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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第8章:戦跡の特殊清掃

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第124話 古都の百鬼夜行と、オカン流・ド派手イルミネーション

 丹波の山奥ではぐれ魔族たちに「休肝日」を叩き込み、故郷へ送り返したうちらは、さらに東へと進み、大和郷の歴史と権威の中心地……『古都』へと辿り着いた。


 ここはかつて、うちが若き帝と密会して「名誉会長」にスカウトし、その後、数万の関白軍に包囲された因縁の場所や。


「……おばちゃん。この街、すっごく広くて綺麗なのに、夕方になるとみんな急いでお家の戸を閉めちゃってるよ。誰も外を歩いてない」


 リリルが、うちのポンチョの裾を握りながら、夕闇が迫る古都の大通りを不思議そうに見渡す。


 宿屋に腰を落ち着け、主人のオッサンに話を聞くと、どうやら最近、この古都の夜の街に恐ろしい怪異が出没しているらしい。


「……旅のお方、夜は絶対に外へ出てはなりませぬぞ。ここ最近、夜中になると大通りを『百鬼夜行』が練り歩くのです。姿は見えねえんですが、不気味な青白い火の玉が列をなして、甲冑の擦れる音や、馬の嘶き、それに『暗い……見えない……』という恐ろしい呻き声だけが響き渡るのです。……噂では、あれはかつて、この古都の郊外で薩摩の奇襲に遭い、嵐の中で全滅した関白軍の怨霊だとか……」


「あ……」


 その言葉を聞いて、うちは思わず持っていた湯呑みを落としそうになった。


 アレンも「ヒッ」と息を呑んで、目を泳がせとる。


 せや。あの嵐の夜、うちらの『特売ダッシュ(防具を脱ぎ捨てた軽装での夜襲)』のせいで、パニックになった数万の関白軍は、暗闇の中で敵味方の区別がつかなくなり、同士討ちをして自壊したんや。


「……完全に、僕たちが作り出した特大のゴミ(怨念)ですね、静江さん……」


「そ、そうやな。……海峡の時も言うたけど、自分らで出したゴミは、自分らでちゃんと分別して片付けなあかん。しゃあない、今日の夜、その百鬼夜行とやらの『交通整理』に行ったるわ」


 その日の深夜。

 月すら雲に隠れた、漆黒の闇に包まれた古都のメインストリート。

 うちは大通りのド真ん中にパイプ椅子を広げて、どっかと座っとった。アレンが警戒しながらモップ槍を構え、リリルとクロはうちの背中に隠れとる。

 やがて、大通りの向こう側から、ギシギシという甲冑の擦れる嫌な音と、馬の嘶き、そして青白い燐光の群れが近づいてきた。


 姿は見えへんのに、恐ろしい怨念の気配だけが、大通りを埋め尽くして迫ってくる。


「……アレン、リリルちゃん。ちょっと視せてもらうで」


 うちはアイテムボックスから特大の水晶玉を取り出し、両手でそっと触れた。


 視界がカチッと切り替わり、肉眼では見えん彼らの姿が鮮明に浮かび上がり、声が直接耳に流れ込んでくる。


『……暗い……。何も、見えない……』


『……敵はどこだ……。いや、俺が斬ったのは……味方だったのではないか……?』


 燐光の正体は、真っ黒に焦げた陣幕を引きずり、泥と血にまみれた関白軍の兵士たちの亡霊やった。彼らは、暗闇の中で怯えきった顔をして、互いの顔も確認できずに、ただ虚空に向かって刀を振り回しながら歩いとる。


 水晶越しに視えたのは、うちらへの恨みやない。


 嵐の暗闇の中で、パニックになって味方を斬り殺してしまった『底なしの罪悪感』と、見えないことへの『絶対的な恐怖』やった。


===========


 水晶を通じて、彼らの『暗闇で仲間を殺めてしまった絶望とパニック』が、うちの精神に直接流れ込んでくる。


 途端に、激しい精神的疲労が押し寄せ、視界の端にザザッとノイズが走った。


 一瞬だけ、前世の大阪で、大型台風が直撃して街中がブラックアウトした夜の記憶が重なって見えたわ。真っ暗な部屋の中で、懐中電灯が見つからず、家族同士で足を踏み合って「痛いやろ!」「見えへんねんからしゃあないやろ!」と、パニックになって険悪な空気になった、あのどうしようもないイライラ感や。


(……あー、わかるで。暗くて周りが見えへん時って、人間、疑心暗鬼になって一番身近なもんを攻撃してまうんやんな……)


 うちは、彼らの暗闇の恐怖に引っ張られそうになる意識を、アイテムボックスから取り出した「ハチミツ味」の飴ちゃんを奥歯でガリッと噛み砕くことで、無理やり現在に引き戻した。


 濃厚な甘さが脳を叩き起こし、幻覚のノイズを散らす。


「静江さん、奴ら、錯乱したままこちらへ向かってきます! 数が多すぎる!」


 アレンがモップ槍を構えるが、うちは水晶玉から手を離し、パイプ椅子からスッと立ち上がった。


「アレン、武器は下ろしなはれ! 暗闇でパニックになってる子に、刃物向けてどないすんねん! 余計に怖がって暴れるだけやろが!」


 うちは大通りの中央に歩み出ると、百鬼夜行の先頭に向かって、腹の底から大声で怒鳴りつけた。


「あんたら! いつまで暗闇の中でウロウロして、メソメソ泣いとんねん!」


『……ひぃっ!? な、何者だ! 敵か!』


「敵やない、掃除屋や! 暗くて見えへん、味方を斬ってしもたって……そんなん、暗闇の中でチャンバラしたあんたらが悪いんやろが! 暗かったら、自分で電気(明かり)点けんかい!」


 うちの無茶苦茶なオカン説教に、亡霊たちがポカンと動きを止めた。


「アレン! 出番や! あんたの神速で、うちがボックスから出すもんを、この大通りの端から端まで飾り付けなはれ!」


「えっ!? 飾り付けるって、何を……!?」


「これや!」


 うちはアイテムボックスの奥深くに腕を突っ込み、転生した時からずっと入りっぱなしやった『大量のギャル服と装飾品』をドサドサッと引っ張り出した。


 それは、光を強烈に反射するスパンコールだらけのドレスや、デコレーション用のキラキラのラインストーンや!


===========


「ええっ!? この派手な布切れをですか!?」


「せや! 暗闇が怖いんやったら、夜が明けるより明るく照らしたったらええねん! アレン、行きなはれ! はよ!」


「わ、わかりました! はあああッ!」


 アレンがモップ槍を置き、目にも止まらぬ『刹那の観測』の神速で、うちが次々と放り出すスパンコールの服やラインストーンを受け取っては、大通りの軒先や街路樹に巻き付けていく。

 数分も経たないうちに、漆黒の闇に包まれていた古都のメインストリートは、ギラギラと光を反射する装飾で埋め尽くされた。


「よし、仕上げや! 特大照明、点けるで!」


 うちはボーリングの球ほどもある『特大の水晶玉』を念動力で大通りの上空に高く浮かべると、両手をかざして、ありったけの「鑑定の光(純白の光)」を放射させた。


 ピシャァァァァッ!!


 水晶玉自体が、まるで小さな太陽のように強烈な光の塊となる。


 そこから放たれた光が、アレンが飾り付けた無数のスパンコールやラインストーンに直撃し、乱反射を引き起こす。


 漆黒だった古都の大通りが、まるで巨大なミラーボールの光を浴びたディスコのように、ド派手で眩い光に包まれたんや!


『……な、なんだこの光は……!』


『……明るい……。夜なのに、昼間のように……』


 突然のド派手なイルミネーションに、百鬼夜行の亡霊たちが眩しそうに目を細める。


「まだまだ! これがほんまの仕上げや!」


 うちは、すり鉢で粉々に砕いておいた、オレンジ色(精神安定)と、赤色ポジティブの飴ちゃんの粉末を、光り輝く大通りに向かって、桜吹雪のようにバサァァッ! と豪快に撒き散らした。


 乱反射する光を浴びてキラキラと輝く飴の粉末が、亡霊たちに降り注ぐ。


「ほら! よう目ぇ開けて、隣にいる奴の顔を見てみぃ! あんたらが斬ってしもた仲間は、あんたらのこと恨んでなんかへんで!」


 うちの言葉にハッとした亡霊たちが、明るく照らされた大通りで、恐る恐る隣の仲間の顔を見た。


 オレンジの飴の魔力が、彼らの心を縛り付けていた「罪悪感」という暗闇を優しく溶かしていく。


『……あ……お前、俺が斬ってしまった……』


『……気にするな。あの嵐じゃ、誰が誰だか分からなかったんだ。……お前の顔が、また見られてよかった……』

 明るい光の下で、互いの無念と許しを確認し合った関白軍の兵士たち。


 彼らの顔からは、百鬼夜行のおどろおどろしい怨念がスゥッと消え去り、憑き物が落ちたような安らかな笑顔に変わっていった。


『……ありがとう、派手な姉ちゃん。……こんなに明るく照らしてくれて。俺たち、もう迷わないよ』


 兵士たちは、ド派手な光の中で互いに肩を叩き合い、次々とキラキラとした光の粒になって、古都の夜空へと昇っていった。


「……消えましたね。大通りの淀みも、完全に晴れました」


 アレンが額の汗を拭いながら、ホッと息をつく。


「せや。人間、暗いとこにおるとロクなこと考えへん。怖い時は、ド派手に電気点けて、顔突き合わせて笑うのが一番の特効薬やわ」


 うちはパイプ椅子を片付け、上空から水晶玉を回収した。


「にゃーん」


 クロが足元ですりすりと甘え、リリルも「おばちゃん、すっごくピカピカで綺麗だった!」と拍手しとる。


「さてと! うちらがやらかした特大のゴミ(同士討ちの怨念)も、これで綺麗に片付いたな。……次はいよいよ、この大和郷の中央、巨大な盆地にあった『関白の本城』跡地や」


 うちが次なる目的地を口にすると、アレンの顔からスッと笑みが消え、その瞳に静かな、けれど熱い決意の光が宿った。


「……あそこには、あのタヌキ親父の卑劣な騙し討ちのせいで無念に散っていった、僕たちの仲間(薩摩の留守部隊)と、関白の兵たちの怨念が、まだドロドロにこびりついとるはずやからな」


「……ええ。あの時の退却戦の悔しさは、僕も決して忘れていません。彼らの魂を、必ず綺麗に掃除して、故郷へ帰してあげましょう」


「せや! あのクソタヌキが出した一番汚いゴミ、うちらの手でピカピカに片付けに行くで!」


 古都の夜を明るく照らし出したおばちゃん一行は、次なる大掃除の舞台――かつての仲間たちが眠る因縁の地へ向けて、力強く歩き出すんや。



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