第145話 甘い汁のハイエナ艦隊と、東西インテリの完璧な計算
東からの『薩摩の狂戦士軍団』と、西からの『最新鋭・魔導艦隊』。
おばちゃんが呼び寄せた東西の家族(特大バーゲン)による完璧な挟み撃ちにより、カリカの港を数ヶ月間包囲し続けていた「無敵艦隊・第4波」は、あっという間に壊滅・制圧された。
「離せ! 貴様らのような野蛮人に、この私が捕縛されるなど……!」
港の石畳に引き据えられたのは、無敵艦隊の総司令官であるバルディアス将軍や。
佐吉が泥だらけの刀を肩に担ぎ、その首元にピタリと切っ先を突きつけて威圧しとる。
「よっしゃ、これでカリカの防衛線は完全クリアやな!」
うちはパイプ椅子から立ち上がり、アレンやカイル、そして海を越えてきてくれた大和郷の佐吉たちに向かって笑いかけようとした。
……だが、その時。
制圧したばかりの西の海域から、新たな『法螺貝と軍太鼓』の音が鳴り響いたんや。
「静江殿! 西の水平線より、新たな大船団が接近してきます! 数はざっと百隻! 掲げている旗印は……特権商社のものではありません!」
ギディオンが、割れた片眼鏡を押さえながら叫ぶ。
「……あれは、西の大陸の南部を支配する『イスパナ連合国』の艦隊です。……なるほど、そういうことか」
カイルがインテリ眼鏡を指で押し上げ、冷ややかに水平線を睨みつけた。
「イスパナ? エルゼちゃんの国とは違うんか?」
「ええ。彼らは特権商社の直属ではありませんが、商社がカリカでエルフを『電池』にして浮かせた莫大な利益のおこぼれ(甘い汁)を吸って、安く魔石を仕入れていた同盟国です。……商社が倒れたと聞きつけ、このカリカの利権を横取りしようとハイエナのように群がってきたのでしょう」
カイルの言う通り、現れたイスパナ連合国の艦隊は、戦い終わって疲弊しているうちらの隙を突くように、港をぐるりと半包囲する陣形を組んだ。
そして、旗艦の甲板から、派手な羽飾りをつけたハイエナ提督が、拡声魔道具で傲慢な声を張り上げてきたんや。
『――そこな野蛮人ども! 降伏しろ! 特権商社が敗れたとはいえ、我ら西の同盟国がこのカリカの利権を手放すはずがなかろう! 貴様らがこれ以上逆らうというなら、商社の真の後ろ盾である、西の覇権国【神聖アルビオン帝国】の皇帝陛下が黙ってはいないぞ!』
「……神聖アルビオン帝国」
その名を聞いた瞬間、バルディアス将軍がビクッと肩を震わせた。
どうやら、それこそが理不尽な種族適性法を作り出し、世界中を食い物にしている『真の元請け(黒幕の巨大国家)』の正体らしい。
『さぁ、カリカを明け渡せ! さもなくば、我らイスパナの無傷の百隻が、貴様らを海の藻屑にしてくれる!』
ハイエナ提督が、勝利を確信したような下卑た笑い声を上げる。
……やけど。
その威嚇を聞いていたうちらの陣営から上がったのは、悲鳴ではなく、呆れ果てたような『ため息』やった。
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「……おい、西のインテリ(カイル)殿。あれが西の大陸の海軍の陣形か? あまりにもお粗末だな。中央の旗艦が前に出過ぎていて、両翼の連携が完全に死んでいる」
大和郷から来た黒衣の天才軍師・黒戸が、算盤を弾きながら、鼻で笑った。
「ええ、東のインテリ(黒戸)殿。あれなら、私の魔導砲の照準を『仰角十五度、左に3クリク』ずらすだけで、一撃で旗艦の動力を吹き飛ばし、後続を玉突き事故にできますよ」
カイルが魔導書を開き、ニヤリと悪魔のような笑みを返す。
大和郷の最強頭脳と、ルミナの天才魔導具師。
初対面のはずの『東西インテリコンビ』が、一瞬にして完璧な計算式を共有しとった。
「黒戸! カイルちゃん! あんたら、計算合うたか!」
うちが叫ぶと、二人は同時にうなずいた。
「「完璧です(計算通りに)」」
「よっしゃ、なら撃ち(お掃除し)なはれ!!」
カイルが指を鳴らした瞬間。
ルミナの魔導ガレオン船から、極太の閃光が放たれた。
それはイスパナ艦隊の旗艦を直撃……するのではなく、黒戸が計算した『海流の反発点』と『陣形の死角』である、旗艦の数メートル手前の海面に着弾した。
ズゴォォォォォンッ!!!
凄まじい水柱と衝撃波が巻き起こり、計算し尽くされた「波のうねり」が、イスパナ艦隊の密集陣形を内側から完全に破壊した。
旗艦は横転しかけ、後続の船は次々と激突し、大砲を一発も撃つ前に、ハイエナ艦隊は自滅して海の上でぐちゃぐちゃの『玉突き事故(大渋滞)』を起こしてしもうたんや。
『ひぃぃぃッ!? な、なんだこの精密すぎる砲撃は! 陣形が、一瞬で崩されただと!?』
ハイエナ提督が、甲板でひっくり返りながら悲鳴を上げる。
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「……甘い汁吸いに来て、火傷(大赤字)した気分はどうや?」
うちは、拡声魔道具を口に当て、海峡全体に響き渡るオカン節をぶちかました。
「あんたらみたいに、他人の上前をはねるだけで自分じゃ汗一つかかへん奴らが、うちらの『家族』に勝てるわけないやろが!」
うちは、捕らえているバルディアス将軍の前に、ギディオンが徹夜で書き上げた『新しい契約書』をバシッと叩きつけた。
「ええか! このカリカは今日から、完全なる『自由貿易港』や! 神聖アルビオン帝国やかしらんけど、あんたらの『種族適性法』はここで完全にシュレッダー行きや!」
「き、貴様……! アルビオン帝国を敵に回して、世界で生きていけると思うなよ!」
「上等やわ! 関白でも魔王でも、おばちゃんのド正論の前じゃ全部『お客様』や! これからうちらが作る【世界商圏プロジェクト】に手ぇ出そうとするなら、帝国の皇帝ごと、うちが全部まとめて特売のワゴンに放り込んだるわ!」
うちがギラギラのデコネイルを突き立てて宣戦布告すると、バルディアス将軍も、海上で玉突き事故を起こしているイスパナのハイエナ提督も、完全に恐怖で言葉を失い、白旗を揚げるしかなかった。
「……静江さん。本当に、帝国にまで喧嘩を売ってしまったんですね」
アレンが、少しだけ引きつった笑いを浮かべる。
「せや! 大掃除の途中で妥協したら、カビが残るからな! ……さぁ、みんな! 海の掃除はこれでホンマに終わりや!」
うちは特大のトングを空に向かって突き上げた。
「大和郷のみんな、ルミナのみんな! よう来てくれた! 今日からここが、うちら東西の家族を繋ぐ、新しい『世界のお店』や! 今夜は朝まで、超特大の合同炊き出し(祝勝会)やでぇぇッ!」
「「「おおぉぉぉぉぉッ!!!」」」
カリカの港に、種族と大陸の壁を越えた、割れんばかりの歓声が響き渡る。
背後に巨大な帝国という真の敵(元請け)を見据えながらも、おばちゃんが結成した『世界連合軍』は、今ここに最高の笑顔で一つに繋がったんや!
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