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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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問19 優しさが壊れてしまうのはどんなとき?

作者: 小桃 綾
掲載日:2025/08/31

心に残る言葉②を書いてて思い付きました。

 炊飯器の炊き上がりの音でいつものように目が覚めた。


 炊飯器の予約は5時55分、スマホの目覚ましは6時ちょうどにして保険にしている。目覚めは良い方で起きてすぐに準備ルーティンをこなしていく。


 もうすぐ07時30分。出勤の時間なのでテレビを消すためにリモコンを持った。


 『次のニュースです。本日から施行される"小桃に優しくする法"、違反したものは』


 テレビを消してから、何か変な言葉が聞こえた気がした。

 「小さい桃を優しく育てるのかな? 変な法律が出来たんだね」

 大して気にもせず、私は玄関のドアを開けた。



 目の前にスーツ姿の男性が立っている。だれ?


「小桃様、おはようございます。職場までお送りします」


 男性が執事っぽく挨拶をして背後の道路に手を向けると、そこには1台の車が停まっていた。

 真っ黒な車。普通の人が乗ってはいけない車というか、威圧感を感じる車だ。

 その車の横には別の男性が立ち、後部座席のドアを開けて待っている。


「何? 何でこんなことになってるの?」


「お仕事に遅れてしまいます。説明は車の中でさせていただけないでしょうか」


 男性が車に乗るよう促してくるが、職場は家から歩いて5分ほどのスーパーだから車も徒歩もそれほど大差ない。

 でも、「車に乗ってほしい」と男性が必死に訴えるため、私は男性に従って車に乗り込んだ。

 車の中には男性2人と私。そして車の周りには近所の人たちが大勢いて、みんなが笑顔でこちらを見ている。

 この状況で拉致監禁は流石にないでしょ?



 走る車の中で今日から施行された法律について教えてもらった。


 私に優しくする法律。


 一体なんの冗談かと思ったが本当らしい。宝くじが当たったような感じ? 取り敢えず夢みたいだと喜んでいいっぽい。職場に到着し、送ってくれた男性にお礼を言って車を降りる。

 男性二人とも安心したように笑顔を返してくれた。



 職場に着いたものの丸一日何もしなかった。というか出来なかった。

 レジの準備も、品出しも、掃除も、何もかも「小桃様は休んでいてください」と言われて手が出せなかった。挙げ句には店長から「休憩室でお茶飲んでてください」と言われた。

 結局、出勤してお昼を食べて退勤した。タイムカードは私が見ている前で店長が切った。普通に出勤扱いで。

 居心地の悪さを感じながら外に出ると、目の前には朝も見た黒塗りの車が停まっていた。



「小桃様、お疲れ様でした。家までお送りします」


 朝に送ってくれた男性二人が車の前で待っていた。

 一日何もしなかった罪悪感から車に乗る気持ちが起きなかった。乗せてもらうのが申し訳ないと思ったから。「乗ってほしい」としつこくお願いされたが、断って家へ歩き始めた。

 晩ごはんをどうするか考えながら歩いていると、後ろの方で小さく乾いた音が2回聞こえた。

 風船でも割れたかな?

 私は振り返りもせず、晩ごはんのことを考えていた。



 晩ごはんはパンに決定。サラダやスープは家にあるもので作れるから、帰り道にあるパン屋に寄ろう。

 このパン屋、パンは美味しいんだけど……いつもいる男性店員がやたらと胸を見てくるのが困る。それさえなければ好きなお店なのに。

 あれ? いつもいる店員じゃない人がいる。まぁいいや、買い物済ませようっと。


 レジに持っていくと店員に笑顔で言われた。


「今日から私が対応します。前の店員はもういませんので安心してご利用くださいね」


「? はい、ありがとうございます」


 よく分からないが、買い物が終わったのでお店を出た。



 自宅に入ってしばらくするとインターホンが鳴った。

 それほど遅い時間でもないし、荷物の配達だろうか。玄関に向かいレンズを覗くと知らない男性が一人で立っていた。チェーンロックを掛けたままドアを開けた。


「小桃様。一人で寂しくないですか? 一緒に晩ごはん食べませんか?」


 イキナリの言葉に驚いた。初対面の人が言う言葉ではないと思う。ムカついたのですぐ返答した。


「結構です。困るので帰ってください」


 言った瞬間に乾いた音が聞こえ、目の前にいた男性の頭の横に赤い花が咲いた。咲いたと同時に男性は倒れたのでよく見えなかったが。

 私の服にも何かが掛かった気がする。それを見ようとすると急に女性の声が聞こえた。


「小桃様。この男は小桃様を困らせたので処分(・・)しました。どうぞお気になさらずお休みください」


 ドアの前に立つ女性の言葉が分からず下を見ると、今さっき喋っていたモノ(・・)が赤い水溜りを作っていた。


「……うっぷ!」


 見えたことを理解した瞬間吐き気を催し、ドアを閉めてトイレに駆け込んだ。



 長い時間トイレに篭っていたが、少し落ち着いたので出ることが出来た。何かが付いたと思う服は見ないようにして洗濯機に放り込んだ。


 着替えてベッドに座り込むと、外から声が聞こえてきた。


「小桃様はオレが幸せにするんだ!」

「いいや! オレが幸せにしてや」


パン! パン!


 窓を開けて外を見ると、さっき玄関にいた女性が声を掛けてきた。


「小桃様。騒がしいと休めないでしょうから処分しました」


 窓を閉めてベッドに乗り、毛布を頭から被る。


 夢なんでしょ? 早く覚めてよ


 帰宅したばかりで翌日の炊飯器はセットしていなかった。

 書けなかったお題:優しさが壊れてしまうのはどんなとき? はこれでクリアできたはず。


 頑張ればホラー書けるんですっ!

 ごめんなさい嘘ですもう書けません(半泣き)

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― 新着の感想 ―
てっきり、最後には誰もいなくなり、女性が拳銃自殺して終わりってオチかと思いました。
これは、何時ぞやからニュースで見掛けるようになった忖度!? コワいはコワいがホラー的ではなくブラックユーモア? 慣れれば案外楽しめる可能性はあるけど、ある日突然手の平返しの可能性もあるから、それはそれ…
幽霊とか怪異なら『そんなものいないし!』と思うこともできるけど、生身の人間の『善意の暴走』ってのは実際にあり得そうですから、余計に怖いですね。 苦手ジャンルへのチャレンジ、お疲れ様でした。面白かった…
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