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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第7章:戦国大和郷! オカンの特売戦術と天下分け目の株主総会

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第101話 決壊する計算式と、天才軍師の敗北

 ドゴォォォォンッ!!

 アレンの全魔力を込めた一撃が、堤防の「東の角」に小さな亀裂を走らせた。

 普段なら、土嚢の壁に剣でヒビを入れたところでどうということもない。やがて、そのたった数センチの「手抜き工事の隙間」に、溜まりに溜まった何万トンという泥水の水圧が一極集中したんや。

 メキメキッ……バァァァンッ!!

 凄まじい轟音と共に、堤防の東側が丸ごと弾け飛んだ。

 閉じ込められていた泥水が、解放された野獣のように鉄砲水となって、対岸にある関白軍の本陣へと猛スピードで逆流していく。


「な、なんだと!? なぜ、あの分厚い堤防が一撃で……!」

 関白軍の本陣。小高い丘の上に陣取っていた黒衣の天才軍師・黒戸は、押し寄せる泥の津波を見て、氷のような仮面を初めて崩した。

「黒戸様! 泥水が本陣に押し寄せてきます! 逃げてください!」

「馬鹿な……! 私の計算では、あの大水圧に耐えられるよう、完璧な土嚢の配置図を引いたはずだ! なぜ、東の角だけが……!」

 パニックに陥る兵士たちを尻目に、黒戸は必死に手元の図面と算盤そろばんを弾く。だが、彼がいくら数字をこねくり回しても、押し寄せる「現実の泥水」は止まらへん。

 ザッバーーーンッ!

 丘の中腹まで泥水が押し寄せ、関白軍の陣幕や武具が次々と濁流に飲み込まれていく。

 陣形は完全に崩壊。兵たちは武器を捨てて高台へと逃げ惑い、戦どころの騒ぎやなくなってしもうた。


「……よっしゃ、特大の水抜き完了や!」

 水が引き、浅瀬になった泥の海を悠々と歩いてきたのは、うちや。

 両脇には、アレンと薩摩の若殿・久義が、いつでも斬り込めるように武器を構えとる。

「黒戸様、薩摩の軍勢が迫っております! ここは一時撤退を……!」

「退かぬ! 私の計算が、このような田舎武士の野蛮な力に負けるはずがない……!」

 黒戸が鉄張りの扇子を握りしめ、ギリッと歯を食いしばる。

 うちは泥だらけの陣地にズカズカと踏み込み、黒戸の真正面に立った。


「……あんたが引いた図面は、確かに完璧やったかもしれんわ。でもな、現場で土嚢を積んだのは、あんたの計算機やのうて、血の通った『人間』なんやで」

「人間だと……? 兵や人夫など、盤上の駒に過ぎん!」

「その駒が怒ったんや。夜通しこき使われて、自分たちの田んぼを泥水に沈められて。……だから、東の角だけわざと手を抜いた。あんたの負因は、その『生活者の怒り』を計算式に入れ忘れたことやわ」

 うちの容赦ないオカン説教が、黒戸の冷徹なプライドを根底からへし折っていく。


「感情などという不確定要素……! そんなもののために、私の完璧な策が……!」

 黒戸がワナワナと震え、膝から崩れ落ちそうになる。

 完璧主義のエリートが、自分の理解できない理屈で負けた時の、典型的な「知恵熱」の症状や。

 うちは大きくため息をつき、アイテムボックスからとびきり甘い「ハチミツ味」の飴ちゃんを取り出した。


「ほら、これ舐めなはれ。頭使いすぎて、脳みその糖分がスッカラカンになっとるわ」

「……誰が、貴様のような魔女の施しなど……んぐっ!」

 うちは強引に、黒戸の口にハチミツ飴を押し込んだ。

 濃厚な甘さが、パニックを起こしていた彼の脳細胞にジンワリと染み渡っていく。

 数秒後、黒戸の肩から余計な力が抜け、狂気を帯びていた瞳に、静かな冷静さが戻ってきた。


「……甘い。……だが、なんだ。この、視界がクリアになる感覚は……」

「気が済んだか? あんた、頭はええんやろうけど、数字ばっかり見てんと、もっと『人』を見なはれ。……うちらの会社(ルミナ・薩摩連合)に来るなら、その頭脳、もっと人の生活を豊かにするために使わせてあげるで。関白のブラック企業で、恨まれながら図面引くのはもう終わりにしなはれ」

 黒戸は、口の中の飴を転がしながら、決壊した堤防と、そこから解放されて喜ぶ高松城の兵士たちをじっと見つめた。

 やがて、彼は鉄張りの扇子をパチンと閉じ、深く、深く頭を下げた。


「……私の、完全な敗北だ。静江殿、貴女の『情と計算を織り交ぜた軍略』……いや、生活の知恵の前に、私の数字は無力だった。……この命、貴女の連合のために使わせていただこう」

「商談成立や! ほな、さっそくこのドロドロになった陣地の後片付け、あんたの頭脳で効率よく指示出したってや!」

 かくして、関白軍の最強の頭脳であった天才軍師・黒戸は、おばちゃんの「水漏れ修理」と「飴ちゃん」によって、見事に連合軍へとヘッドハンティングされた。


 西の海将(森一族)、そして天才軍師(黒戸)までをも味方につけ、西の守りを盤石にした薩摩。


「……さて。ドロドロになった土地の『水抜きと後片付け』も終わったことやし、次はこっちから攻め込む番やな。関白の喉元である『内海』の港、全部うちらで買い取らせてもらうで!」


 おばちゃんの号令のもと、かつて関白のブラック企業に泣かされた西の海賊たちと四国の猛者たちによる、血沸き肉躍る『大逆襲の特売セール』が、いよいよ怒涛の幕を開けようとしとったんや。


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