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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第9章:熱砂の巨大中継港! 理不尽な法律とオカン・ユニオンの逆襲

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第136話 下請け社長の末路と、巨大な元請けへの宣戦布告

 地下の巨大動力室(元栓)が破壊されたことで、特権商社カリカ支部は、すべての魔導システムと防衛機構を完全に停止させた。

 薄暗かった地下スラムから、そして鉄格子の奥から解放されたばかりの大人のエルフたちが、ドワーフや獣人たち『オカン・ユニオン』の面々と共に、怒涛の勢いで地上の特権商社施設へと雪崩れ込んでいく。


「……抵抗するな! 武器を捨てろ!」


「我らの要求は、不当な労働の撤廃と、この港の解放だ!」


 アレンを先頭にした労働者たちの熱気と、動力を失って沈黙した施設を前に、地上に残っていた特権商社の私兵たちは完全に戦意を喪失しとった。

 彼らは次々と魔導銃や剣を床に放り投げ、両手を上げて跪いていく。

 一滴の血も流すことなく、カリカの港は、長年虐げられてきた者たちの手に落ちたんや。


 その頃。

 特権商社カリカ支部の最上階、総督執務室。

 総督クライヴは、額から滝のような冷や汗を流しながら、金庫の奥に隠してあった金塊や極上の魔力結晶を、巨大なトランクに手当たり次第に詰め込んどった。


「くそっ、くそぉぉっ! あの無能な兵士どもめ! なぜ下等種族の暴動ごときを止められんのだ!」


 彼は裏口にある脱出用の隠し通路へ向かおうと、重いトランクを持ち上げた。

 だが、その手がドアノブに掛かるよりも早く。

 背後の豪華な両開き扉が、バァァァンッ! と、けたたましい音を立てて蹴り破られたんや。


「どこ行くねん、下請けのブラック社長。……そのトランクの中身、まさか従業員の給料(未払い分)持ち逃げするつもりやないやろな?」


 土煙の中から現れたのは、特大のゴミ拾いトングを肩に担いだうちと、西の大陸の長剣を構えたアレン、そして、分厚い片眼鏡モノクルを光らせるリザードマンのギディオンやった。

 さらにその後ろからは、リリルがうちのポンチョの裾を握りしめて、ジッとクライヴを睨みつけとる。


「ヒッ……! 貴様ら……! ど、どうやってここまで!」


 クライヴは後ずさりし、震える手で懐の短銃を抜こうとした。

 だが、アレンの『刹那の観測』の神速がそれを見逃すはずもない。

 金属の鳴る鋭い音と共に、クライヴの持つ銃は、アレンの剣の峰打ちによって一瞬で弾き飛ばされ、床の彼方へと滑っていった。


===========


「ひいぃっ! こ、殺さないでくれ! 金ならある、このトランクの中身をすべてやろう!」


 腰を抜かしたクライヴが、無様に命乞いを始める。

 うちは溜息をつき、アイテムボックスから取り出したタロットカードを、彼の目の前の高級なマホガニーの机にバシッと叩きつけた。

 出たのは、『塔(The Tower)』の正位置、そして『悪魔(The Devil)』の逆位置や。


「……金なんか要らんわ。それより、あんた。自分が今、どんだけ『詰んでる』か分かってへんやろ」


 うちが冷たく見下ろすと、クライヴは顔を引きつらせた。


「ば、馬鹿なことを言うな! 私を殺せば、特権商社の本体と、その後ろ盾である西の巨大な国家が黙っていないぞ! 貴様らなど、本国の正規軍の前に一捻りで……!」


「アホか。その国(元請け)から、あんたはとっくに『トカゲの尻尾切り』で見捨てられとるわ!」


 うちの容赦ない言葉に、クライヴの動きがピタリと止まる。


「『塔』の正位置は、積み上げた虚栄の崩壊。『悪魔』の逆位置は、悪縁が切れる暗示や。……あんた、数ヶ月も港の物流を止めた挙句、エルフの命まで使い潰した。国からすれば、あんたはもう『不祥事を起こした無能な下請け社長』でしかないんやで。……王都に逃げ帰ったところで、全責任を押し付けられて、首切られるのがオチやわ」


「そ、そんな……! 私は、国のために、これほどまでに利益を……!」


 絶対的な後ろ盾を失ったというタロットの残酷な真実に、クライヴは完全に絶望し、床に崩れ落ちた。

 ギディオンが静かに歩み寄り、冷徹な声で宣告する。


「総督クライヴ。オカン・ユニオンの規約および、不当労働行為の現行犯として、貴方を拘束します。……この街の『種族適性法』は、たった今、完全に解体されました」


 ドワーフと獣人の兵たちが部屋に入り、うわ言を呟くクライヴを連行していく。

 これで、カリカの港の『実効支配』は、うちら労働組合の手に落ちたんや。


===========


「……やれやれ。これで一段落やな」


 うちは、執務室の広い窓から、歓喜に沸くカリカの街を見下ろした。

 だが、ギディオンの顔は決して明るくなかった。彼は窓枠に手をかけ、はるか西の海――特権商社の本国がある方角を、険しい目で見つめとった。


「静江殿。カリカの奪還、見事な手腕でした。……しかし、喜ぶのはまだ早い。この巨大な物流ハブを奪われたことで、特権商社本体と西の国家は大打撃を受けた。……彼らが、この屈辱を黙って許すはずがありません」


「せやろな。カネのなる木を奪われたんや、次は本気で来るわ」


 ギディオンは、分厚い見取り図を机に広げた。


「ええ。次にやって来るのは、カリカ支部の私兵などではありません。国家が誇る本国の『正規軍』と、海を黒く染め上げる商社本体の『無敵艦隊』です。彼らは圧倒的な武力で、このカリカを海と陸から完全に『封鎖』し、我々を干上がらせるつもりでしょう。……我々オカン・ユニオンの戦力だけでは、到底持ち堪えられません」


 国家の正規軍による、絶対的な封鎖。

 その絶望的な予測に、アレンも顔を強張らせ、部屋の空気が一気に重くなった。


 ……だが、その重苦しい沈黙を破ったのは、うちのポンチョの裾を握っていた、小さな手やった。


「……おばちゃん。ギディオンおじちゃん。敵がいっぱい来るなら……わたしたちも、いっぱい『お友達』を呼ぼう?」


 リリルが、澄んだ瞳でうちらを見上げて、ポツリと言ったんや。


「お友達?」


「うん。……このカリカの街の周りには、特権商社の怖い人たちから逃げて、森や小さな町に隠れて泣いてるエルフのお友達や、獣人のおじさんたちが、まだいっっっぱいいるの」


 リリルは窓辺に駆け寄り、夕日に染まるカリカの郊外を指差した。


「だから……この街が、もう『誰かが泣く街』じゃなくなったよって。みんなの『得意なこと』ができる街になったよって、教えてあげるの! そしたら……みんな、絶対に助けに来てくれるよ!」


 その言葉に、ギディオンが雷に打たれたように目を見張った。


「……周辺都市の解放と、潜伏する同胞たちの蜂起による、連鎖的な呼応……! そうか、ただ籠城するのではなく、このカリカを『自由の象徴』として掲げ、周辺の虐げられた者たちをすべて味方につけるというのか……!」


 老リザードマンの瞳に、戦術家としての熱い炎が燃え上がる。

 アレンも、ハッとして顔を上げた。


「静江さん! それなら、港から逃がして沖合で待機してくれている『森一族の船団』とも連携できます! 彼らに周辺の町へ急を知らせてもらい、さらに海上のゲリラ戦を仕掛ければ……敵の無敵艦隊の海上封鎖にも、必ず突破口が開けます!」


 ただの暴動から、周辺地域を巻き込んだ『本格的な革命』へのステージ移行。

 小さな王女が提案したシミュレーションゲームのような壮大な戦術(呼応と解放)が、絶望的な防衛戦に、確かな勝機と光をもたらしたんや。


===========


「……アハハハハ! 最高やないの、リリルちゃん! 立派な革命の指導者やで!」


 うちは腹を抱えて笑い、リリルの頭をわしゃわしゃと撫で回した。

 そして、特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ直し、窓の向こうの、まだ見ぬ巨大な敵――「国家」へ向かって、ギラギラのデコネイルをビシッと突き立てた。


「聞いたか、アレン、ギディオン! 本社と国が本気で来る前に、このカリカの街を、絶対に破られへん『超特大の絶対防衛要塞スーパーマーケット』に作り変えるで!」


「はっ! ギディオン、ただちに周辺都市への『解放の報せ』を書き上げ、森一族へ託します!」


「僕も、防衛陣地の構築と兵の再配置を急ぎます!」


 うちは、夕日に照らされるカリカの街を見下ろし、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。


「近隣の町に『特売チラシ(解放の知らせ)』をばら撒いて、隠れてる同胞たちを全部呼び寄せなはれ! 狂ったカースト制度を作った国ごと、おばちゃんが全部まとめて漂白ブリーチしたるわ!」


 巨大中継港カリカの乗っ取りと、実効支配の完了。

 そしてそれは、種族適性法という理不尽な法律を作った西の巨大国家への、真っ向からの『宣戦布告』やった。

 おばちゃんと小さな王女が率いるオカン・ユニオンの、世界を巻き込む本当の大掃除が、今、高らかに狼煙を上げたんや!


読んでくれてありがとうございます!


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