第144話 限界の絶対防衛線と、東西からの特大バーゲン
巨大中継港カリカを実効支配し、国家へ宣戦布告をしてから数ヶ月。
おばちゃん特製の炊き出しで士気を保ち、リリルの別働隊が敵の補給線を断ち切ることで、うちらは国家の正規軍による絶え間ない波状攻撃をなんとか耐え凌いどった。
やけど、圧倒的な物量の差はいかんともしがたい。
ついに、国家が本気で差し向けてきた『無敵艦隊・第4波(総攻撃)』の巨大な装甲船が、うちらが作った港の入り口の「特設ワゴン(海上バリケード)」を物理的に粉砕し、カリカの港内へと強引に雪崩れ込んできたんや。
「静江殿! 第1防衛線、突破されました! 敵の陸戦部隊数万が、港に上陸を開始!」
本部の執務室で、血と泥にまみれたギディオンが、片眼鏡を割られながらも悲痛な報告を上げる。
「アレン殿も前線で孤軍奮闘しておりますが、多勢に無勢。……兵たちの体力も、食糧の備蓄も、すでに限界です。……もはや、これまでか」
老リザードマンの瞳に、ついに「死の覚悟」がよぎる。
窓の外では、国家の正規軍が怒涛の勢いで港を制圧し、防壁の裏まで迫ってきとる。
普通なら、完全に「店じまい(陥落)」の盤面や。
だが、うちはパイプ椅子からゆっくりと立ち上がり、アイテムボックスから取り出したタロットカードを、バシッと一枚展開した。
出たのは、『運命の輪』の正位置や。
「……何がこれまでや。ギディオン、あんた『スーパーの特売』の基本を忘れとるで」
「と、特売……?」
「せや。特売の『一番の目玉商品』はな、お客さんが待ちくたびれて『もうええわ』って諦めかけたその瞬間に、バックヤードからドーンと出されるもんやねん! ……よう聞きなはれ、風の音が変わったで!」
うちが西の海を指差した、その直後やった。
ドゴォォォォンッ!!
カリカの港に上陸しようとしていた国家の装甲船の横っ腹に、空から極太の『青白い閃光(魔導砲)』が突き刺さり、船ごと豪快に吹き飛ばしたんや。
「な、なんだ!? 海の向こうから、雷が飛んできたぞ!」
国家の正規軍がパニックを起こす中、西の水平線の向こうから、王都の技術を遥かに凌駕する巨大な『魔導ガレオン船団』が、猛烈なスピードで姿を現した。
その一番大きな旗艦の舳先に立っていたのは、見覚えのある男や。
「――遅れて申し訳ない、静江さん! ルミナ商業ギルドの全財産を投資した『最新鋭・魔導艦隊』、ただいま到着しました! 敵の艦隊は、私がすべてスクラップ(実験の的)にして差し上げましょう!」
インテリ眼鏡を光らせて不敵に笑う、ルミナ侯爵家の次男・カイル。
そしてその後ろには、純白の作業着に身を包んだクレアが、白銀の杖を高く掲げとった。
「皆さんの傷は、私が癒やします! 『神聖なる癒やしの光』!」
クレアから放たれた光がカリカの街を包み込み、限界を迎えていた労働者たちやアレンの傷を、一瞬にして塞いでいく。
「カイル! クレアちゃん!」
アレンが前線で剣を振りながら、歓喜の声を上げる。
だが、サプライズはそれだけやなかった。
「――チェストォォォォォォォォッ!!」
今度は、東の水平線。
そこから、地鳴りのような、いや、海鳴りのような『狂気の咆哮』が轟き渡った。
東の海から突っ込んできたのは、無数の和船。
その先頭の船の舳先に立ち、抜身の日本刀を構えて爛々と目を血走らせているのは、あの『背水の修羅』の少年、佐吉やった。
「待たせたな、おばちゃん!! 大和郷の島津グループ、特大の『出資(斬り込み)』に来たぜ!!」
「佐吉! 久義! 黒戸に半月まで!」
佐吉の後ろには、若き社長となった久義が狂気の笑みを浮かべ、さらに天才軍師コンビの黒戸と半月が、算盤と図面を手に冷静に敵の陣形を分析しとる。
「……黒戸、半月! 敵の弱点は見えたか!」
「ええ、佐吉殿。中央の敵本陣、指揮系統が完全に間延びしています! あそこを突けば、数万の敵は一瞬で瓦解する!」
東から駆けつけた大和郷の『薩摩の狂戦士軍団』が、船からカリカの港へと飛び移り、上陸していた国家の正規軍を、文字通り「物理的な暴力」で蹂躙し始めた。
「な、なんだあいつらは!? 剣の振りが異常だ! 狂っている!」
「西からは未知の魔導砲! 東からは狂戦士の群れだと!? どこからこんな巨大な援軍が……!」
国家の正規軍は、完全に恐慌状態に陥った。
カイルの魔導砲による絶対的な制圧力と、佐吉たち薩摩軍の圧倒的な突破力。
数ヶ月間、カリカを苦しめ続けてきた国家の軍勢が、東西の「最強の家族」による挟み撃ちに遭い、みるみるうちにすり潰されていく。
「……信じられん。西の大陸の最新技術と、東の島国の圧倒的武力……。それが今、このカリカで一つに繋がったというのか……!」
ギディオンが、震える手で片眼鏡を押さえ、涙を流しながらその光景を見つめとった。
「せや! これが、うちが数ヶ月前に仕込んどいた『超特大のタイムセール』や!」
うちは、パイプ椅子の上に立ち上がり、合流した東西の家族たちに向かって、特大のゴミ拾いトングを高く掲げた。
「みんな、よう来てくれた! カリカのオープン記念、最後の大掃除や! あの国家のエリートどもを、全部まとめて返品処理(海へお帰り)したるでぇぇッ!」
「「「応ッ!!」」」
おばちゃんが結成した『世界連合軍』の反撃。
それは、理不尽な法律を作った巨大国家を、根底からぶっ壊すための、最高に痛快な逆転劇の始まりやった!
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