第11.5話 【集落生活??日目】
じょるの視点のお話となります。次の話が同じ日付の悠月視点のお話となりますので、少々お待ちください。
集落生活7日目(じょるの視点)
ついに悠月がおかしくなった。
「君はミツキちゃん、それで君はユイちゃんだ!」
朝目が覚めたら、小さな木製の机の上にレモン味の飴玉と、桃味の飴玉を並べて悠月が名前を付けていた。
しかもその名前が、ユイとミツキ、両方とも自分の名前の悠月の要素を入れているガチの命名。
まるで我が子につけるみたいに名前をつけていて、じょるのはもはや恐怖を感じていた。
(マジで頭おかしくなった....)
いつだろうか...あれか、オークに頭ぶん殴られた時か?それとも一昨日のレモン味事件の時か?...
あ、一昨日俺が大丈夫って言って食べさせた新種の果物の件か?
あの後悠月が腹壊したのは申し訳なかったけど、俺は普通に食べれたんだよなぁ...
じょるのが頭の中で原因を考えると、考えれば考えるほど可哀想という言葉しか浮かんでこない。
(すまねぇ、俺が負担をかけたばっかりに...)
強くならなくては、ただでさえ元から頭おかしいのに、こいつをこれ以上おかしくしてたまるか。
「.....」
言葉はかけない、狂わなくても、じょるのがいれば大丈夫だって、そう悠月に思わせて見せる。
今はただ、訓練を続けよう実力で示せるようになるまで。
決して声をかけるのが少し怖かったとかじゃないぞ、断じて違う。
より一層強い気持ちを胸にじょるのは外に出た。
集落生活8日目
昨日の朝から夜まで、訓練中ですら肌身離さず悠月は飴玉2つと語り合っていた。
「それでまぁ昔ビンタされてさぁ、いや確かに俺も悪かったけど、それでもあっちだって悪いと思うよね?」
今は晩飯時、焚火の前に座り果物を食いながら昔の、中学生時代の話に花咲かせているようだ。
(やばい、こいつ本格的に狂い始めた...)
もはや何故だろう。
飴玉すら言葉をかけ続けられて困惑しているように見える。
「ゆ、悠月、俺先寝るけど...お前は」
「あぁじょる、先寝てていいよ。俺は2人と話があるからさ」
「2人、ね...」
悠月には一体何が見えているのだろう、そこには二つの飴玉が転がっているだけだ。
なんだかんだ付き合いの長かった悠月、こいつの考えとか行動はかなり分かってるつもりだったけど...
今のこいつは何を考えてるのか全く分からない、未知の生物へと変化した。
(明日には普通に戻ってるといいが...)
集落生活9日〜14日目
一度悠月の事は見て見ぬふりをして、じょるのはこの一週間ひたすら弓の練習を続けていた。
今日も同じように弓を持って森に入ろうとしていた時、悠月が何かを持って駆けてきた。
「じょる、これ着てきなよ!」
「え、なにこれ」
渡されたのは緑を基調とした革製の鎧。
伸縮性は高いが少し重たい。
「その弓の持ち主が来てた装備、お前が着てきた服もうボロボロだろ?それは寝巻きにして弓の訓練中はこれ使いな」
「えー、まあ...じゃあそうする」
「うん、ユイもミツキもきっと似合うって言ってるぞ!」
「.....」
「.....」
いや絶対言ってない、というか無言だ。
昼間は果物を取りに行く道中、茂みに隠れながらゴブリンを狩り続けた。
レベル上げ兼弓の練習にちょうどいいが、あくまで狙うのは単体だ。
2対以上でいる場合は絶対に手を出さないようにしてる、悠月に怒られるからな。
(今のおかしくなってるあいつが怒るかは分かんないけど)
最近は結構手慣れてきて、1日のうちに8体くらい、それに3日に1回はオークを狩れるようになってきた。
それで最近、ゴブリンやオーク退治中たまに、クリティカルみたいな現象が起きることがある。
ゴブリンを狙う時は一応首を狙ってる。
首に刺さった時、大体のゴブリンは絶叫してのたうち回って、そのあと毒が回って失神する、これが普通だ。
ただ稀に全くピクリとも動かず、刺さった瞬間にそのままパタリと地面に倒れて気絶するゴブリンがいる。
他のゴブリンと見た目に違いはない。
(もしかしたらステータスがすごい弱い雑魚ゴブリンだったりするのか?...んー、分からん)
なんだろこれ、と不思議に思いつつ意図的に毎回起こせないかと色々と試してはいるが、上手くいかない。
例えば矢につける毒の量をめっちゃ念入りに増やしてみたりとか...
特に通常時と違いはなかったけど。
そんな風に色々試しながら毎日が終わっていく...
そしてじょるのは、ゲームでもたまに起こる、会心の一撃、的な奴だと納得した。
集落生活15日目
いつもの日課を終え、今日は果物とオークの肉(太もも)二つを持って集落に帰ってきた。
もうこの生活にも慣れたもので、じょるのも最近はほとんどゴブリンやオークにたいする誤射やミスがなくなってきた。
もはや、一番最初の森探索時、先制攻撃をミスってゴブリン一匹に追いかけまわされたのはいい思い出だ。
いつも通り森探索後、レベルやステータスの確認のためにステータス用紙を見てみると――ついに出現していた。
「弓術スキルッ...よしッ!」
飽き性で部活もさぼってばっかだった俺にしては結構がんばった、と内心自分で自分を褒めてやる。
まあ日本と違って頑張らなきゃマジで死ぬってのが一番の要因だったとは思う、あと悠月の脅し。
「おい悠月!見てくれよ!やっとスキルがッ.....!?」
寝所に飛び込むように中に入ると、その光景にじょるのの足が止まった。
「いただきます」
悠月があんなに大事にしてたミツキ(レモン味の飴玉)に拝むように両手を合わせ、持ち上げると口の中に入れた。
そしてそのまま「ゴクッ」と喉を動かし丸薬でも飲むかのようにミツキを丸飲みにした。
「ゆ、悠月、お前...何して」
そのまま流れるような手つきでユイ(桃味の飴玉)を持ち上げると、そのまま口の中に放り込んだ。
先ほどのミツキと同じように「ゴクッ」と喉を鳴らした悠月が飴玉を丸のみしていた。
「ん...お、じょるの、どうかしたのか?」
「いやどうかしたかって...お前大丈夫か?正気か?」
「?俺はいつだって正気だが?それよりどうしたんだよ?」
正気ならまぁいいよな?というか怖いからもう触れたくない。
正気に戻って、いかれた悠月からいつものやばい悠月に戻ったならもうそれでいいや、とじょるのは臭い物に蓋をする精神で、触れないことを決めた。
「いや...ま、それならいいんだ...それよりも、弓術スキルをやっと取得したぞッ!」
「やるじゃん!よしよし!なら...そろそろ本格的に森からの脱出も考えられそうだな!」
「ついに!やっとか!長かったぞこの半月!」
「今日から1週間森の探索をして、できれば人が住んでる町か集落を見つけたい」
「おけおけ、ついでに弓の練習もすりゃいいんだな?」
「ああ、それとゴブリンの角とかオークの毛皮とか素材を集めときたい、町に着いたら金がいるからな」
「はいよ、ちなみに悠月は槍術入手した?」
「あぁ2日前にな」
「言えよ!」
なんて言ってはみたものの、こいつ頭おかしくなってたからなぁ。
日課の訓練と柔軟は絶対に欠かさずやっていたから、必要以上に俺も触れなかったし、触れたくなかったし。
(てかこいつもう大丈夫なのか?)
ユイとミツキがただの飴だって気づいたのは良いんだけど...一応、娘みたいに扱ってた飴玉を普通食べるか?
んー、今なら聞いてもいいんだけど...
(まあ、まともになったならいいか)
ちょっとした疑惑は今だに胸の内に残っているが、やっとこの森から抜け出して異世界を旅できる。
(ケモ耳はやっぱ外せないよなぁ)
そんな胸の内の昂りがちょっとした疑惑を消してしまった。
集落生活1?日目.....いや??日目...
だったような...
(...あれ?どうして俺こんな所に...)
目を開けてみれば全く知らない場所、妙に生活感のある部屋、そのベッドでじょるのは目を覚ました。
部屋はとても優しい木の匂いがして、実際部屋のほとんどが木製の作りになっている。
ベッドのすぐそばに建てつけられた窓からは、何度か取りに行った覚えのある果樹園が目に入った。
(何処だ、ここ...え?マジでどこ...ッ頭痛ぇ...)
ベッドから立ち上がると気づくのは頭に巻かれた包帯に謎の鋭い痛み、服も上下茶色の質素な服を着せられていた。
サイズは少しでかくてダボダボだ。
(なんでこんな所...いや、てか悠月は!?...)
悠月も服も荷物も何処にも部屋には見当たらない。
時分が愛用していた骨の弓すら何処にも置いていない。
(.....やばいな、本当にどうなってるんだこれ)
確かいつも通り集落で弓の訓練して、体を洗うついでに川で水泳して、確かそのあと一度集落に戻ったら...
女がいた。
(そうだ、思い出した!あの黒髪貧乳女!)
大柄なゴブリンや、色違いのゴブリン達を従えていたあの褐色肌の女。
あいつらに襲われて、確かあの紫のデカゴブリンにぶん殴られて...そこから思い出せない。
(ゴブリン共の巣って訳じゃないだろうし...多分敵の拠点のどこか?さて...どう逃げっかな)
悠月のことだ、自分と同じように捕まってる、ってことはあんまり考えなくていいだろう。
捕まってても正直一人でどうにか逃げ出したりしてそうだし。
なんだったら助けが来るのを待っててもいいだろうか?合流して悠月と意思の疎通とった方が格段に安心できる。
(ま、外だけ確認してみるか...)
部屋から出るための扉には小さな小窓ついており、そこからそっとじょるのが顔を覗かせる外の様子を確認すると、ベストタイミングと言うべきかバッドタイミングと言うべきか、ちょうどこの部屋のノズルに手をかける女性と目が合った。
「ばッ!?....」
いきなり入ってきた女にじょるのは驚きのあまり、しりもちをつく。
「おや、起きたのかい?」
扉を開けて部屋に入ってきたのはとても大人びた雰囲気の女性、薄い緑色のロングヘア―に毛先は水色に染まっている。
黒と白だけが使われたドレスのような、特徴的な服を着こなしていた。
「...あ、あんたは?...」
「ふふ、見目麗しい女性に名乗らせる目前に、まず君から名乗るべきじゃないのかな?西条じょるの君?」
「ッ!」
名前がばれているってことは、悠月が教えた?...いや違うか、別にステータス用紙使えば名前なんていくらでも分かる、じょるのの警戒心が上がっていく。
友好的な相手かどうかはまだ分からない――というか多分敵だ。
「......」
「まあいいさ、大脳皮質に余裕がなさそうな君にここはひとつお姉さんが譲歩しよう、歩み寄ってあげようじゃないか」
ドレスの裾をつまみ上げ丁寧にお辞儀をすると、とても美しい笑みを浮かべて目の前の女は言った。
「私はゾディアック・ピスケス、ここ桜岳大森林の支配者であり、世間一般では偉大なる【平和の魔女】なんて呼ばれている、よろしく頼むよ侵入者君?」
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