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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第12章:新大陸カチ込み! 奴隷船の解放と中央総督府の大掃除

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第178話 偽装の帰還と、ブラック工場への特大ガサ入れ

 西の大地(新大陸)の沿岸部は、緑豊かな自然など見る影もなく、巨大なコンクリートの港と、そこから続く無数の「魔導工場」によってドス黒く塗り潰されとった。

 その帝国の荷下ろし港の警備兵たちが、沖合から近づいてくる巨大な船影を見て、怪訝そうに眉をひそめた。


「ん? おい、あれは先日、廃棄する奴隷どもを乗せて本国へ向かったはずの戦艦じゃないか?」


「なぜ戻ってきたんだ? まさかエンジントラブルか?」


 接近してくるのは、間違いなく神聖アルビオン帝国の最新鋭戦艦や。その後ろには、曳航されている数隻の船の影も見える。

 警備兵たちは何の疑いも持たず、巨大な港の防衛ゲートをゆっくりと開け放った。


 ……だが、それは完全な油断(命取り)やった。

 戦艦がゲートを抜け、港のド真ん中に入り込んだその瞬間。

 巨大な戦艦の背後にピタリと隠れるようにして航行していた、三十隻の異様な船団が、左右から一斉に姿を現したんや。


「なっ!? 戦艦の後ろから、所属不明の巨大艦隊が! なんだあのふざけたヒョウ柄の帆は!」


 警備兵たちが慌てて防衛魔導兵器を構えようとするが、遅すぎる。


「ゲートが開いたで! あんたら、一気に特売ダッシュ(カチ込み)やぁぁッ!」


 うちの拡声魔道具メガホンでの号令とともに、三十の海賊団が一斉に特大の咆哮を上げ、港の桟橋へと怒涛の勢いで雪崩れ込んだ!


「遅い! 銃口を下ろせ!」


 アレンが拿捕した戦艦の甲板から跳躍し、港の防衛陣地に単騎で斬り込む。彼の長剣が閃き、兵士たちの魔導銃が次々と真っ二つに斬り飛ばされた。


「オカンの邪魔をする奴は、俺たちがぶっ飛ばす!」


 続いて、ガトーや赤鯱、金鯱といった荒くれ者たちが上陸し、気圧された警備兵たちをあっという間に物理的(素手と峰打ち)に制圧してしもうた。


「……よし、入り口の掃除は完了やな。助け出した奴隷の連中は、この戦艦の中で飴ちゃん舐めさせてゆっくり休ませとき!」


 うちは、特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、厚底ブーツを鳴らして悠々と西の大地の土を踏んだ。

 目の前にそびえ立つのは、空を覆うほどの黒煙を吐き出し続ける、巨大な要塞のような工場。むせ返るような排気ガスと、魔力の焦げた嫌な匂いが鼻を突く。


「……静江さん。この工場の中から、尋常ではない数の『絶望』の気配がします。息が詰まりそうだ」


 アレンが工場の分厚い鉄扉を睨みつける。


「開けなはれ、アレン。……うちの『抜き打ちの労働基準監督署(ガサ入れ)』やで」


 ガガァァァンッ!!


 アレンの剣圧が鉄扉を吹き飛ばし、うちらは工場のド真ん中へとズンズンと足を踏み入れた。


===========


 工場の中は、まさに『搾取の地獄』やった。

 巨大な魔導炉とベルトコンベアが轟音を立てて稼働する中、何千人もの労働者たちが、足枷をつけられた状態で、休む間もなく鉄の加工や魔力注入の作業を強いられとった。

 エルフ、ドワーフ、獣人といった亜人だけやない。帝国の『平民』と思われる同じ人間の男女までもが、顔をススで真っ黒にし、死んだ魚のような虚ろな目でただ手を動かし続けとる。


「……ひどい。カリカや地下王国よりも、さらに徹底的に『命』が部品として使い潰されている……」


 アレンが激しい怒りに顔を歪める。


『おい! 手を止めるな! ノルマに遅れが出ているぞ!』


 工場の高台にある管理室から、拡声魔道具を持った人間の将校が、冷酷な声で怒鳴り散らしていた。


『倒れた者は廃棄炉の燃料にしろ! どうせ今日、本土から補充の「新しい部品(奴隷船)」が到着するはずだ! 命などいくらでも代わりは利く!』


 将校が鞭を振り下ろそうとした、その時やった。


「……補充の部品やて?」


 うちは、工場の喧騒を切り裂くような、腹の底からのドス黒いオカン声を響かせた。


「……残念やったな。あんたらの頼みの『荷物』なら、うちらが海の途中で全部『返品処理』して、今外の船で休ませとるわ!」


『なっ……!? な、何者だ貴様らは! どこから入り込んだ!』


 将校が驚愕し、周囲の警備兵たちが慌ててうちらを取り囲む。


「ただの掃除屋や! こんな換気もされへん、空気の悪いゴミ屋敷で人間をこき使いやがって!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに両腕を突っ込み、無限に出せる飴ちゃんの中から、体力回復の赤色『イチゴ味』と、精神安定のオレンジ色『オレンジ味』を、これでもかというほど大量に引っ張り出した。


「ほら、あんたら! よう我慢したな! もうこんなブラック工場で働く必要あらへんで! これ舐めて、さっさとタイムカード押して退勤しなはれ!」


 うちは、限界まで疲弊しきっていた労働者たちに向かって、飴ちゃんの雨をバサァァッ! と豪快にばら撒いた。


===========


「あ、甘い……?」


「……なんだこれは。擦り切れていた腕の痛みが……引いていく。……それに、冷え切っていた腹の底から、力が湧いてくる……!」


 飴を口に含んだ労働者たちの顔から、ドス黒い疲労と絶望がスゥッと抜け落ちていく。

 そして、ずっと殺し続けてきた「怒り」と「生きる気力」が、彼らの瞳に赤々と灯り始めたんや。


『な、何をしている! 食い物を拾うな! 仕事に戻れ! 警備兵、あの侵入者どもを撃ち殺せ!』


 将校がパニックになって叫ぶ。


「やらせるかよ! 兄弟たち、オカンの邪魔をする奴は一人残らずぶっ飛ばせ!」


 ガトーの咆哮とともに、三十の海賊団が警備兵たちに怒涛の勢いで襲いかかった。

 アレンの神速の剣が警備の魔導兵器を次々とスクラップにし、海賊たちが兵士たちを容赦なく叩き伏せていく。

 さらに、体力を取り戻した数千の労働者たちも、手にしていた工具を武器に持ち替え、一斉に反逆ストライキの雄叫びを上げた。


「うおおおおッ! もう帝国の部品になんか、されてたまるかァッ!」


 圧倒的な数の暴動。工場は一瞬にして、帝国側の警備網が完全に崩壊する大パニック状態に陥った。


「ひぃぃぃッ! ば、馬鹿な! 我が帝国の完璧な管理システムが、こんな……こんな派手な女の飴玉一つで……!」


 将校が腰を抜かして逃げようとするが、うちはその背後に一瞬で回り込み、特大のゴミ拾いトングで彼の襟首をガシィッ! と挟み上げて宙吊りにした。


「痛ててててッ! は、離せぇッ!」


「完璧なシステムぅ? 笑わせんといて。人間を数字と部品としてしか見とらんような会社、ちょっと『栄養(思いやり)』を与えただけで、あっという間に内側から弾け飛ぶに決まっとるやろが!」


 うちは宙吊りの将校を睨みつけ、工場中に響き渡る声で宣言した。


「ええか、あんたら! この工場は今日で倒産おしまいや! ここから先は、オカン・ユニオンの『超特大・清掃作業』の時間やで! 西の大地にこびりついた帝国のゴミ、全部まとめて漂白ブリーチしに行くでぇぇッ!」


「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!」」」


 未知のフロンティアではなく、絶望のブラック工場と化していた西の大地。

 だが、おばちゃんの怒りのガサ入れと、海賊たちの力によって、その強固な支配の土台は、上陸初日にして早くも音を立てて崩れ始めとったんや!



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