問19 優しさが壊れてしまうのはどんなとき?
心に残る言葉②を書いてて思い付きました。
炊飯器の炊き上がりの音でいつものように目が覚めた。
炊飯器の予約は5時55分、スマホの目覚ましは6時ちょうどにして保険にしている。目覚めは良い方で起きてすぐに準備ルーティンをこなしていく。
もうすぐ07時30分。出勤の時間なのでテレビを消すためにリモコンを持った。
『次のニュースです。本日から施行される"小桃に優しくする法"、違反したものは』
テレビを消してから、何か変な言葉が聞こえた気がした。
「小さい桃を優しく育てるのかな? 変な法律が出来たんだね」
大して気にもせず、私は玄関のドアを開けた。
目の前にスーツ姿の男性が立っている。だれ?
「小桃様、おはようございます。職場までお送りします」
男性が執事っぽく挨拶をして背後の道路に手を向けると、そこには1台の車が停まっていた。
真っ黒な車。普通の人が乗ってはいけない車というか、威圧感を感じる車だ。
その車の横には別の男性が立ち、後部座席のドアを開けて待っている。
「何? 何でこんなことになってるの?」
「お仕事に遅れてしまいます。説明は車の中でさせていただけないでしょうか」
男性が車に乗るよう促してくるが、職場は家から歩いて5分ほどのスーパーだから車も徒歩もそれほど大差ない。
でも、「車に乗ってほしい」と男性が必死に訴えるため、私は男性に従って車に乗り込んだ。
車の中には男性2人と私。そして車の周りには近所の人たちが大勢いて、みんなが笑顔でこちらを見ている。
この状況で拉致監禁は流石にないでしょ?
走る車の中で今日から施行された法律について教えてもらった。
私に優しくする法律。
一体なんの冗談かと思ったが本当らしい。宝くじが当たったような感じ? 取り敢えず夢みたいだと喜んでいいっぽい。職場に到着し、送ってくれた男性にお礼を言って車を降りる。
男性二人とも安心したように笑顔を返してくれた。
職場に着いたものの丸一日何もしなかった。というか出来なかった。
レジの準備も、品出しも、掃除も、何もかも「小桃様は休んでいてください」と言われて手が出せなかった。挙げ句には店長から「休憩室でお茶飲んでてください」と言われた。
結局、出勤してお昼を食べて退勤した。タイムカードは私が見ている前で店長が切った。普通に出勤扱いで。
居心地の悪さを感じながら外に出ると、目の前には朝も見た黒塗りの車が停まっていた。
「小桃様、お疲れ様でした。家までお送りします」
朝に送ってくれた男性二人が車の前で待っていた。
一日何もしなかった罪悪感から車に乗る気持ちが起きなかった。乗せてもらうのが申し訳ないと思ったから。「乗ってほしい」としつこくお願いされたが、断って家へ歩き始めた。
晩ごはんをどうするか考えながら歩いていると、後ろの方で小さく乾いた音が2回聞こえた。
風船でも割れたかな?
私は振り返りもせず、晩ごはんのことを考えていた。
晩ごはんはパンに決定。サラダやスープは家にあるもので作れるから、帰り道にあるパン屋に寄ろう。
このパン屋、パンは美味しいんだけど……いつもいる男性店員がやたらと胸を見てくるのが困る。それさえなければ好きなお店なのに。
あれ? いつもいる店員じゃない人がいる。まぁいいや、買い物済ませようっと。
レジに持っていくと店員に笑顔で言われた。
「今日から私が対応します。前の店員はもういませんので安心してご利用くださいね」
「? はい、ありがとうございます」
よく分からないが、買い物が終わったのでお店を出た。
自宅に入ってしばらくするとインターホンが鳴った。
それほど遅い時間でもないし、荷物の配達だろうか。玄関に向かいレンズを覗くと知らない男性が一人で立っていた。チェーンロックを掛けたままドアを開けた。
「小桃様。一人で寂しくないですか? 一緒に晩ごはん食べませんか?」
イキナリの言葉に驚いた。初対面の人が言う言葉ではないと思う。ムカついたのですぐ返答した。
「結構です。困るので帰ってください」
言った瞬間に乾いた音が聞こえ、目の前にいた男性の頭の横に赤い花が咲いた。咲いたと同時に男性は倒れたのでよく見えなかったが。
私の服にも何かが掛かった気がする。それを見ようとすると急に女性の声が聞こえた。
「小桃様。この男は小桃様を困らせたので処分しました。どうぞお気になさらずお休みください」
ドアの前に立つ女性の言葉が分からず下を見ると、今さっき喋っていたモノが赤い水溜りを作っていた。
「……うっぷ!」
見えたことを理解した瞬間吐き気を催し、ドアを閉めてトイレに駆け込んだ。
長い時間トイレに篭っていたが、少し落ち着いたので出ることが出来た。何かが付いたと思う服は見ないようにして洗濯機に放り込んだ。
着替えてベッドに座り込むと、外から声が聞こえてきた。
「小桃様はオレが幸せにするんだ!」
「いいや! オレが幸せにしてや」
パン! パン!
窓を開けて外を見ると、さっき玄関にいた女性が声を掛けてきた。
「小桃様。騒がしいと休めないでしょうから処分しました」
窓を閉めてベッドに乗り、毛布を頭から被る。
夢なんでしょ? 早く覚めてよ
帰宅したばかりで翌日の炊飯器はセットしていなかった。
書けなかったお題:優しさが壊れてしまうのはどんなとき? はこれでクリアできたはず。
頑張ればホラー書けるんですっ!
ごめんなさい嘘ですもう書けません(半泣き)




