第169話 ゴミ船の呪いと、オカン流・ハッカ水スプレー
アルビオン帝国の巡回艦隊を見事な連携で撃退したことで、うちら『オカン・ユニオン』の特大の戦果は、海賊諸島中に一瞬で広まった。
帝国の脅威に怯えていた海賊や、厄介な悩みを抱えていた連中が、「俺たちもオカンの組合に入れてくれ!」と、うちらの旗艦の周りに次々と船を寄せてきとったんや。
その順番待ちの列の中で、一隻だけ、強烈な「生ゴミが腐ったような悪臭」を放つボロボロの海賊船が割り込んできた。
「おーい! そこの特大トングを持った派手な姉ちゃん! 頼む、俺たちを助けてくれぇっ!」
泥だらけの服を着た船長が、甲板から泣き叫んでくる。
「なんやなんや。順番抜かししたらアカンで。あんたの船、えらい臭うけど、どないしたんや」
「あんたが最近噂になってる、どんな悩みも解決してくれる『オカン』なんだろ!? 船が……俺たちの船が、『ネズミの呪い』にかけられちまったんだ! 巨大なネズミの化け物が無限に湧き出してきて、食糧は食い尽くされるわ、噛まれて病気になる奴は出るわで、もう全滅寸前なんだよぉっ!」
「ネズミの呪い? 船にネズミが出るなんて、あるあるやないか」
うちは特大のサングラスを押し上げ、特大トングを肩に担いで、アレンとアーニャを引き連れてその船(泥ネズミ一家の船)へと乗り移った。
……そして、一歩甲板に足を踏み入れた瞬間、うちは胃の中身が逆流しそうになった。
「うっわ! なんやこれ! 呪いちゃうわ!」
甲板の上には、食べ残しの魚の骨、腐った果物、空になった酒樽、さらには洗っていない汚い服が、地層のように重なって放置されとった。
足の踏み場もない、究極の『ゴミ屋敷』ならぬ『ゴミ船』や。
「あんたら! 呪いとか言う前に、このゴミなんとかせんかい! 食べかすポイ捨てして掃除サボるから、ネズミが寄ってきただけやろが! 完全に自業自得の『不衛生』や!」
うちが雷を落とした、その時。
「チュウゥゥゥッ!!」
甲板のゴミの山を突き破って、カピバラほどもある巨大な『凶暴ネズミ(魔獣)』が数十匹、ワラワラと湧き出してきたんや。
「ひぃぃぃッ! また出たぁっ!」
海賊たちが悲鳴を上げてマストによじ登る。
===========
「静江さん、下がって! 僕が斬ります!」
アレンが西の大陸の長剣を抜き放つ。だが、ネズミたちは素早く甲板の隙間や樽の裏に潜り込み、アレンの神速の剣を巧みに躱していく。
「くそっ、狭い隙間に入り込まれると、船を傷つけずに斬るのは難しい……!」
「アレン、無理に剣振らんでええ! 力任せに追いかけても、ネズミごっこになるだけや!」
うちはニヤリと笑い、アイテムボックスから青色の『ハッカ味(強烈な清涼感)』の飴ちゃんを大量に取り出した。
「アーニャ! この飴ちゃんをすり鉢で限界まで粉々に砕きなはれ! アレンは樽の水をバケツに汲んでくるんや!」
「任せな、姐さん!」
アーニャが双剣の柄でゴリゴリとハッカ飴を粉砕し、アレンが運んできた水にそれを大量に溶かし込む。
「ええか! ネズミっていう生き物はな、ミントやハッカの『スースーする強い匂い』が死ぬほど苦手なんや! 毒エサ撒くより、匂いで追い出すんが一番手っ取り早い!」
うちは、カイルが以前作ってくれた『水鉄砲型の魔道具』に、その特濃ハッカ水をたっぷりと装填した。
「そーれ! おばちゃん特製、超強力『ネズミ避け・ハッカ水スプレー』や!」
プシュゥゥゥゥッ!!
うちが魔道具の引き金を引くと、強烈なミントの匂いを放つ霧が、甲板の隙間やゴミの山に向かって勢いよく噴射された。
「チ、チュヂュウゥゥゥッ!?」
隙間に隠れていた巨大ネズミたちが、目に染みるほどの強烈なハッカの匂いにパニックを起こし、次々と飛び出してきた。
「目がァ! 鼻がァ! って顔しとるな! アーニャ、アレン! 逃げ出してきたところを一気に海へ追い込みなはれ!」
「「応ッ!!」」
ハッカの匂いで完全に方向感覚を失い、フラフラになったネズミの魔獣たちを、アレンの峰打ちとアーニャの蹴りが次々と海へ向かって弾き飛ばしていく。
さっきまで凶暴だったネズミたちは、「こんなスースーする船、二度と来るか!」とばかりに、我先にと海へダイブして逃げ去っていった。
===========
「よし、ネズミは追い出した! アレン、アーニャ! ガトーたちも呼びなはれ! 仕上げの大掃除や!」
「「「了解しました!!」」」
うちはアイテムボックスから、竹箒やモップを大量に取り出し、海賊たちに強引に握らせた。
「あんたらも手伝うんやで! まずはこの生ゴミを全部海に捨てて、床を水洗い! そして最後にもう一度、船全体にハッカ水を撒いとくんや! これで除菌と防虫効果もバッチリやからな!」
数時間後。
オカンと仲間たちによる徹底的な大掃除と除菌により、悪臭を放っていたゴミ船は、見違えるようにピカピカで清々しい船へと生まれ変わった。
「……信じられねえ。あの地獄のような船が、こんなに綺麗で、いい匂いに……」
船長は、ピカピカになった甲板にへたり込み、感動の涙を流した。
「オカン……あんたは命の恩人だ。俺たち泥ネズミ一家、今日から心を入れ替えて掃除します! どうか、オカンの組合に入れてくだせぇっ!」
「おう、商談成立や! 次サボったら、おばちゃんが直々に耳引っ張って説教するからな!」
呪いと恐れられていたネズミ騒動を、「大掃除」と「ハッカ水」という生活の知恵で見事に片付けたおばちゃん。
ピカピカになった船を新たに加え、オカン・ユニオンはますます巨大で、そして「清潔な」最強の海賊連合へと進化していくんや!
読んでくれてありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、
作品ページ上部の【☆評価】【ブックマーク】、そして【リアクション】ボタンをポチッと押していただけるととても励みになります!
みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。
引き続きよろしくお願いします!




