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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第7章:戦国大和郷! オカンの特売戦術と天下分け目の株主総会

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第111話 帝の勅命と、古都のヘッドハンティング

 北の港『金ヶ崎』での感動的な再会から数日。


 タヌキ親父の裏切りという絶体絶命の危機を潜り抜けた薩摩の陣幕では、天才軍師の黒戸と半月が、頭を抱えて唸り声を上げとった。


「……我らは大和郷の西半分を完全に掌握しました。しかし、東の全域を牛耳るタヌキ軍の兵力と財力は、依然として我らを圧倒しています。まともにぶつかれば、数が違いすぎる」


 黒戸が算盤を弾きながら、渋い顔で現状を分析する。


「ええ。タヌキの狙いは、東の諸大名をすべて『タヌキ派』として強制的に従わせ、数の暴力で我らを押し潰すことでしょうな」


 半月も同意し、重苦しい空気が陣幕に立ち込める。


 だが、うちはパイプ椅子にどっかと座り、特大のゴミ拾いトングで机の上の地図……『東側』のエリアをバシッと叩いた。


「アホか、あんたら! 相手がデカい企業(大軍)やったら、その下請けをこっちに『ヘッドハンティング』して、合同会社を作ったらええだけの話やろ!」


「……ヘッドハンティング、ですか?」


「せや! 関白の城でのタヌキの『騙し討ち』。あれを見て、東側の大名たちがタヌキを手放しで信用してると思うか? 『次は自分が使い捨てられるんちゃうか』って、ガタガタ震えてる奴らがぎょうさんおるはずや! ……そいつらを呼び寄せて、『合同会社設立説明会(大名サミット)』を開くんや!」


「し、しかし静江さん。我々が呼びかけても、タヌキを恐れる彼らが素直に集まるとは思えません」


 黒戸の懸念に、うちはニヤリと極悪な笑みを浮かべた。


「誰がうちらの名前で呼ぶ言うたんや。……うちらには、この国で一番偉い『名誉会長』がおるやろ? 古都の御所にいる帝様に『勅命』を出してもらえば、あいつら、這ってでも集まらんわけにはいかへんのやで!」


 その悪魔的な発想に、天才軍師の二人が「な、なるほど……!」と息を呑んで震え上がった。


===========


 数日後。大和郷の中心、古都の御所。


 本来なら最も神聖であるはずのその広間に、タヌキ親父の影響下にありながらも、彼に不信感を抱く東や中央の諸大名たちが、ズラリと集結しとった。


「……帝からの急な呼び出しとは、一体何事だ?」


「タヌキ殿には内密にと言われたが……まさか、我らを逆賊として処罰するおつもりではあるまいな……」


 彼らが青ざめた顔でヒソヒソと囁き合っていると、御簾みすが上がり、上座に一人の人物が現れた。


 だがそれは、高貴な帝ではない。


 ヒョウ柄のポンチョをバサッと翻し、ギラギラのサングラスをかけた派手なギャル……うちや。


「よう集まってくれたな、社長(大名)さんら! 今日はあんたらに、とびきり美味い儲け話……『タヌキからの独立・合同会社設立』の提案を持ってきたで!」


 うちが声高らかに宣言すると、大名たちがパニックを起こしてざわめいた。


「な、なんだ貴様は! 帝の御前だぞ! 控えおろう!」


「控えへんわ。うちは『名誉会長』であらせられる帝様から、直々にお墨付きをもろてる正規のコンサルタントや!」


 うちは、事前に帝から借り受けていた「菊の御紋が入った特注の扇子」をバサッと広げて見せつけた。


 帝のお墨付きという、この世界における絶対的なホワイト認証。大名たちは「ひっ……!」と息を呑んで押し黙った。


「……さて、『悪魔』の正位置。あんたら、東のタヌキのおっちゃんにビビってへこへこしとるけど、あそこは典型的な『ブラック企業』やで! ……利用するだけ利用して、用が済んだら容赦なく切り捨てる。関白の城で、味方のはずのうちらを背後から蹂躙しようとしたんがええ証拠や! あんたらも、心の底じゃ『明日は我が身』って分かっとるんやろ!」


 その言葉に、大名たちが俯く。彼らもタヌキ親父の冷酷さと狡猾さを、誰よりも肌で感じとったんや。


「ええか、うちが提案する合同会社はちゃうで! あんたらの領地の自治権は、きっちり手元に残す。その代わり、対タヌキのための『兵力(株式)』をうちに出資しなはれ! すでに西半分を完全に制圧してるうちらの資本と、帝様の『お墨付き』! これにあんたらの力が加われば、タヌキと対等に渡り合える! 利益はしっかり還元する、超ホワイトな実力主義の同盟や!」


「し、しかし……」


「まだ迷うとるんか? ほな、これ見なはれ!」


 うちは、背後に控えていた佐吉と久義に合図を出した。二人が重そうな木箱を運び込み、大名たちの前で蓋を開ける。


 中に入っていたのは、中央の関白の蔵から接収した莫大な金銀財宝と、うちのアイテムボックスから出した大量の『飴ちゃん』や。


「この資金力と、うちの『絶対に当たる占い』、そして薩摩の精鋭! ……これだけ揃った極上のベンチャー企業に、今乗っからんでどうするんや!」


 うちはアイテムボックスから「リンゴ味」と「オレンジ味」の飴ちゃんを取り出し、大名たちに向けてポンポンと放り投げた。


「ほら、これ舐めて頭シャキッとさせなはれ! 泥船(ブラック企業)に乗ってジワジワ首絞められるか、うちらの豪華客船(合同会社)に乗って天下の利益を山分けするか! 決断の時やで!」


===========


 大名たちは、投げ渡された飴を恐る恐る口に含んだ。


 途端に、強烈なリンゴの甘みが彼らの心に巣食っていた「タヌキへの恐怖」を前向きな闘志へと塗り替え、オレンジの爽やかさが、張り詰めていた胃の痛みをスッと癒していく。


「……こ、これは……。なんだか、体の底から力が湧いてくる……」


「タヌキ殿に怯え続ける日々に、私も内心嫌気が差していたのだ……。それに、帝のお墨付きと、この莫大な資金力……!」


 飴の効果と、うちが突きつけた絶対的な説得力。

 東の大名たちの顔つきが、怯えた下請けから、野心に満ちた共同経営者へとみるみる変わっていった。


「……静江殿。我が領地の兵三千、この合同会社に出資させてもらおう!」


「我が家もだ! タヌキの横暴にはもう耐えられん。兵糧とともに、同盟に名を連ねる!」


「おおっ、乗り遅れるな! 我らも出資するぞ!」


 厳かな御所は一転して、熱狂的な「投資の申し込み会場」へと変わった。


 佐吉やアレンが次々と契約書(誓約書)を交わし、黒戸と半月が信じられないものを見るような目で算盤を弾きまくっとる。


「……お見事です、静江さん。まさか、帝の威光を使い、敵の陣営から不満分子をごっそり引き抜くとは」


 半月が、感嘆の溜息を漏らす。


「せやろ? 共通の敵(ブラック企業)がおる時ほど、人は団結しやすいもんや。……これで、東西を二分する巨大な合同会社『島津グループ』の設立や!」


 うちは特大トングを肩に担ぎ、ガハハと高らかに笑った。


 東の兵力を削り、自分たちの資本に組み込む。これによって、西の連合軍はついに、東のタヌキ軍と真っ向からぶつかり合えるだけの「巨大な力」を手に入れたんや。


 大和郷を真っ二つに割る、天下分け目の大戦(定時株主総会)。


 おばちゃんが代表取締役を務める合同会社は、いよいよタヌキ親父との最終決戦の地へと向けて、怒涛の進撃を開始しようとしとったんや。



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