表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第7章:戦国大和郷! オカンの特売戦術と天下分け目の株主総会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/240

第112話 天下分け目の株主総会と、一斉の裏切り

 大和郷の中央に位置する、広大な盆地。


 秋の冷たい朝霧が立ち込める中、東西を二分する巨大な軍勢が、息を殺して対峙しとった。


 東には、天下を我が物にせんと野心を燃やすタヌキ親父が率いる、およそ十万の大軍。


 西には、うちら薩摩を中核とした西軍。


 大和郷の未来を決める、天下分け目の最終決戦の地や。


 タヌキ親父は、本陣の小高い丘に設けた豪奢な床几しょうぎに深く腰掛け、霧の向こうの西軍を見下ろしながら、満足げに腹を揺らした。


「……ふははは。帝の威光を借りて東の大名に声をかけたようだが、実際に西軍として集まったのは数万。対する我が軍は十万の圧倒的多数。……あの忌々しい妖女も、薩摩の野蛮人どもも、今日で皆殺しにしてくれるわ!」


 タヌキ親父の陣立ては完璧やった。


 前衛、右翼、左翼と、彼が日頃から恩賞で飼い慣らしている東の諸大名たちが、西軍を完全に包囲するように布陣している。


 やがて、太陽が昇り、朝霧がサァッと晴れた。


 それを合図に、タヌキ親父は手にした軍扇をバシッと開き、天高く掲げた。


「時は来た! 全軍、突撃! 薩摩の陣を踏み荒らし、天下をこの手に掴み取れぇぇッ!」


 ……だが。

 軍扇を振り下ろしても、地鳴りのような足音は響かなかった。


 動いたのは、タヌキ親父の直属の部隊、わずか数千のみ。


 右翼に布陣していた大名も、左翼を取り囲んでいた大軍も、誰一人として一歩も前に出ようとせえへん。


 それどころか、彼らは無言のまま、手に持った槍の穂先や、鉄砲の筒先を、西軍ではなく「タヌキ親父の本陣」へと一斉に向け始めたんや。


「……な、なんだ? どうしたのだ! 貴様ら、どこに刃を向けている!」


 タヌキ親父が慌てて立ち上がる。


 すると、右翼を任されていた東の有力大名が、馬を進み出させ、タヌキ親父に向かって冷酷に言い放った。


「……タヌキ殿! 申し訳ござらぬが、我らはこれ以上、貴殿の冷酷な野心の捨て駒になる気はありませぬ! 我らはすでに西の島津殿と新たな『誓約』を交わした。……今日この陣立ては、貴殿を討つための包囲網よ!」


「な、なに……!?」


「我らもだ! 帝のお墨付きと、西の莫大な資本! そして何より、我らの領地を正当に安堵するという厚遇! 貴殿の裏切りに怯える日々は、今日で終わりだ!」


 次々と上がる東の大名たちからの、堂々たる反旗。


 十万の軍勢のうち、なんと八万がすでにうちらの「事前のヘッドハンティング」によって寝返っており、タヌキ親父は一瞬にして、自陣のド真ん中で完全に孤立してしもうたんや。


===========


「な、なんだと……!? 貴様ら、我を裏切るというのか! 恩知らずどもめ!」


 タヌキ親父が絶望に目を見開いたその時。


 西軍の陣の真ん中がパカッと割れ、その奥から、特大のゴミ拾いトングを肩に担いだうちが、悠々と歩み出てきた。


「……おはようさん、タヌキのおっちゃん。朝から血圧上げて、大声出したら体に毒やで」


 後ろには、西の大陸の長剣を構えたアレン、そして不敵に笑う佐吉や久義たちが続いとる。


 うちはタロットカードの『審判』の正位置をバシッと指で弾いて見せ、不敵に笑った。


「妖術ぅ? 人聞き悪いこと言いなはんな。うちはただ、労働環境の改善と、利益の正当な分配(ホワイトな契約)を提案しただけやわ。……さて、タヌキ社長。あんたはこれまで、下請けの大名を使い捨てにして自分だけ丸々と肥え太ってきたな。でも、それも今日で終わりや」


 うちは、パイプ椅子をガシャンと広げて座り、足を組んだ。


「今日は大和郷の『定時株主総会』や。見ての通り、議決権の過半数はうちらがガッツリ握っとるで! これより、タヌキ社長の『解任動議』を提出する!」


「ふざけるな! たかが小娘の戯言で、この私が……ッ! 出合え! 我が最強の双璧、赤備えの猛将と無傷の豪傑よ! あのふざけた女の首を刎ねよ!」


 タヌキ親父が最後の切り札として、本陣の左右に控えていた最強の二大猛将を呼びつける。


 かつて、うちらの退却戦で凄まじい殺気を放って追いすがってきた、あの狂犬のような赤備えと、巨大な槍を持つ豪傑や。


 だが、彼らはタヌキ親父の命令を受けても、重い腰を上げようとせえへんかった。


「……おい! 何をしている! 早く行かんか!」


「……タヌキ殿。申し訳ござらぬ。我らは長年の最前線での酷使により、最早戦う気力が湧かぬのだ」


 赤備えの猛将が、申し訳なさそうに視線を逸らす。


「左様。あの妖女の甘露(飴)を口にしてから、積年の古傷が痛み出し、無為な戦に命を散らすのが馬鹿らしくなってな。これ以上の奉公は、御免被る」


 鹿角の豪傑も、槍を地面に突き立てて深くため息をついた。


 オカンの飴玉によって完全に毒気を抜かれ、「自分の健康と生活」の大切さに目覚めてしもうた彼らは、もはや狂気で戦うことを放棄しとったんや。


===========


「な、なんだと……!? 貴様らまで……私の下から、すべてが離れていく……!」


 タヌキ親父は膝から崩れ落ち、震える両手で地面の草を握りしめた。


 武力も、権力も、人も、すべてを失った。


 血で血を洗う戦国最大の合戦は、一滴の血も流れることなく、ただの「ブラック企業の倒産手続き」として、完璧な結末を迎えたんや。


「……さて。これで解任動議は可決やな。タヌキのおっちゃん、あんたもええ歳なんやから、天下がどうのって血走ってんと、縁側で盆栽でもいじって、のんびり隠居しなはれ」


 うちはパイプ椅子から立ち上がり、アイテムボックスから『メロン味』の飴ちゃんを取り出して、呆然としているタヌキ親父の膝の上にポイッと落とした。


「ほら、退職金代わりの飴ちゃんや。甘いもんでも舐めて、今までの自分の行いをじっくり反省しぃや」


「……」


 タヌキ親父は、膝に落ちた緑色の飴玉を見つめたまま、もはや返す言葉すら失っとった。


 戦場を覆っていた殺気は完全に消え去り、澄み渡った秋の空が、盆地全体を明るく照らし出しとる。


「……終わったな。本当に、誰も死なずに、一番上まで登り詰めたぞ」


 佐吉が、鞘に納めたままの刀を握りしめ、信じられないものを見るような目で青空を仰いだ。


「せや。生きて美味い飯を食うのが、一番の勝利やからな」


 うちは特大のトングを肩に担ぎ直し、アレンや佐吉たちの方を振り返って、ニカッと笑った。


「さぁて、大和郷の大掃除もこれで完了や! 久義、佐吉! あんたらが新しい社長(天下人)として、この国をホワイトで平和な場所に作り替えるんやで!」


「応ッ!! ヒョウ柄の軍師殿の教え、決して忘れはせん!」


 薩摩の若武者たちと、東の大名たちから、天を揺るがすような歓声が上がった。


 天下分け目の大戦。

 それは、大和郷の歴史に「おばちゃんの出張鑑定がもたらした、最も痛快で、最も平和な大商談」として、永遠に語り継がれることになったんや。


読んでくれてありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、

作品ページ上部の【☆評価】【ブックマーク】、そして【リアクション】ボタンをポチッと押していただけるととても励みになります!


みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ