表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第7章:戦国大和郷! オカンの特売戦術と天下分け目の株主総会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/240

第102話 狂戦士の海戦と、特売詰め放題のルール

 大和郷の中央と西を繋ぐ、波の穏やかな内海

 そこにある関白軍の補給港では、守備隊の兵士たちが、朝霧の向こうから迫り来る無数の船影を見て、慌ただしく鐘を鳴らしとった。


「て、敵襲だ! 西の海将、森一族の船団だぞ!」


「弓を構えろ! 奴らの水軍は陣形を重んじる! 鶴翼の陣で来るはずだ、火矢の準備を――」


 守備隊の将が指示を出し終える前に、彼の目は信じられないものを見て点になった。

 森一族と、それに続く四国勢の連合艦隊。彼らは「陣形」などという小賢しいものを完全にかなぐり捨てていた。

 横一列に並ぶどころか、すべての船が我先にと、港の防波堤めがけて「一直線のダッシュ」をかましてきとったんや。


「関白の犬ども! 我ら森一族が味わったブラックな下請けの恨み、今ここで晴らしてくれるわ!」

「我ら四国勢も続くぞ! 薩摩の兄弟分として、初太刀は譲らん! チェストォォォォォッ!!」


 かつては「船を鎖で繋ぐなど愚の骨頂!」と常識的なことを言っていた海のプロフェッショナルたちが。

 そして、四国で慎重に生きてきた猛者たちが。

 血走った目をひん剥き、船の舳先へさきに立って、完全に「薩摩の狂戦士(脳筋)」と同じ奇声を上げとる。


 ドゴォォォォンッ!!


 森一族の先頭の船が、減速することなく港の軍用防波堤に激突し、木っ端微塵に砕け散る。だが、それに乗っていた兵たちは、船が壊れる衝撃をそのまま利用して宙を舞い、関白軍の陣地へと直接斬り込んでいった。


「な、なんだあいつら! 陣形もクソもない! 船ごと突っ込んできやがった!」

「ヒィィッ! 狂っている! 逃げろぉぉっ!」


 関白軍の守備隊は、完全に常軌を逸した「狂戦士の特攻」を前に、弓を射ることも忘れて蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始めた。


===========


「……なぜだ。なぜ誰も、私の指示通りに動かないのだ……」


 連合艦隊の旗艦。その後方にある安全な甲板で、うちらの陣営にヘッドハンティングされたばかりの天才軍師・黒戸が、顔面を蒼白にして胃のあたりを強く押さえとった。


「私が徹夜で、風向きと潮の流れを計算し尽くした『完璧な鶴翼の包囲陣』の図面を渡したはずだ! なぜ全員、それを無視して嬉々として死地に突っ込んでいく!? あれではただの玉砕ではないか!」


 完璧主義の黒戸にとって、自分の美しい計算式が「気合とチェスト」という原始的な暴力で踏みにじられるのは、耐え難いストレスやった。

 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ、ヒョウ柄のポンチョをはためかせながら、胃を痛める黒戸の隣にどっかと座り込んだ。


「しゃあないわ、黒戸の兄ちゃん。あいつら、薩摩の連中と一緒にご飯食べてるうちに、すっかり『脳筋のウイルス』に感染してもうたんや。関白への恨みも溜まっとるし、今は頭より体が先に動くお年頃なんやわ」


「お年頃で済むか! あのままでは、敵の港を落とせても、こちらの船が何隻沈むか分からん! 修理費と人命の損失を考えれば、完全に大赤字だ!」


「せやな。船壊されたら、後で修理代かさむのはうちも困るわ。……ほら、兄ちゃん。これ舐めなはれ。胃に穴が開くで」


 うちはアイテムボックスから、鮮やかな黄色の「レモン味」の飴ちゃんを取り出し、黒戸の口に強引に放り込んだ。


「んぐっ……!? またこの甘露か……。……しかし、確かに、キリキリと焼け付くような胃の痛みが引いていく……」


「兄ちゃんは、前線で指揮棒振るうより、後ろで算盤そろばん弾いてる方が向いとるわ。……あいつらの手綱は、おばちゃんが引いたる。あんたはそこで、奪った物資の計算(経理)だけしといたらええねん!」


 うちは立ち上がり、舳先へと進み出た。

 そして、アイテムボックスからカイルが作った『拡声魔法の魔道具メガホン』を取り出し、それを口元に当てて、港で暴れ回る森一族と四国勢に向かって、腹の底から怒声を響かせた。


「こらーーーッ!! あんたら、ええ加減にしなはれ!!」


 おばちゃんの凄まじい怒声が、戦場の喧騒を切り裂いて港全体にビリビリと響き渡る。

 狂戦士と化していた森の長兄や四国の武将たちが、ビクッと肩を揺らして動きを止めた。


「静江殿! なぜ止める! 憎き関白の港だ、火を放ち、すべてを灰燼かいじんに帰してやる!」


「アホか! 壊したらもったいないやろが! それにな、民家や町人の店には絶対に手ぇ出したらアカンで! うちらは泥棒やない、出張鑑定に来ただけや!」


 うちはメガホンを持ったまま、港の奥にある重厚な軍用の蔵をビシッと指差した。


「よう見ときや! 関白が町の連中から巻き上げて溜め込んどる米、武器、それに火薬! あそこの『関白軍の蔵』だけが、今日からうちら連合軍の『特売の詰め放題会場』やで!!」


===========


「と、特売の……詰め放題……?」


 血走っていた武将たちの目に、ポカンとした戸惑いが浮かぶ。


「せや! 町のもんを壊すんやない! 関白の隠し財産を限界まで船に積み込んで、うちのルミナ商業ギルドに持ち帰るんや! 船に積めるだけ積んだ奴が、今日のMVP(一番手柄)や! ほら、ボサッとしてんと、さっさと米俵担がんかい! あ、ついでに町の人らにも、米一俵ずつお裾分けしたれ!」


 おばちゃんの「町民保護と節約術」が組み合わさった略奪許可が出た瞬間。

 狂戦士たちのモチベーションが、破壊から「強奪エコ」へと見事にシフトした。


「お、おおぉぉっ! 特売じゃあ! 関白の米はすべて俺たちのものだ!」


「四国の船は積載量が大きいぞ! 町の衆、安心しろ! 俺たちが頂くのは関白の蔵だけだ! ほら、あんたらにも米を分けてやる!」


 彼らは嬉々として関白軍の蔵から米俵や武具を運び出し、自分たちの船へとピラニアのように群がって積み込み始めた。

 怯えていた町民たちは、家を焼かれるどころか笑顔で米を渡され、「な、なんだこの親切な軍隊は……!」と、逆に関白軍への怒りを爆発させて、うちらの荷運びを手伝い始める始末や。


 旗艦の甲板で、胃痛が治まった天才軍師・黒戸は、その光景を見てパチパチと手元の算盤を弾いていた。


「……なるほど。無駄に血を流す破壊を防ぎ、民衆の支持(お裾分け)を得つつ、敵の兵站へいたんだけを完全に破壊する……。気合と狂気を『特売』という名で統制する、極めて理にかなった『超・合理戦術』だ。……静江殿、あなたの頭脳は、私の数式をはるかに凌駕している」


 黒戸の瞳に、冷徹な計算と、おばちゃんの「生活の知恵」への深い尊敬の念が宿り始めとる。彼もまた、この連合軍のペースに完全に染まりつつあった。


「せやろ? 使えるもんは敵の財布でも使う! けど、一般人からは絶対に奪わん! これがおばちゃんのやり方や!」


 うちはメガホンを下ろし、ガハハと笑った。

 関白への恨みと薩摩の狂気が、おばちゃんの「特売詰め放題」によって見事なエコ活動(民衆救済)へと昇華された内海の強襲戦。

 港の軍用蔵を次々と空っぽにされ、西の流通を完全に断たれた中央の関白は、いよいよ逃げ場のない「大赤字」のどん底へと追い詰められようとしとったんや。


読んでくれてありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、

作品ページ上部の【☆評価】【ブックマーク】、そして【リアクション】ボタンをポチッと押していただけるととても励みになります!


みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ