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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第11章:魔の海域と海賊諸島! 無法者たちのオカン爆誕

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第174話 神速の不用品回収と、海竜への巨大湿布

 荒れ狂う暴風雨と、船を丸呑みにするほどの大渦潮。

 そのド真ん中に、ド派手な「ヒョウ柄の帆」を掲げた三十隻の海賊連合軍『オカン・ユニオン』が、一糸乱れぬ陣形で突入していく。


「赤鯱一家、右舷から回り込め! もりを撃ち込んで、あのデカいヒレに絡まってる漁網を引っぺがすぞ!」


「金鯱一家は左舷だ! エンジン……じゃねえ、帆を全開にして、船の残骸を力ずくで引き剥がせ!」


 かつてはいがみ合っていた元兄弟分が、拡声器越しに見事な連携を見せる。

 彼らが放った太いロープ付きの銛が、リヴァイアサンの身体に絡みつくゴミの山に次々と突き刺さり、三十隻の船の推力でバリバリと引き剥がしていく。


『ギャアアアォォォォンッ!!』


 ゴミを剥がされる痛みに、リヴァイアサンが海面を激しく叩き、津波のような水飛沫を上げる。


「うおおっ!? 船がひっくり返るぞ!」


「踏ん張れ! オカンが綺麗にしてくれたこの船を、沈めさせるかよ!」


 海賊たちは泥水と海水を被りながらも、誰一人として逃げ出そうとはせえへんかった。

 彼らの目には、大自然の化け物に対する恐怖やない。「自分たちの職場(海)を汚したツケを払う」という、清掃業者としての強い責任感が宿っとった。


===========


「……よし! 海賊のおっちゃんら、ええ仕事しとるで!」


 うちは旗艦の舳先に立ち、特大のサングラス越しに戦況……いや、清掃状況を見守った。

 海賊たちの奮闘で、リヴァイアサンの身体を覆っていた表面のゴミはあらかた剥がれ落ちた。だが、一番の問題は、首元に深く食い込んでいる『特大の呪いの鎖』や。

 何百年も前に沈んだ重たい鉄の鎖が、鱗を突き破って肉にまで達し、そこからドス黒い瘴気(膿)が漏れ出しとる。


「アレン! アーニャ! あれが元凶や! あの鎖を断ち切らな、この子は一生痛みに暴れ続けるで!」


「了解しました! あの太さなら、僕の剣で一刀両断にしてみせます!」


「私も行くわ、アレン! 踏み台くらいにはなれるはずよ!」


 アーニャが船の舳先を蹴って宙に舞い、アレンが彼女の肩を足場にしてさらに高く、リヴァイアサンの巨大な首元めがけて跳躍した。


『グルルルルォォォッ!!』


 リヴァイアサンが、迫り来るアレンを外敵とみなし、巨大なあぎとを開いて噛み砕こうとする。


「アレン君!!」


「大丈夫です! 『刹那の観測』……!」


 アレンの瞳が青白く輝く。

 迫り来る巨大な牙、吹き荒れる暴風雨、そのすべてが彼の目にはスローモーションとして映っとった。

 彼は空中で体を捻り、牙の隙間をすり抜けると、鎖が最も深く食い込んでいる「結び目」へとピタリと着地した。


「……何百年も前の不法投棄、僕がここで回収する! はあああッ!」


 西の大陸で打たれた長剣に、渾身の魔力を込めて振り下ろす。

 ガキィィィィンッ!!!

 凄まじい金属音と共に、リヴァイアサンの首を絞めつけていた太い鎖が、見事に真っ二つに断ち切られた。

 自重に耐えきれなくなった鎖が、ガラガラと音を立てて海の底へと沈んでいく。


===========


「やった! 鎖が切れたわ!」


 アーニャが甲板で歓声を上げるが、うちは眉をひそめた。


『ギュオオオォォォォォンッ!!?』


 鎖が外れた瞬間、リヴァイアサンは鎮まるどころか、さらに狂ったように暴れ始めたんや。

 長年食い込んでいた鎖が急に外れたことで、傷口が開いてしまい、溜まっていたドス黒い瘴気と血がドバーッと噴き出してきたんや。


「静江さん! 鎖は切れましたが、傷が深すぎます! このままでは痛みに狂って、海賊たちの船が巻き込まれてしまう!」


 アレンがリヴァイアサンの背中から滑り落ちそうになりながら叫ぶ。


「……チッ、やっぱり絆創膏が必要か!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに両腕を突っ込んだ。


「ガトー! 船を全速力で、あの傷口の真横につけんかい!」


「へ、へいっ! オカンの言う通りにしろォ!」


 旗艦が猛スピードでリヴァイアサンの巨体に肉薄する。

 うちは、ボックスから取り出した『帆船用の巨大な真っ白な帆布(予備)』を甲板に広げた。

 そして、怪我を治す黄色の「レモン味」と、精神を安定させる「オレンジ味」の飴ちゃんを、これでもかというほど大量にすり鉢に放り込み、ゴリゴリと音を立てて粉々に砕いていく。


「アレン! 船に戻って、この粉末を水に溶かして布に塗りたくりなはれ! おばちゃん特製、『超巨大・鎮痛ハイドロコロイド湿布』や!」


「し、湿布!? わかりました!」


 アレンが甲板に飛び降り、神速の動きで特製液を巨大な布に染み込ませていく。


「よし! ほな、みんなで一気にあの傷口に貼り付けるで! せーのっ!」


 うち、アレン、アーニャ、そしてガトーたち海賊が総出で、特大の湿布を掲げ、リヴァイアサンの首元の開いた傷口めがけて、バサァァッ! と豪快に貼り付けた。


===========


 ジュワァァァァッ……!

 特大湿布が傷口に触れた瞬間、レモンとオレンジの飴ちゃんの魔力が、大量の水蒸気となって噴き出した。

 強烈なビタミンCと回復魔力が傷口の細胞を急速に再生させ、オレンジの香りが、何百年も蓄積していた「痛み」と「怒り」の感情を、優しく、そして力強く解きほぐしていく。


『……ルルルゥゥ……?』


 あれほど狂い暴れていたリヴァイアサンの動きが、嘘のようにピタリと止まった。

 ドス黒かった海の色が、みるみるうちに澄み切ったコバルトブルーへと変わっていく。

 そして、空を覆っていた分厚い雨雲が割れ、そこから眩いばかりの太陽の光が、真っ平らになった海面へと降り注いできたんや。


「……おおぉぉ……!」


「嵐が……収まったぞ……!」


 三十隻の船に乗る海賊たちが、一斉に歓声を上げる。

 リヴァイアサンは、傷口に貼られた特大湿布を心地よさそうに撫でるように首を動かすと、うちの乗る旗艦の方へとゆっくりと顔を近づけてきた。

 その巨大な瞳は、もはや怒りに狂った大自然の化け物やない。

 棘の刺さったライオンが、助けてくれたネズミに感謝するような、穏やかで澄み切った色をしとった。


『……プシュゥゥゥ……』


 リヴァイアサンは、うちに向かって感謝の潮を優しく吹きかけると、そのまま静かに、青く澄んだ海の底へと潜っていった。


「……ふぅ。えらいデカい迷子やったわ。これで、海の詰まりも完全に解消やな」


 うちは、塩水で濡れた特大トングを肩に担ぎ、ニカッと笑った。


「やりましたね、静江さん! 大自然の脅威すらも、おばちゃんの『湿布』で手懐けてしまうなんて!」


 アレンが興奮気味に駆け寄ってくる。


「オカン、最高だぜェェッ!」


 ガトーや赤鯱、金鯱の船長たちも、自分たちの手で海を綺麗にしたという達成感に満ち溢れ、肩を組みながら男泣きしとる。

 彼らはもはや、他人の船を襲うだけの無法者やない。

 海を護り、道を切り拓く、誇り高き『オカン・ユニオン』の正規軍(清掃業者)や。


「さぁて、あんたら! 海の掃除も終わったし、あの化け物が塞いどった『新大陸への道』も、これでバッチリ開いたで!」


 うちは、太陽の光が反射する、はるか南西の水平線を指差した。


「早速、東の大和郷と西のルミナに手紙を出して、うちらの『特大の家族(援軍)』を呼び寄せ……」


 うちがそう言いかけた、まさにその矢先やった。


「オカン! オカァァン! 大変です!」


 周辺の海域を航行していた黒海亀一家の哨戒船が、血相を変えて旗艦に横付けしてきた。


「なんや、えらい慌てて。忘れ物でもしたんか?」


「違います! この先の海域で、アルビオン帝国の巨大な戦艦と……それに曳航される、戦艦とは思えねぇ『不気味な船』を数隻抱えた船団を発見しました! 新大陸の方角へ向かっています!」


「帝国の戦艦やと? 新大陸への一番乗りを狙っとるんやな。……でも、不気味な船ってなんや?」


 うちは眉をひそめ、アイテムボックスから使い込まれたタロットカードを取り出した。


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