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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第183話 熱帯のジャングルと、現地住民のゲリラお掃除

 巨大な「中央総督府」をオカン・ユニオンの最強の城(足場)として確保し、港の海上封鎖を海賊たちに任せたうちらは、ついに西の大地(新大陸)の内陸部へと進軍を開始した。

 解放された数千の現地住民たちに案内されて足を踏み入れたのは、うっそうと生い茂る巨大な木々と、複雑に入り組んだ大河が支配する、広大な『熱帯のジャングル』やった。


「……あー、もう! なんなんこの湿気と暑さ! サウナの中で服着て歩いてるみたいやわ! おまけに変なデカい虫がいっぱい飛んでるし、お肌ベタベタになる!」


 うちは、アイテムボックスから取り出した携帯用の魔導扇風機を顔に当てながら、ブーブーと文句を垂れとった。

 極端に短いホットパンツに、背中に龍が躍る銀色のスカジャンという派手なギャル服。おまけに、虫除けのための強烈な「ハッカ水スプレー」を全身に浴びるほど振り撒いているため、うちの周りだけ強烈なミントの匂いが充満しとる。


「静江さん、そんなにハッカ水を撒いたら、匂いで逆に敵に見つかりませんか……?」


 巨大なリュックを背負ったアレンが、汗を拭いながら呆れたように言う。


「ええねん! 虫に刺されて足に痕が残る方が大問題や! ……それに、この森の『本当の怖さ』を知らん帝国の連中には、どうせうちの匂いなんか嗅ぎ分けられへんわ」


 うちは特大のサングラスを押し上げ、前方を歩く現地住民たちを顎でしゃくった。

 彼らは、分厚い服など着ていない。薄着で、手にはこの森の植物から作った簡単な刃物やロープを持っているだけやが、その足取りは驚くほど軽やかやった。

 泥濘ぬかるみの深い場所を正確に避け、毒虫の寄り付かない香草を首に巻き、大河の支流をスルスルと迷いなく進んでいく。


「……オカン。俺たちにとって、この森は決して『未開の恐ろしい場所』じゃない。恵みを与えてくれる巨大な家なんだ。……だから、どこに何があるか、目を閉じていても分かる」


 現地住民の代表である初老の男が、誇らしげに胸を張る。

 彼らには巨大な石造りの都市こそなかったが、この過酷な自然と完璧に調和して生きる、高度で豊かな『共生の文化』があったんや。


「……だけど、帝国は俺たちの文化を野蛮だと見下し、この森をコンクリートで塗り潰そうとしている。……見てくれ、オカン」


 男がギリッと唇を噛み締め、前方の木々の隙間を指差した。

 そこには、森の木々を無惨に切り倒し、周囲の自然を完全に無視して建造された、帝国の巨大な『前線補給基地』がそびえ立っとった。


===========


 基地の周囲には、分厚い白銀の装甲に身を包み、最新鋭の魔導銃を構えた帝国軍の兵士たちがズラリと巡回している。

 だが、その光景を水晶玉で遠目から霊視したうちは、思わず「プッ」と吹き出しそうになった。


「……アハハハ! アレン、あれ見てみぃ! あのエリートさんら、完全に茹でダコやんか!」


「……本当ですね。あの重装備では、このジャングルの熱気と湿気を逃がすことができず、鎧の中で熱中症になりかけています。足取りもフラフラだ」


 アレンが鋭い視線で敵の様子を分析する。

 帝国兵たちは、マニュアル通りに隙のない重装備を固めているが、それがこの過酷なジャングルでは完全に「命取りのサウナスーツ」になっとったんや。

 滝のような汗を流し、息も絶え絶えに銃を構えているが、もはや巡回というより「ただ立っているだけ」に近い。


「自然を征服できると思ってるから、あんなアホな格好で森に入るんや。……おっちゃんら! あんたらの出番やで!」


 うちはパイプ椅子をガシャンと広げて座り、アイテムボックスからタロットカードをバシッ、バシッと展開した。

 出たのは、『愚者(The Fool)』の逆位置、そして『隠者(The Hermit)』の正位置や。

「『愚者』の逆位置は、無計画な突進と環境への無理解。対する『隠者』は、静かなる知恵と、地の利を活かした隠密行動や。……真っ向勝負なんかする必要あらへん。この森の気まぐれな『天気』と『地形』を使って、あいつらを体力切れのガス欠に追い込んだるんや!」

 うちの言葉に、現地住民の男たちがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「……任せてくれ、オカン。あと数十分もすれば、この森特有の『猛烈なスコール(ゲリラ豪雨)』が来る。それに合わせて、上流の川のせきを少しだけ操作してやる。……帝国の連中に、本当の森の恐ろしさを教えてやるさ」


===========


 数十分後。

 現地住民の予言通り、真っ青だった空が急激にドス黒い雲に覆われ、バケツをひっくり返したような猛烈なスコールがジャングルに叩きつけた。


『な、なんだこの雨は!? 前が見えん!』

『銃の魔力回路が湿気でショートするぞ! 基地の中へ退避しろ!』


 帝国兵たちがパニックを起こして逃げ惑う中、さらに追い打ちをかけるように、上流の堰を操作された大河の支流が、泥水となって基地の周囲へと氾濫し始めた。

 あっという間に、帝国の基地の周囲は「底なしの泥沼」へと変わり果てた。


「今だ! やっちまえ!」


 スコールの音に紛れ、森の地形を知り尽くした現地住民たちが、音もなく泥沼の縁へと忍び寄り、手作りの「ツタのロープ」を次々と放った。


「うわぁっ!? 足が、何かに引っ張られ――ギャアアッ!」


 重たい鎧を着た帝国兵たちが、ツタに足をすくわれ、次々と泥沼の中にド派手に転がり落ちていく。

 一度泥に沈めば、彼らの重装備は自力で立ち上がることを許さない最悪の『重り』となった。


『敵襲だ! 撃て! 森の中へ向かって撃ちまくれ!』


 基地の指揮官がヒステリックに叫び、兵士たちが盲滅法に魔導銃を乱射する。


 バキュゥゥンッ! ドォォォンッ!


 光線が森の木々をなぎ倒すが、現地住民たちはすでに安全な高台へと移動し、彼らの無駄撃ちを冷ややかに見下ろしていた。

 そしてアレンが、神速の動きで泥沼を滑るように駆け抜け、身動きが取れなくなった兵士たちの魔導銃だけを、次々と峰打ちで正確に破壊していく。


「……静江さん。敵の反撃が止まりました。魔力切れと、暑さによる完全な疲労困憊です」

 アレンがスコールの中で剣を納め、涼しい顔で戻ってきた。


「せやろな。自分からサウナに入って、さらに無駄な体力使って暴れ回ったら、そら熱中症で倒れるわ」


 うちは日傘代わりのハデなパラソルをアレンに持たせ、泥まみれになって基地の周囲で伸びている数百人の帝国兵たちの前に、悠々と歩み出た。


「……はぁ、はぁ……。き、貴様ら……野蛮人どもめ……」


 泥の中で喘ぐ指揮官を見下ろし、うちはアイテムボックスから大量の『塩分補給用のタブレット(塩飴)』と、よく冷えた水筒を取り出した。


「自然を舐めるからこういう目に遭うんや。あんたら、文明的やとかエリートやとか言うてるけど、この森ではただの『無知な迷子』やで」


 うちは、這いつくばる指揮官の口に、塩飴を強引にポイッと放り込んだ。


「んぐっ……!? ……あ、甘い……そして、しょっぱい……? なんだこれは、枯渇していた身体に、水と力が染み渡っていく……」


「ほら! 他の茹でダコどもにも、この飴ちゃんと水配ったれ! 死なれたら後味悪いからな!」


 うちが指示を出すと、現地住民たちが、さっきまで自分たちを奴隷扱いしていた帝国兵の口に、次々と塩飴を放り込み、水を飲ませてやった。

 恩讐を越えた、あまりにもオカン的な「熱中症の救護活動」。

 これを受けた帝国兵たちは、毒気を完全に抜かれ、ただただ呆然と涙を流して降伏するしかなかったんや。


「……やれやれ。これであいつらの前線基地は、一つ綺麗に『お掃除』完了やな」


 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、スコールが上がって再び強い日差しが差し込み始めたジャングルの奥を睨みつけた。


「さぁ、この調子でどんどん内陸に特売ダッシュかけるで! 現地のおっちゃんら、次の案内頼むわ!」


「おおっ! オカンについていけば、絶対に故郷を取り戻せるぜ!」


 最新鋭の兵器を誇る帝国軍を、現地の知恵と「熱中症対策」であっさりと無力化してしまったおばちゃん連合軍。

 広大な新大陸のジャングルを舞台にした、怒涛のドミノ倒し(解放戦争)が、今、確かな足音を立てて進み始めとったんや!



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