第127話 西からの特大便と、オカン流・世界商圏プロジェクト
阪大城の怨念を特大バーゲンセールで精算したうちらは、西の海将・森一族の最速船に乗り込み、大和郷の「始まりの地」である火の国・薩摩へと凱旋した。
久しぶりに足を踏み入れた薩摩の外城は、かつての血生臭い「玉砕覚悟の軍事拠点」から、大和郷全体を牽引する活気あふれる「大商業・生産拠点」へと見事な変貌を遂げとった。
「おばちゃーんっ! アレン! リリルちゃんも!」
港に船が着くなり、一番に駆け寄ってきたのは、立派な羽織袴に身を包んだ佐吉やった。
戦乱の泥をすすり、ついにこの大和郷の実質的なトップ(新社長)にまで登り詰めた彼やけど、うちの顔を見た瞬間に見せた笑顔は、焼け跡で出会ったあの頃の少年のまんまやった。
「ただいま、佐吉。えらい立派な格好になっとるやないか。社長業は順調か?」
「ああ! おばちゃんが残してくれた『ホワイト契約』のおかげで、どこの大名も文句言わずに協力してくれてるよ! ……でも、今日は俺の顔を見に来たんじゃないんだろ?」
佐吉がニカッと笑って、港にうずたかく積まれた「巨大な木箱の山」を指差した。
それは、森の兄ちゃんが阪大で教えてくれた、西の大陸・ルミナにいる『家族』たちからの特大の届け物や。
「……静江さん。これ、箱の封印にルミナ商業ギルドの紋章と、エルゼ様の公印がバッチリ押されていますよ」
アレンが木箱を調べながら、ゴクリと息を呑む。
うちは逸る気持ちを抑えきれず、特大のゴミ拾いトングの先で、一番大きな木箱の蓋をバールのようにこじ開けた。
「さてさて、エルゼちゃんたち、一体何を送ってきたんや……って、うわぁっ!」
中から出てきたのは、西の大陸の最高級のワインや、魔族領から採掘されたピカピカの魔力結晶。カイルが徹夜で作ったであろう最新型の「自動お掃除魔導具」や、クレアの神聖魔法が込められた「癒やしの香炉」など、見たこともないような珍しい品々の山やった。
「おばちゃん、すっごくいい匂いがする! これ、甘いお菓子もあるよ!」
リリルが箱の奥から、ルミナ特産の焼き菓子を見つけて目を輝かせとる。
にゃーんと鳴くクロも、魔族領の高級な魚の干物に釘付けや。
「……ん? なんやこれ、手紙が入っとるわ」
うちは箱の一番上に置かれていた、分厚い封筒を手に取った。
封を切ると、中からはエルゼの流麗な文字と、バネッサの力強い筆跡が入り混じった、長い長い手紙が出てきたんや。
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『愛する盟友・静江、そしてアレン、リリルへ。
あなたたちが送ってくれた仕送り……大和郷の特産品だけど、ルミナでとんでもないことになっているわ』
手紙の出だしから、すでにエルゼの「女帝の覇気」がむせ返るように漂ってきとる。
『静江が何気なく送ってきた「干物」や「お茶」、それに「和紙」や「陶器」。あれらを夜会で貴族たちに振る舞ったところ、西の大陸にはない繊細な味と品質に、王都の連中がこぞって「どこで買えるのだ」と群がってきたのよ。
魔族領のバアルたちも、あの「お茶」の香りにすっかり魅了されて、毎日の労働の後の楽しみにしているわ』
「……静江さん。もしかして、あなたが送ったあの仕送り、向こうで大バズりしてるんじゃないですか?」
手紙を横から覗き込んだアレンが、顔を引きつらせる。
うちは「あちゃー」と額に手を当てた。ただのオカンの仕送りのつもりやったのに、どうやら特大の商機に火をつけてしもうたらしい。
手紙の後半は、バネッサのえげつないまでの「商売魂」が爆発しとった。
『静江! これを単なるお土産で終わらせる手はないよ! ルミナ商業ギルドは、大和郷の品々を「独占的」に輸入・販売する計画を立てた!
西の魔法技術(魔導具や魔石)を大和郷へ輸出し、大和郷の文化(食料や工芸品)を西へ輸入する……名付けて【世界商圏プロジェクト】さ!
だが、問題が二つある。一つは、大和郷と西の大陸を繋ぐ「安定した航路」の確保。もう一つは、両大陸の中間に位置するあの巨大な「中継港」での、商いの権利と拠点の確立だ。
静江、アレン。あんたたちの次の仕事は、大和郷のトップと専属の貿易条約を結び、中継港の厄介な連中を黙らせて、安全な海の道を作ることだよ!』
手紙を読み終え、うちは天を仰いだ。
「……あのバネッサのお局様。うちの仕送りをダシにして、世界を股にかける特大の貿易会社作ろうとしとるで……!」
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「世界商圏……。西の大陸の魔法技術と、俺たち大和郷の品を交換するのか」
手紙の内容を聞いていた佐吉が、腕を組んで目を輝かせた。
「おばちゃん! それ、最高の儲け話じゃないか! 大和郷は平和になったけど、戦乱の爪痕でまだまだ物資も技術も足りない。西の魔法技術や魔石が入ってくれば、復興は一気に進む! 俺たち大和郷の『島津グループ』は、ルミナ商業ギルドとの全面的な専属貿易条約を結ぶぜ!」
佐吉が、新社長としての即断即決を見せる。
「……話が早くて助かるわ。でもな、佐吉。西の大陸との間にまたがる海には、まだ海賊もウヨウヨおるし、あの『中継港』も、どこの国の法律も通用せえへん荒くれ者たちの溜まり場や。商売を始めるには、まずあの海の上の『ゴミ』を掃除せなあかん」
うちは、アイテムボックスから使い込まれたタロットカードを取り出し、西の海へ向かって一枚展開した。
出たのは、『戦車(The Chariot)』の正位置、そして『魔術師(The Magician)』の逆位置や。
「……『戦車』の前進と、『魔術師』の逆位置……つまり、騙し合いとペテンの渦巻く場所への突入やな。……中継港の連中、そう簡単にはうちらの商売を認めてくれへんみたいやわ」
「静江さん、中継港といえば、僕たちが大和郷に来る前に幽霊船で立ち寄った、あの混沌とした巨大な港ですね。あそこを真っ当な貿易拠点に変えるなんて……また胃が痛くなりそうです」
アレンが、腰に下げた『黄金の算盤』を撫でながら、深ぁくため息をつく。
でも、その顔には不思議と怯えはなかった。ルミナの家族たちと、大和郷の仲間たち。その二つの世界を繋ぐという壮大な目標が、彼の騎士としての誇りを新しい形(商社マン)で燃え上がらせとるんや。
「……しゃあないな。おばちゃんの出張鑑定、まだまだ隠居はできへんみたいや」
うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、西の海へ向かってニカッと笑った。
「アレン、リリルちゃん! 荷造りしなはれ! 次の現場は、海のど真ん中……欲望とペテンが渦巻く『中継港』や! 世界商圏の足場作り、おばちゃんがガッツリ値切り倒して、ピカピカに整備したるで!」
大和郷の平定を終えたオカン一行の次なる任務は、海を越えた「世界貿易のルート開拓」。
バネッサとエルゼの強欲な特大ミッションを背負い、未知なる「中継港」での新たな大掃除(ビジネス交渉)が、今、高らかに幕を開けたんや!
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