巨大な翼を広げて急降下を開始した。


===========


『な、なんだあれは!? 空から巨大な魔獣が……グリフォンが降ってくるぞ!』

 崖の上の通信基地で警備に当たっていた帝国兵たちが、急降下してくる巨大な影に気づき、慌てて魔導銃を構えた。


『なぜだ! あのグリフォンは、我々の発生させる高周波ノイズで近寄れないはずだぞ!』


『馬鹿な、よく見ろ! あいつの耳に、何か奇妙な派手な布(ヒョウ柄)が巻き付けられている! しかも背中に人間が乗っているぞ!』


 帝国兵たちがパニックに陥る中、有翼の獅子はアンテナのすぐ手前の岩盤に、ズドゴォォォンッ! と地響きを立てて着陸した。

 巻き起こった突風が、帝国兵たちを次々と吹き飛ばす。


「……到着や! はい、あんたら! ええ加減にしなはれや!」


 うちは有翼の獅子の背中からヒョイと飛び降り、特大のゴミ拾いトングを肩に担いで、通信基地の責任者らしき将校をビシッと指差した。


「こんな大自然のド真ん中で、夜も昼も構わずキィィィンって変な電波撒き散らして! アパートやったら隣の部屋から壁ドンされるレベルの騒音トラブルやで! ご近所迷惑っちゅう言葉を知らんのか!」


『なっ……!? 貴様、何者だ! 我が帝国の最新鋭通信網を、アパートの騒音と一緒に――』


「一緒に決まっとるやろ! どんな最新鋭か知らんけど、他人の安眠を妨害する機械は全部『ただの迷惑な粗大ゴミ』や!」


 うちの容赦ないオカン説教に、将校は顔を真っ赤にして激昂した。


『ええい、黙れ! 迎撃しろ! その女も魔獣も、ハチの巣にしてしまえ!』


 ダダダダダッ!

 帝国兵たちの銃口から、無数の魔力弾が雨あられと降り注ぐ。

 だが、今のうちらには最強の『盾』と『剣』が揃っとるんや。


『グルァァァッ!』


 有翼の獅子が、自分を苦しめていた元凶(帝国兵)に向けて、巨大な翼を力強く羽ばたかせた。

 巻き起こった竜巻のようなカマイタチが、飛来する魔力弾をいとも簡単に空中で相殺し、吹き飛ばしていく。


「道は僕が開きます! 『刹那の観測』!」


 そして、その風の隙間を縫うように、アレンが神速の踏み込みで最前線へと躍り出た。

 彼の長剣が、目にも止まらぬ速さで空を切り裂き、帝国兵たちが構えていた魔導銃の銃身だけを、次々とスパァァンッ! と真っ二つに斬り落としていく。


『ひぃっ!? 銃が……斬られた!』


『化け物だ! 剣士も魔獣も、強すぎる!』


===========


 有翼の獅子とアレンの完璧な連携によって、通信基地の警備網はあっという間に無力化されてしもうた。


「……よっしゃ、外堀は埋まったな。残るは、あの一番デカい粗大ゴミ(アンテナ)や」


 うちは、空を突くようにそびえ立つ、黒光りする巨大鉄塔を見上げた。

 塔の先端にある魔力増幅器から、今もうちらの耳には微かに、しかし確実に「キィィィン」という不快なノイズが撒き散らされとる。


「アレン! あの鉄塔の土台、よう見てみぃ! 太い四本のボルトとワイヤーで、無理やり岩盤に固定されとるだけや!」


 うちの指示に、アレンが『刹那の観測』の目で鉄塔の根元をスキャンする。


「……本当だ! あれだけ巨大な塔なのに、基礎工事が甘い。仮設のアンテナのように、太いワイヤーの張力だけでバランスを保っています!」


「せや! 帝国の連中は、効率ばっかり求めて『突貫工事』で建てたんや! テントのペグ(杭)と同じ理屈やから、あの支えるワイヤーを全部切ってしまえば、自重で勝手に倒れるわ!」


『なっ……!? ば、馬鹿な! この通信塔が倒れれば、新大陸全土の帝国軍の連携が完全に麻痺してしまうぞ! やめろォォッ!』


 将校が血相を変えて叫ぶが、おばちゃんの「強制撤去」は止まらへん。


「知ったこっちゃないわ! アレン! 鳥ライオンさん! あの四本のワイヤー、一気に切断しなはれ!」


「了解しました! 行きます!」


『ピギャアアアッ!』


 アレンが風を纏って地を駆け、有翼の獅子が空から急降下する。


 ズバァァァンッ!!


 アレンの神速の剣閃が、地上に固定されていた二本の極太ワイヤーを一刀両断にし、同時に有翼の獅子の巨大な爪が、残りの二本のワイヤーを軽々と引きちぎった。


 ギギギ……ギギギギギィィィッ……!!


 支えを失った巨大な魔力通信アンテナは、自らの重みに耐えきれず、不気味な金属音を立てながらゆっくりと傾き始めた。


『あ、あぁぁ……! 帝国の、通信網が……!』


 ドゴォォォォォォォォンッ!!!

 凄まじい轟音とともに、巨大な黒い鉄塔は崖の下へと真っ逆さまに崩れ落ち、跡形もなくスクラップと化したんや。


===========


 プツン……。

 鉄塔が崩壊した瞬間、大渓谷にずっと響き渡っていた「キィィィン」というあの耳障りな高周波ノイズが、完全に消え去った。

 大自然本来の、風が岩をすり抜ける清らかな音だけが、静かに戻ってくる。


『……ピィィィィィィッ!!』


 有翼の獅子が、イヤーマフ越しでも分かるほどの「完全な静寂」を取り戻した大渓谷の空に向かって、歓喜と感謝に満ちた、大空の王者としての誇り高い雄叫びを上げた。


「……ふぅ。これで特大の騒音トラブルも、無事に解決やな」


 うちは、泥だらけになった特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ直し、特大のサングラスを押し上げて、ホッと息を吐いた。

 将校をはじめとする帝国兵たちは、完全に戦意を喪失し、白旗を振りながら崖の下へと逃げていったわ。


「お見事でした、静江さん。物理的な破壊だけでなく、構造の弱点を突いて自壊させるとは。これで帝国の情報網は、この地域一帯で完全に死んだはずです」


 アレンが剣を鞘に納め、清々しい笑顔で歩み寄ってくる。


「せや。ご近所トラブルは、元から絶たなアカンからな」


 うちは有翼の獅子に歩み寄り、顎の下のバックルを外して、特製の『ヒョウ柄イヤーマフ』を優しく外してやった。


「もう、こんな耳栓せんでも大丈夫やで。あんたの立派な家(縄張り)は、静かになったわ」


『……クゥゥゥン……』


 有翼の獅子は、うちの手にすりすりと頬を擦り付け、感謝を示すように大きな瞳を細めた。


 大渓谷の騒音トラブルを、オカン流の耳栓と物理的な「強制撤去」で見事に解決したおばちゃん一行。

 伝承の神霊たちの痛みを理解し、彼らと共に帝国の横暴を打ち砕いていくフェーズは、いよいよ新大陸のさらに深く、未知の領域へと続いていく。


「さてと! アレン、次はどこへ行こか! この新大陸には、まだまだ『言葉の通じへん迷子』がぎょうさんおるはずやで!」


「はい! どこまでも付き合いますよ、静江さん!」


 大空の王者に見送られながら、おばちゃんの出張鑑定は、新たなる秘境へ向かって、今日も力強く歩みを進めていくんや!


読んでくれてありがとうございます!


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