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序章:「"ナーロッパ"の始まり」

本来、土地に名前はない。

また、誰のものでもない。


後に"ナーロッパ大陸"と呼ばれるその土地も、

かつては誰のものでもない、無名の陸地に過ぎなかった。


歴史とは、人々がその土地を名づけ、呼び、書き残したときから始まる。


文字記録に依らず、人々の生活痕から実像を探る試みは、考古学の領域である。

その点から言えば、先史時代にも人々の生活は確認され、数々の遺跡が存在する。


しかし、後世「ダンジョン」と呼ばれるようになったそれらの遺跡の多くは、冒険の名のもとに収奪された。

その結果、先史時代の考古学的記録は、現在ほとんど失われている。


ナーロッパの歴史を最初に文字として書き残したのは、「イダル人」という人々だった。


イダル人は、ナーロッパ大陸の東方に位置する旧大陸から渡来した海洋交易民である。

新天地に上陸した彼らは、海を基盤とする生活を捨てることなく、沿岸部に次々と植民都市を建設していった。


"ナーロッパ"の語源には、2つの説が存在する。


ひとつは、この大陸に最初に上陸した女神「ネウロペ」から名づけられたとする説。


もうひとつは、植民都市のひとつ、「ルーパ」に由来するという説である。

「ルーパ」という名前の都市は、旧大陸にも複数存在したため、それらと区別するために「ネオ(新しい)ルーパ」と呼ばれていた。

それが転じた結果であるというものである。


いずれにせよ、後世に残されたのはイダル人の言葉であった。



ナーロッパの歴史は、東から渡来したイダル人と、原住民との対立の歴史ともいえる。


原住民たちは製鉄技術を持たず、青銅製の武器を用いていた。

また、ナーロッパ大陸にはウマが生息しておらず、全ての兵士は純粋な歩兵であった。


対してイダル人は、優れた製鉄技術を有し、旧大陸から持ち込んだウマと戦車(チャリオット)を戦場に投入した。


その軍事的優位性は明白であり、

大陸はやがて、鉄と車輪によって支配されることとなる。

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