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魔術寄生体マギアクネ  作者: ゆじゅき
第2章 森の中の魔女 じょるの奮闘編
22/23

第20話 【森の中の巨大樹】

第11.5話 【集落生活??日目】ラストの(じょるの視点)から話が繋がっています。


ゴブリンに頭を割られ、知らない場所で目覚めたじょるのは今。

部屋に入ってきた女の後を追い、部屋の外へと出ていた。


部屋を出た先は豪邸とかでよく見る廊下。

床は白と黒の市松模様で、壁には鈴蘭みたいに先端が垂れさがった照明が一定間隔でつけられている。


(長くないか?この廊下...)


部屋に入ってきた平和の魔女と名乗る女が「ついてきたまえ」とか、言うのでとりあえず女の先導について行っているのはいいのだが、時折廊下の途中の扉から「ぶっ殺すぞ!!」とか「お粗末な脳みそしやがってッ!!樹木の肥料にした方がましかぁ!?あぁんッ!!」とか「今日こそ二人っきりでお話ししましょうまずは先月の掃除当番のさぼりについてです(肉体言語)」「ま、まって、会話する場所選ばせてくれるってッ!!だから僕顔が良いって言って」「だから腹と会話するんでしょう?」「ぐぼぁッ!?」なんて打撃音が響いてきたり、もはや恐怖しか感じない。


(何処連れてかれるんだろ....今の所敵意はなさそうだけど)


なんとなくだが、目の前のお姉さんは自分を殺そうとかは考えていないような気がした。

ただ、別に味方って訳でもない...じょるのの中の総称だと、なんか変な人だ。


「悪いね、怪我人をいきなり動かしてしまって」


「あー...別に大丈夫っす」


「まあここで一番偉い()()()が直々に案内しているんだ、それで勘弁しておくれ」


「.....はい(....少女、か?)」


「全治四か月だよ」


「え?」


「今頭に浮かべた言葉を口にしたら、ね」


「...はは...(怖ッ)」


目が全く笑っていなかった。

けど正直少女はちょっと厳しいような?身長はじょるの(168㎝)と同じか少し下、見た目も胸も少女って感じの大きさじゃないし、服も大人っぽい。

それに一番少女に見えないのは、物憂げで優しそうな姉感あふれた顔つきだろう、それとお姉さん感がある落ち着いた声音も原因と見える。

ロリコン野郎の観察眼は今日もとても鋭く冴えわたっているようで、美少女を否定する材料を見つけまくっていた。


「さて、ここだ」


廊下を歩き続けてたどり着いた先は道中合った扉と同じもので、目の前の美少女姉さんが開けるとそこは、中央が吹き抜け、長い二重螺旋の階段下まで続いていた。

ここはその階段の最上階でぐるっと一周吹き抜けを囲むように円状に廊下が続いている。

最上階には時計と同じように12か所の扉があり、今じょるのたちが出てきたのは時計で表すと9時の部屋だ。


「なかなか立派だろう?」


「まあ、な...てかこれ何人住みの家だよ」


「大体100人くらいだね」


「100ッ!?」


逃げ出すには絶望的な数字に愕然とする。


「この時間帯は静かでいいね、普段は騒がしいものさ――さて、ここが私の部屋だ」


ピスケスはそのまま廊下を歩き向かったのは12番目の部屋。

他の部屋に比べて扉の装飾が豪華だ。


中はもはや部屋じゃない。

開けた先に広がるのは無数の本棚、そして地面の至る所に何かを走り書きした紙が貼られていたり、床に落ちていたり、空き瓶がそこら中に散らばっている。


(ちょっとだけ、ほんの少しだけ期待した俺の気持ちを返せッ...こんなのただのダメ女と図書館のコラボレーションじゃねぇかッ!!)


本棚の奥の奥には、荷物を踏み越えたその先には本棚と比べるとかなり小さめな木製の机、そこに椅子が二つ机を挟んでおいてある。


「座って待っていてくれ、今紅茶をもってこよう」


「...はい」


そう言って数分後ピスケスはお盆にティーカップとティーポッド、名前は知らないが他にも何か色々と機材を持ってきていた。

結構ちゃんとした紅茶らしい。


(正直インスタントで十分...高い味とかよくわからないし...)


温度計っぽいもので何かを図って、目の前で丁寧に紅茶を入れていくピスケス。

そして、数分で出来たその紅茶をじょるのの目の前にすっと差し出した。


「どうぞ」


「...ありがとう、ございます」


目の前に出された紅茶は、コンビニとかでよく見る茜色で匂いは少しさわやかな感じ(多分)。

出された手前飲まないのも失礼なので、ひとまず一口いただいた。


(.....うん、苦い、砂糖がほしい)


「どうかな?弟子には、上達した、と褒められたんだがね」


「...えっと...結構なお手前で...」


正直味の良しあしは全然わからない、感想を求められても丁寧に答えることができない。


(なんか苦くてさっぱりしてたような、こうマイルド?な感じ?わかんないけど....)


結果的に「それはよかった」となんか目の前のお姉さんは満足そうで、じょるのは納得してるしまあいいか、と流した。


「さて、本題に入ろう。私は君に聞きたいことがいくつもあるんだが...君も私に聞きたいことがあるだろう?」


「...えと、まあはい」


「だからここはフェアにいこうじゃないか、お互い交互に質問していく。ただ一つルールを設けたい」


「ルールっすか?」


「ああ、ルールはただ一つ、嘘をつかないこと、だ。ただどうしても答えられないことを、黙秘する、のはアリとしよう。どうだい?簡単だろう?」


そう言って机に置いたのは黄金の天秤、金色のチェーンから垂れさがっている秤は、平衡を保っている。


「実はこれは友人に作らせたものでね、嘘がすぐに分かる優れモノなんだ」


「.....なるほど...」


纏めると、嘘をつくのは禁止、黙秘するのはオッケーってこと。

正直あんまりこういった条件付きの問答は得意じゃない、じょるのは言っちゃいけない事とか良くわかっておらず、頭をひねる。

基本的にこういう頭使うのは悠月が担当するべき案件だ、女性と喋るのも苦手なじょるのに交渉事などできるはずもない。


正直、問答自体断りたい、というのがじょるのの本音だった。


(下手なこと口にしたら絶対あとで悠月に怒られる......どうすっかな...)


「できればあまり無駄な事に時間は割きたくない性分でね、どうだろう?」


「え...あー...そうっすね...ちょ、ちょっと考えさせてもらっても?...」


情報は欲しいけど、できれば悠月が助けに来るまで時間を稼いだ方が安牌ではある。

それに自身が交渉事が苦手であることを考えれば、断るのが妥当だ。


「あの...申し訳ないんすけど――」


「――ちなみに、だが、君は今いうなれば捕虜の身だ。これが客人になるか奴隷になるかは、君の持つ情報しだいだよ。.....まあ、私にここまでさせて何も喋らないなんて不敬なこと、私の可愛い弟子たちがどう思うか、は...想像に難くないよね」


断ろうとした瞬間ピスケスが、言葉を重ねてそんな恐ろしいことを捲し立てて、ニコッと微笑んだ。

じょるのは出しかけた言葉を飲み込み、負けを認めるように細い声音をこぼす。


「...やらせて、いただきます」


「そう、それはよかったよ。私もこうして至福の時間を共有した君の解体(バラ)された姿は見たくないからね」


やばいなこの女、普通に怖い。

じょるのの精神がすでに負けを宣言していた。


(まあ...こんな状況なら仕方ないよな?...多少情報漏らしても....悠月許してくれ...)


「じゃあまず私から、君はどうやってこの森に入ったのかな?」


森に入った、森に入った?....じょるのには森の中に入った覚えがない。

唯一、森に入ったと言われたら、異世界に来たばっかりの時、確かにあの美しい平原から森の中に入った。


「え、普通に歩いてだけど?」


「.......ちなみに君は私、【平和の魔女】を知っているかい?」


「いや、知らないっす」


天秤はうんともすんとも言わず、ただ均衡を保ち続けてる。

つまり嘘はない。


(フォグ帝国の刺客の線は消えたか...)


内心ほっとしたピスケスだが、それをおくびにも出さず静かに紅茶を喉に流し、息を吐く。


「ふむ、私を狙って侵入したわけでもなく、ただ迷い込んだだけ、ということかな?」


侵入って言われるとそれは違う、とじょるのは声を大にして言える。

けれど、森の中に迷い込んだってのも何か違う気がした。

なにせじょるの達は気づいたら森の中にいたのだ。


「どうなんだい?」


「.....ん~?」


ここで迷い込んだという回答に、はい、って答えたら多分嘘って感じになる。

けど正直に答えるとなると、まず異世界の話からしなきゃいけない。

さすがにこれを話せば悠月に本気で怒られるのは、目に見えていた。


「まあ...そう、かも?」


「ちなみに、君はあまり腹芸は得意ではないようだから善意で教えるが、君自身を殺すのは勿体ない、そう私に思わせないと君の命は保証できないよ」


「...なるほどぉ...」


冷や汗をだらだらとこぼしながらじょるのはあたまをめぐらす。


(どうっすかなぁ...)


いや、そもそも異世界人であることって隠す必要があるのだろうか、言った所で自分たちに損てあったりするだろうか?


(もしかしたら、異世界人は禁忌の存在的な?見つけたら即殺せ、的な感じだったら終わりだなぁ...)


別に無理に隠す必要性もないが言う必要性も感じない。

もしかしたら悠月には何か考えがある可能性があるし、怒らせると怖いので、とりあえずは――


「...いったん黙秘で」


「.....まあいいよ、じゃあ――次は君に譲ろう」


回ってきた質問権、とはいえ何を聞けばいいのか。

本音で言えば、今一番知りたいのは悠月の安否。

もしかしたら、自分と同じように捕まっている可能性もある――が、そんな質問をしてしまえば、こいつらが悠月のことを知らなかったら、もう一人悠月という人間がこの森にいることを教えることになってしまう。


どちらをとるべきか、考えに考えて....


まあ無難な事でも聞いておくことにした。


「...ここはどこだ、ですか?それに、あんたは...俺をどうするつもりで捕らえたんだ?」


「二つだね、まあいいよ。簡単な質問だ、ここは私たち【平和】が属する魔術師の拠点であり、実験場でもある。本来絶対に立ち入れないようにしているこの実験場に、いきなり君達が現れた、そりゃ捕らえるだろう?」


なるほど、つまりどうやってこの場所に侵入したのか聞きたいってことだろう。

ただ問題があるとすれば、カラオケで酔っ払って気づいたらこの森にいた、なんて正直に言った所で信じてもらえるだろうか...


「あー...っと...これまでに、俺ら以外に侵入者はいたりとかする?」


「実は本当に稀にあるんだがね。そういうケースも、ただその場所には監視を置いている、だから君たちがその稀を起こして侵入したわけじゃないことは知ってるよ」


(もうやだ帰りたい)


他の侵入者の侵入方法次第でごまかせると思ったのに、それは容赦なく上から封殺されてしまった。


(これどうしようもなくない?隠すの無理だって...下手したら殺されるし......悠月ヘルプッ!!)


助けを願っても悠月は助けに来ない。

自分でどうにかするしかないが....


「ちなみにその侵入者は...どうなった感じで?」


「聞かない方がいいと思うけど?」


「...辞めときます」


もうただのヤクザじゃん。

ピスケスのほっこりとした笑み、確実にコンクリ抱かせて海に沈めている笑顔だ。


「じゃあ、君はどの国出身かな?」


「.....黙秘で...」


「そうか、ならこの森に来た理由は?」


「...えっと理由は特になく、まじで知らないうちに...まぁ、気づいたらここにいました」


(...嘘はない、か...)


黄金の天秤は一切揺れることはなく均衡を保っている。


(本当に迷い込んだだけ?ならなぜ出身を言えない?...意味が分からんな、彼にとって黙秘することによる得なんてないはずだが......まさか魔族?...いや、魔気の波長があまりにも人間のそれだ、それはない、ならば――)


ピスケスは熟考しながら、今ある情報からいくつかの結論を浮かべ、消して、浮かべ、また消して――そんな思考回数を繰り返し、結論は....出なかった。


(...私の理外の外?...実験の失敗でここに飛ばされてきた――であるならば相当な外法に手を染めた?...魔女に実験先の国を知られたくない?...ふーむ....さすがに根拠が薄いな...)


圧倒的に情報が足りない、だが目の前の男は明らかに交渉が苦手だ。


(私に与えていい情報と与えてはいけない情報、多少情報を与えてでも引き出すべき情報を推し量れていない)


ただそういったこと交渉事が苦手なのは自覚しているので、とりあえず全部黙っている、といった感じだ。


(まぁいい...それは後々でいいだろう、今は敵意がなくフォグ帝国の刺客ではないことを確認できた。それで十分....ただ、何かを隠してはいるんだろうがね...)


一度カップに口をつけるとピスケスはふっと静かに笑い、したたかに手を叩いた。


「今日はこれくらいにしておこうか――レーヴァ」


「はいピスケス様」


「ッ!?」


ピスケスが誰かの名前を読んだ瞬間、じょるの後ろから声が聞こえ慌てて振り返る。

じょるの後ろにはいつの間にかメイド服を着た女が立っていた。

金髪のロングヘアーで、なぜか手には銀色に鈍く光るナイフを握っている。


(いつから立ってたんだ?...あれ、てかこいつ...俺のこと殺す気だった!?嘘ついたらナイフで殺る気だったッ!?)


一応、天秤が本当に発動するのかどうなのか疑いもせずに、どうせ意味ないなら、と一度も嘘をつかなかったことが功を奏したようだ。


「彼を部屋まで案内してあげておくれ」


「承知いたしました」


ピスケスの言葉に礼儀正しく一礼を返したレーヴァ、気づけばその手に持っていたナイフが姿を消していた。

不思議そうに、魔法だろうか?、なんてまじまじとレーヴァの手を見ていると、ピスケスに声を掛けられる。


「じょるの君、また明日これくらいの時間に話をしよう。今日の残りの時間は好きに過ごしてくれたまえ」


「え、ああ...分かった...」


どうやら、とりあえず今日一日は生かしておいてもらえることになったようだ。


「ついてきなさい」


メイドがまるでゴミでも見るかのように冷たくそう吐き捨てると、すたすたと速足で部屋の出口まで歩いて行ってしまった。


その後ろ姿にじょるのは席を立ち、慌てて後を追いかけた。


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