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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第8章:戦跡の特殊清掃

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第113話 オカンの仕送りと、無念を弔う大掃除の旅

 大和郷を真っ二つに割った「天下分け目の株主総会」から数週間。


 タヌキ親父のブラック企業が倒産(隠居)したことで、大和郷には嘘のように穏やかで平和な風が吹き始めとった。


 うちは、すっかり活気を取り戻した古都の宿屋の縁側で、山のように積まれた大和郷の特産品と格闘しとった。


「……よし、エルゼちゃんにはこの最高級の『西陣織の反物』やな。あの金糸の髪と赤い瞳に、絶対に似合うわ。……カイルちゃんには、大和郷の『陰陽道の古文書』。どうせまた徹夜で解読して喜ぶやろ。クレアちゃんには、甘くて綺麗なお干菓子(和菓子)のセットや」


 うちは、西の大陸・ルミナの街や魔族領で留守番しとる「家族」たちへの仕送りを、大きな木箱に丁寧に詰め込んでいく。


「静江さん、バネッサさんにはこの『大和郷の金貨と最新の帳簿』ですね。バアル殿やゾルゲ殿たち魔族領の皆には、この『特上の宇治茶と茶器のセット』を入れましょう」


 アレンもニコニコしながら、手際よく荷造りを手伝ってくれとる。


 リリルは、うちの横で筆とすずりを器用に使い、宛名書きを一生懸命手伝ってくれとった。


「……最後に、これやな」


 うちはアイテムボックスから、色とりどりの飴ちゃんをどっさりと取り出し、それぞれの木箱の隙間にパンパンに詰め込んだ。


 そして、和紙にサラサラと手紙をしたためる。


『エルゼちゃん、カイル、クレア、みんな元気か?

こっちは、タヌキのブラック企業を見事に倒産させて、見事なホワイト大和郷の出来上がりや!

一滴も血ぃ流さんと、定時株主総会で乗っ取ったったわ!

送ったもんは、こっちの特産品や。喧嘩せんと分けなはれ。

大和郷の大きな掃除は終わったけど、うちらはもう少しこっちを旅するつもりや。

まだ、部屋の隅っこに「埃(無念の魂)」が残っとるみたいやからな。

飴ちゃん舐めて、しっかり留守番頼むで!

――静江より』


「よし! アレン、これ港の商人に頼んで、西の大陸行きの特急便に乗せてもらいなはれ」

「はい! みんな、きっと大喜びしますよ!」


 アレンが木箱を抱えて走り出していくのを見送り、うちは縁側で熱いお茶をすすりながら、ホッと息をついた。


===========


「……静江さん。本当に、我らの元に残ってはくださらないのですか」


 振り返ると、そこには見違えるほど立派な直垂ひたたれを着た佐吉と、若き当主の久義、そして天才軍師の黒戸と半月が、少しだけ寂しそうな顔をして立っとった。


「せや。大和郷の新しい国造り(会社経営)は、あんたら若くて優秀な役員たちの仕事や。……おばちゃんがいつまでも口出ししてたら、風通しが悪うなるからな」


 うちは立ち上がり、ヒョウ柄のポンチョをバサッと翻した。


「……静江殿には、何から何まで頭が上がりませんな。我ら島津グループ……いや、新しい大和郷の政は、決して民を使い捨てるブラックなものにはいたしません」


 黒戸が算盤を抱えながら深々と頭を下げる。


 半月も、穏やかな笑顔で頷いた。


「ええ。静江さんの『生活の知恵』と『飴ちゃん』が教えてくれたホワイトな契約。それが、これからの大和郷の新しい法となります」


 そして、佐吉が一歩前に出た。


 村を焼かれてすべてを失い、『背水の修羅』として狂気に呑まれかけていたあの孤児の少年は、今や大和郷の未来を担う、立派な若武者(新社長)の顔になっとった。


「……おばちゃん。俺、約束通り一番上まで登り詰めたよ。……でも、これで終わりじゃない。この国を、誰も一人ぼっちにならない、あったかい場所にしてみせる。……だから、またいつか、俺の作った国を見に来てくれよな!」


「当たり前や! あんたがちょっとでもブラックな真似したら、いつでも特大のハリセン持って、社長室にガサ入れしたるからな!」


 うちはガハハと笑い、佐吉の頭を昔のように少しだけ乱暴に撫でてやった。


 佐吉は照れくさそうに笑い、そして力強く頷いた。


 大和郷の表舞台。天下のまつりごとは、彼らという最高の「家族」に任せておけば、もう何も心配はいらへん。


===========


 古都の城門を抜け、うちら三人――うち、アレン、リリルは、再び見知らぬ街道へと足を踏み出した。


「おばちゃん、これからどこに行くの?」


 リリルが、うちのポンチョの裾をギュッと握りながら、大きな瞳で見上げてくる。


「……そうやな。大和郷は平和になったけど、これまでの長い戦乱で、無念の思いを抱えたまま散っていった兵士たちや、巻き込まれた農民たちの『心のゴミ』が、あちこちの古戦場に泥みたいにこびりついとるはずや」


 うちはアイテムボックスから特大の水晶玉を取り出し、それを軽く撫でた。


 水晶の奥には、陽の当たる平和な大和郷の裏側で、暗く冷たい土の下で泣いている、無数の『あやかし(亡霊)』たちの気配が、確かに映し出されとった。


「あの子らはな、タヌキ親父の野心のせいで、誰にも『お疲れ様』って言ってもらえんまま忘れられてしもうたんや。……それをそのままにしておくのは、掃除屋(占い師)の名折れやわ」


「……戦跡を巡り、散っていった者たちの魂を浄化する旅、ですね」


 アレンが聖水のモップ槍を背負い直し、優しく、そして凛とした顔で微笑んだ。


「静江さんのその『お節介』、どこまでも付き合いますよ。……僕たちなら、どんな深い無念も、きっと洗い流せるはずです」


「せや! おばちゃんの飴ちゃんと説教で、大和郷の歴史のシミを、一滴残らず漂白したるで!」


 うちは水晶玉をアイテムボックスにしまい、特大のゴミ拾いトングを肩に担いで、青空の下を力強く歩き出した。


 天下分け目の大商談を終えたオカンの、次なる仕事。

 それは、戦国乱世の闇に沈んだ「迷い羊」たちの無念を弔い、あの世へと分別してあげる、優しくて少しだけお節介な『大掃除の旅』の始まりやった。


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