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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第191話 襲来する雷鳥と、タロットが暴く濁った雷雲

 荒野の魔族の集落が、どす黒い紫色の雲に覆われ、空気が焦げるような『オゾンの匂い』が立ち込めた。

 ゴロゴロゴロ……ッ!!

 遠くの山脈から響いていた雷鳴は、瞬く間に集落の真上へと到達した。

 大長老が悲痛な叫びを上げる中、上空の分厚い雷雲がパカッと割れ、そこから凄まじい稲妻を纏った『巨大な怪鳥』が姿を現したんや。


 翼を広げれば数十メートルはあろうかという、黄金色の羽を持つ伝説の霊鳥『雷鳥サンダーバード』。

 だが、その神々しいはずの姿は、赤黒い瘴気とすすのような汚れに覆われ、激しい怒りと苦痛に身を捩らせながら、無差別に集落へと落雷を撒き散らしとった。


「おおお……! 荒野の守り神が、我らを見捨てて怒り狂っておられる……!」


 大長老が膝をつき、天を仰ぐ。


「大長老様! このままでは集落が灰になります! 迎撃を!」


 赤き鷹をはじめとする魔族の戦士たちが、震える手で弓を引き絞るが、上空を舞う雷鳥には矢は届かず、逆に落ちてきた雷が彼らのすぐ横のテントを吹き飛ばした。


「ヒィィッ! お、おしまいだぁっ!」


 集落がパニックに陥る中、うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、パイプ椅子を広げてどっかと座り込んだ。


「アレン! あの鳥さんの『お小言(雷)』、ちょっと防ぎなはれ!」

「了解しました! 避雷針の役目なら任せてください! 『雷光の観測』!」


 アレンが西の大陸の長剣を空に掲げ、風の魔法で自らの身体を「アース(接地)」代わりにする。雷鳥から放たれる無数の稲妻が、アレンの剣に吸い寄せられ、そのまま地面へと安全に逃がされていく。


「くっ……! さすがに、大自然の雷をすべて受けるのは骨が折れます……!」


 アレンの金髪が静電気で逆立ち、足元の地面が黒く焦げとる。


===========


「よう持ちこたえとるわ! その間に、おばちゃんが『原因』を調べたる!」


 うちは、雷鳴が轟く中、アイテムボックスから使い込まれたタロットカードを取り出し、バシッ、バシッと二枚のカードを展開した。

 出たのは、『塔(The Tower)』の正位置、そして『女教皇(The High Priestess)』の逆位置や。


「『塔』の正位置は、突然の災害や崩壊。……そして『女教皇』の逆位置は、ヒステリー、呼吸器系のトラブル、あるいは『不潔な環境によるストレス』の暗示やな」


 うちは特大のサングラスを押し上げ、上空で暴れ狂う雷鳥を、上から下までジッと鋭く観察した。


「……なるほどな。あの鳥さん、怒っとるっちゅうより、ただ『息苦しい』だけやわ。……赤き鷹の兄ちゃん!」


 うちは、弓を構えていた赤き鷹に声をかけた。


「あの鳥さんの住処、普段はもっと高い空の上なんやろ?」


「あ、ああ。本来なら、あの霊峰の頂よりさらに上、清らかな雷雲の中に棲んでいるはずだ。だが、あんなに低く降りてきて暴れるなど……」


「やっぱりな。住処の空気が汚れとるんやわ。……よう見てみぃ、あの子の羽、煤みたいなんがべったり付いとるし、さっきから咳き込むみたいに雷落としとるで!」


 うちの言葉に、大長老と赤き鷹がハッとして上空を見上げる。

 確かに、雷鳥が雷を放つたびに、その巨大なクチバシからは「ゲホォッ」という苦しげな音が漏れ、黄金の羽からは黒いススがボロボロと落ちてきとった。


「……あれは。ただの汚れではない。帝国がさらに北の奥地で稼働させているという、『採掘プラント』が吐き出す、あのドス黒い排煙の煤だ……!」


 赤き鷹が、ギリッと歯を食いしばる。


「せや! 帝国がこの新大陸の奥地で、えげつない環境破壊(排煙)をやらかしてるせいで、あの子の住処の雷雲が『ドス黒いスモッグ』になってもうたんや! 部屋の空気清浄機が壊れて、喘息おこしとるんと同じやわ!」


===========


 うちはパイプ椅子から立ち上がり、拡声魔道具メガホンを口元に当てて、上空の雷鳥に向かって腹の底から怒鳴り上げた。


「おーい! そこのデカい鳥さん! 喉イガイガして苦しいんやろ! やからって、下の人らに八つ当たりして雷落とすのはお門違いやで!」


『ピギャアアアァァァッ!!』


 雷鳥がうちの声に反応し、さらに強烈な稲妻を纏って、うちめがけて急降下してきた。


「静江さん、危ない!」


 アレンが叫ぶが、うちは一歩も退かへん。


「八つ当たりする元気があるなら、これでも舐めて喉のイガイガ治しなはれ!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに手を突っ込み、喉の炎症を抑える青色の『ハッカ味』と、体力を回復させる赤色の『イチゴ味』の飴ちゃんを、特大トングでガシッと掴み取った。


 そして、急降下してくる雷鳥の巨大なクチバシめがけて、まるで野球のノックのように、トングでその飴ちゃんを思いっきり弾き飛ばしたんや!


「おばちゃんの特製、超スッキリのどサプリメントや! 丸飲みせえ!」


 スパーーーンッ!


 弾き飛ばされた二つの飴ちゃんは、雷鳥の大きく開いたクチバシの中に、見事にクリーンヒットした。


『ゴフッ……!?』


 雷鳥が、空中でビクンと身体を強張らせる。

 次の瞬間、ハッカの強烈な清涼感と、イチゴの甘酸っぱさが、雷鳥の煤けた喉の奥でジュワァァッと弾けた。


『……ピルル……?』


 雷鳥の喉を覆っていた赤黒い瘴気が、ハッカの成分(魔力)でスゥッと浄化されていく。

 苦しげな咳が止まり、全身から放たれていた無差別の落雷が、嘘のようにピタリと収まったんや。


「……よしよし。喉のスースー、効いたみたいやな」


 うちは、空中でポカンとしている雷鳥に向かって、トングを振って見せた。


===========


「……信じられん。荒野の守り神の怒りを、あのような小さな甘露で……」

 大長老が、杖を取り落としてへたり込む。

 集落の魔族たちも、空を見上げて呆然としとる。


「……でもな、鳥さん。飴ちゃんで喉のイガイガは取れても、あんたの家の『空気』が綺麗になったわけやないで」


 うちは、雷鳥が棲んでいたであろう、さらに北西の空……帝国が陣取っているであろう方角を睨みつけた。


「根本的な原因(帝国の排煙)を止めな、またすぐに喉痛めるわ。……どうや? うちらと一緒に、あんたの家の『換気(お掃除)』に行かへんか?」


『……ピィィィィッ!』


 雷鳥は、うちの言葉を理解したかのように、高く澄んだ鳴き声を上げ、集落の上空を大きく旋回した。

 その目には、もはや怒りの狂気はなく、自らの住処を汚した者への明確な『反撃の意志』が宿っとった。


「よし、商談成立や! アレン、赤き鷹の兄ちゃん! あんたらも行くで! 帝国の環境破壊プラント、おばちゃんが全部まとめて『空気清浄』したるわ!」


 大長老の拒絶から始まり、ついに伝承の大怪鳥すらも「のど飴」で手懐けてしもうたおばちゃん。

 雷鳥という空の最強戦力を味方につけ、オカン・ユニオンのクレーム対応は、いよいよ帝国が隠し持つ『環境破壊の元凶』へと向かって、猛スピードで加速し始めとったんや!



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