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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第196話 熱帯の巨大蛇神と、言葉の通じない超特大クレーム

 荒野の魔族たちとの大宴会を終え、大長老たちに見送られて南へ向かったうちら。

 赤茶けた荒野の景色は、数日も歩けば嘘のように一変し、見渡す限りの鬱蒼うっそうとした緑の壁……強烈な湿気と熱気を孕んだ「熱帯雨林」へと姿を変えとった。

 大長老が『伝承の領域』と呼んだ、新大陸のさらに未開の奥地(中南米モデルの秘境)や。


「……あー、暑い! 湿気がまとわりついて、髪の毛が爆発しそうやわ! おまけに変なデカい虫がいっぱい飛んでるし、最悪や!」


 うちは、特大のゴミ拾いトングを杖代わりにして、ドロドロの腐葉土を踏みしめながら盛大に愚痴をこぼした。

 極端に短いホットパンツにヒョウ柄のポンチョという格好は、このジャングルでは虫の格好の標的になりそうやけど、不老不死の肌には虫刺され一つできへんのが唯一の救いや。

「静江さん、気をつけてください。この辺りから、明らかに空気の質が変わりました。……大自然の魔力が濃すぎて、呼吸をするだけで肺が重くなるようです」


 先頭を歩き、西の大陸の長剣で邪魔なツル草を切り払っているアレンが、油断なく周囲を警戒する。

 レギュラーはうちとアレンの二人だけ。

 言葉の通じない神霊や幻獣たちが棲むというこの秘境で、うちらの頼りになるのは、アレンの神速と、うちの『タロット(出張鑑定)』だけや。


「大長老のおっちゃん、帝国がこの奥地にも手ェ出しとるかもって言うてたな。……ホンマ、あいつらどこにでも湧いてくるゴキブリみたいな連中やで」


 うちが額の汗を拭った、その時やった。


 ズズズンッ……! ドゴォォォォンッ!


 ジャングルの奥深くから、突然、地震のような凄まじい地鳴りと、見上げるような巨木が次々とへし折られる轟音が響き渡った。


「な、なんや!?」


「静江さん、下がって! 何か巨大なものが、猛スピードでこちらへ向かってきます!」


 アレンが剣を構え、うちを庇うように前に出る。

 次の瞬間、うちらの目の前の密林が、爆発したように吹き飛んだ。


===========


『シャァァァァァァァァッ!!!』


 吹き飛んだ木々の向こうから姿を現したのは、全長数十メートルはあろうかという、規格外の『巨大な大蛇』やった。

 だが、ただの蛇やない。その身体はエメラルドのように輝く美しいウロコに覆われ、背中と頭部からは、極彩色の『巨大な羽毛』が翼のように生えとるんや。

 まさに、古代の伝承に語られる神霊そのものの姿。

 やけど、その神々しいはずの姿は、今は手がつけられないほどの『怒り』と『狂気』に支配されとった。


『キシャアアアアッ!』


 羽毛の蛇神が雄叫びを上げると、周囲の空気がカマイタチのような鋭い『風の刃』となって無差別に放たれ、ジャングルの木々をミンチのように粉砕していく。


「くっ……! 風よ、僕の剣に宿れ! 『刹那の観測』!」


 アレンが神速の踏み込みで、うちらに向かって飛んでくる無数の風の刃を、目にも止まらぬ速さで次々と弾き落とす。


 ガキィィィンッ! バキンッ!


「……静江さん! これはただの魔物じゃない! 完全に意思の疎通を拒絶した、大自然の暴力そのものです!」


 アレンが剣を振るいながら叫ぶ。


「分かっとるわ! あんなデカい声で喚かれたら、鼓膜が破れそうや!」


 羽毛の蛇神は、人間の言葉など一切理解しない。ただひたすらに、目につくものすべてを破壊し尽くそうと、巨大な尾を振り回し、口から猛毒の霧を吐き出しとる。

 話し合いなんて、一ミリも不可能な状態や。


「アレン! あんたはあの蛇の攻撃を弾くことだけに集中しなはれ! うちが『原因』を突き止める!」


 うちは、暴れ狂う蛇神が巻き起こす暴風のド真ん中で、アイテムボックスからパイプ椅子をガシャンと広げてどっかと座り込んだ。


「静江さん!? こんな状況で占いを!?」


「言葉が通じへんのなら、カードに『通訳』してもらうしかないわ!」


===========


 うちは特大のサングラスを押し上げ、暴風の中で使い込まれたタロットカードを展開した。

 今回は原因を深掘りするため、過去・現在・対策を導き出す『スリーカード(三枚引き)』のスプレッドや。

 バシッ、バシッ、バシッと、泥の地面に三枚のカードを展開する。

 出たのは、『ソード(剣)の9』の正位置、『皇帝(The Emperor)』の逆位置、そして『ソード(剣)の7』の正位置や。


「『ソードの9』は、夜も眠れないほどの精神的・肉体的な苦痛とストレス。……なるほどな。あのデカい蛇さん、怒り狂っとるんやない。ただ『痛くてパニックになっとる』だけやわ」


 うちはカードの絵柄をデコネイルで弾き、空中で身を捩らせて暴れる羽毛の蛇神を、上から下までジッと鋭く観察した。


「そして過去の原因を示すのが『皇帝』の逆位置と、『ソードの7』。……傲慢で身勝手な権力者が、コソコソと他人の庭に忍び込んで悪さをした暗示やな」


 言葉を持たない赤ん坊が、どこかが痛くて泣き喚いているのと同じ状態。

 そして、その原因を作ったのは「傲慢なコソ泥(帝国軍)」。


「アレン! あの蛇さんの身体、よう見てみぃ! 美しいウロコの中に、なんか『不自然な人工物』が混ざってへんか!」


「人工物……? はっ!」


 アレンが『刹那の観測』の極限の動体視力で、猛スピードで暴れ回る蛇神の巨体を隅々までスキャンする。


「……見えました! 首の少し下、エメラルドのウロコの隙間に……巨大な鉄の『くさび』のようなものが、深く突き刺さっています! あそこから、どす黒い魔力のノイズが漏れている!」


「やっぱりな! カードの言う通りや! 『皇帝の逆位置(帝国)』の連中が、この森の魔力を探るためにコソコソ打ち込んだ『特大の探査アンカー(ソードの7)』やわ!」


 帝国軍が身勝手に森を荒らし、その過程で、この神霊の身体に巨大なゴミ(杭)を突き刺していったんや。

 それが化膿し、夜も眠れないほどの激痛を引き起こして、この神霊を狂暴化させてしもうとった。


「なんや、お腹に帝国のゴミが刺さって痛いんか! そら、あんなデカいトゲ刺さったままやったら、誰かてイライラして暴れたくなるわな!」


 うちはパイプ椅子から立ち上がり、特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ直した。


「原因が分かれば、こっちのモンや! ただの『トゲ抜き(お掃除)』やないの!」


===========


『シャアアアアァァァッ!!』


 羽毛の蛇神が、うちらを敵と見なして、さらに強烈な風の刃と毒霧をまとって急降下してきた。


「……アレン! あのデカいトゲ、あんたの剣で引っこ抜けるか!」


「あれだけ深く食い込んでいては、僕の剣で斬り落とすことはできても、根本から『抜く』ことはできません! 逆に傷口を広げてしまいます!」


 アレンが風の防壁を展開しながら、焦燥に顔を歪める。


「せやな! 物理的なトゲ抜きには、それ相応の『道具』と『手順』が必要や!」


 うちは、暴れ狂う蛇神を見上げ、ニヤリと極悪なオカンの笑みを浮かべた。


「言葉が通じへんクレーマーには、まずは強引に『麻酔』打って大人しくさせるんが一番や! アレン! おばちゃんが今から、とびきりの『鎮痛剤(飴ちゃん)』を調合したる! あんたの神速で、あの蛇の口ん中に放り込む準備しなはれ!」


「了解しました! 道は僕が開きます!」


 言葉の通じない神霊と、原因を完全に特定したおばちゃん。

 超特大のトゲ抜き(大手術)に向けた、オカン流の泥臭い医療行為が、熱帯雨林のド真ん中でいよいよ本格的に幕を開けようとしとったんや!



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