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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第11章:魔の海域と海賊諸島! 無法者たちのオカン爆誕

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第158話 変装の悪徳ボスと、オカン流・部下の引き抜き占い

 特効薬の独占を目論んだ最大派閥『毒鮫一家』のボス・ガトーを、特濃の激苦飴とトングで完全粉砕し、海へ逃げ帰らせた翌朝。

 うちらはアーニャの船の前に、木箱とベルベットの布を敷いて、『占いの館・海賊島出張所』を堂々とオープンさせとった。


「さぁさぁ! 悩みがあるなら寄りなはれ! どんな海のトラブルも、おばちゃんがド正論でスッキリ解決したるで!」


 うちが威勢よく声を張り上げていると、港の路地裏から、ボロボロの布を被り、顔に泥を塗って変装した怪しい五人組の男たちが、周囲を窺いながら近づいてきた。

 ……水晶を使わんくても、丸わかりや。

 昨夜ボコボコにして逃がしたガトーと、その側近の部下たちやんか。


「(……ククク。あの派手な女、俺の変装に気づいていまい。占うふりをして近づき、隙を見てこの短剣で寝首を掻いてやる……!)」


 ガトーが布の下で邪悪な笑みを浮かべているのが、手にとるように分かる。

 ほんまに、コテコテの悪党やな。


「いらっしゃい。……なんや、あんたら五人組か。代表して、そこの泥だらけのデカい兄ちゃん、座りなはれ」


 うちがパイプ椅子を勧めると、ガトーは(かかったな!)とばかりにニヤリと笑って座った。


「……へへっ、占い師のねえちゃんよぉ。俺たちの『これからの運命』を占ってくれや」


「ええよ。……でもその前に、あんたの後ろに立ってる部下の兄ちゃんたち。えらい顔色悪いし、足震えとるで」


 うちはガトーを無視して、彼が連れてきた四人の部下たちにタロットカードを展開した。


 バシッ、バシッと乾いた音が響き、出たのは『悪魔』の逆位置や、『ペンタクル(金貨)の5』のカード。


「……あんたら、ボスの見栄のせいで船の維持費ローンばっかり嵩んで、給料もまともにもろてへんのちゃうか? 故郷の家族に仕送りもできんで、夜も眠れんほど悩んどるやろ」


 うちの言葉に、部下たちの肩がビクッと大きく跳ねた。


「な、なぜそれを……。俺、昨日も国に残してきた女房が夢に出てきて、泣いちまったんです……」

「俺もだ……。ボスが『威圧感が必要だ』って無駄にデカい大砲ばかり買うから、飯代すら事欠いてて……」


「バ、バカ野郎! 何を泣き言を言っている!」


 ガトーが慌てて部下を怒鳴りつけるが、うちはアイテムボックスから「オレンジ味(精神安定)」と「メロン味(満腹感)」の飴ちゃんを取り出し、部下たちの手に無理やり握らせた。


===========


「ええから、これ舐めなはれ。不安な時は、甘いもん食べて腹膨らませるんが一番や! あんたらの悩み、おばちゃんが全部ド正論で解決したるわ!」


 部下たちは、ボスの制止も聞かずに、すがるように飴を口に含んだ。

 途端に、彼らの顔から「生活の不安」というドロドロした影が、嘘のようにスゥッと晴れていく。


「……あ、甘い……。それに、腹の底から温かい力が湧いてくる……」


「不思議だ。無理して海賊なんてやってるのが、馬鹿らしくなってきた。……俺、やっぱり足を洗って、故郷の女房のところに帰ろうかな……」


 オカンの飴ちゃんと、親身な悩み相談。

 恐怖と暴力でしか部下を縛り付けてこなかったガトーの支配が、たった数分のお節介で、音を立てて崩れ始めた瞬間やった。


「き、貴様ら! 敵の施しを受けて腑抜けるな! ……ええい、作戦変更だ! 今すぐその女を殺せェェッ!」


 ガトーが変装の布を脱ぎ捨て、隠し持っていた毒塗りの短剣を振りかざした。


「……静江さんには、指一本触れさせない」


 アレンが神速の踏み込みで間に割って入り、鞘に入ったままの剣で、ガトーの短剣をカァァンッ! と弾き飛ばす。


「ぐはっ!? 貴様ら、何を見ている! 早くこの剣士を囲んで殺せ!」


 ガトーが部下たちに命令するが……。

 飴を舐めて完全に毒気を抜かれ、穏やかな顔になった部下たちは、誰一人として武器を抜こうとせえへんかった。


「……ボス。俺、もう無理っす。このおばちゃん、俺の腰痛まで心配してくれたんすよ」


「そうだぜ。見栄っ張りのあんたに付き合って泥水すするより、このオカンについて行った方が、よっぽど人間らしい生活ができそうだ」


「見た目はこんなに派手なねえちゃんなのに、口を開けば故郷の母ちゃんよりお節介で温けぇんだ……。俺たちはもう、あんたみたいな薄情なボスにはついていけねえよ!」


「な、なんだとォォォッ!?」


 部下たちのまさかの「反抗ストライキ」に、ガトーは目ん玉が飛び出るほど驚愕した。

 見た目はド派手なギャルやのに、中身は完全に世話焼きの『オカン』。その圧倒的な生活感と人情のギャップに、荒くれ者たちの心は完全に鷲掴みにされとったんや。


===========


「……アホか。自分の部下が毎日どんな思いで飯食うて、どんなとこ痛めてるか。そういう『生活の悩み』も気にかけてやれへんような社長に、誰が命預けるかいな」


 うちはパイプ椅子から立ち上がり、特大のゴミ拾いトングで、ガトーの鼻先をビシッと指差した。


「上に立つもんの最低限の仕事は、部下に腹いっぱい飯食わせて安心させることや! あんたのその、部下を使い捨てる『見栄の支配』は、もうとっくに賞味期限切れやわ。……さぁ、アレン! こいつ、粗大ゴミとして海に放り投げなはれ!」


「ひ、ひぃぃぃッ! おのれ、覚えていろぉぉっ! 次こそは必ず、貴様らを海の藻屑にしてやるからなァァッ!」


 アレンが踏み込むよりも早く、ガトーは部下たちを見捨て、一人きりで脱兎のごとく港の路地裏へと逃げ出していった。

 残された四人の部下たちは、逃げていくボスの背中を、完全に『冷めた目』で見送っとったわ。


「……オカン。俺たち、あんたの組合に入れてくれないか? まともに飯が食えるなら、何でもするぜ」


「ええよ! ちょうど掃除の手が足りへんかったとこや! 今日からあんたらも身内やで!」


 うちがガハハと笑うと、アレンが剣を納め、呆れたようにため息をついた。


「……静江さん。あのガトーという男、また必ず裏切って何か仕掛けてきますよ。なぜ捕まえないんです?」


「ええねん。あいつみたいな見栄っ張りの悪党は、自分が『誰からも見放された』って骨の髄まで理解せな、絶対に改心せえへん。……それに、あいつが裏切って部下を連れてくるたびに、うちが占いでその部下を『ヘッドハンティング』できるんやから、こんないい宣伝塔カモはおらへんで」


 うちはニヤリと極悪な笑みを浮かべ、タロットカードをシャッフルした。

 懲りない悪徳ボスが罠を仕掛けてくるたびに、部下を一人、また一人とオカンの愛で引き抜いていく。


 海賊ガトーの『七縦七擒(裏切るたびに部下を失う地獄のループ)』という、泥臭くて痛快な引き抜き工作が、今、静かに幕を開けたんや!



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