鍵 塩 犬
むかしむかしあるところに、歳を取った男と、歳を取った女が住んでおりました。歳を取った男は名前をジジイといい、歳を取った女はババアといいました。
ある日、ジジイが山頂で柴刈りをしていると、山の麓からゴロゴロとババアが転がってきました。
「なんじゃありゃ! ⋯⋯ババアか!」
ババアを見事キャッチしたジジイは家に持ち帰り、包丁で切ってみました。
すると、中から筋骨隆々の羊羹が出てきました。
「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!」
産まれたての羊羹はこの世の全てに絶望し、大粒の涙を流しながら悲鳴をあげています。
「うるせぇーーーーー!」
育児ノイローゼで限界まで来てしまったジジイは包丁で羊羹を切りました。
すると中から甘く煮られた栗が出てきました。
「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!」
産まれたての栗はこの世の全てに希望を見出し、ワクワクが止まらないと叫んでいます。
「うる⋯⋯せ⋯⋯」バタッ
ジジイは寿命で死んでしまいました。
ジジイを失った栗は三日三晩泣き続けたあと、ババアの果肉を切り分け、爪楊枝で食べたりパフェにしたりスムージーにしたりして、残りはラップに包んで冷凍庫に入れました。
「おじいさん、おばあさん、海苔退治に行ってきます!」
となりの家に住む老夫婦に海苔退治の報告をすると、おばあさんが塩をくれました。
「ワシの特製の塩じゃ。美味いぞ〜」
「⋯⋯⋯⋯」
おじいさんはおばあさんの横でずっと金玉の皮をモミモミしているだけで、何もしないし何も喋りませんでした。栗が出発しておばあさんが「お気張りやっしゃ〜」と手を振っている間もずっとモミモミしているだけでした。
「栗さん栗さん♪ お腰につけた塩、ちょっと舐めさせてくださいな!」
草むらから出てきた鍵が、ものすごく歌いにくそうに歌いました。
「なんだお前」
「オイラですか? オイラは海苔ヶ島の鍵でやんす。良い仕事しますぜ旦那」
「なら良い」
栗は腰の巾着から塩をひとつまみ取ると、鍵にかけてあげました。
「思ったより美味しくないでやんすな」
こうして鍵が仲間になりました。
それから栗は同じ手法で塩と犬を仲間にし、鍵、塩、犬とともに海苔ヶ島へ向かいました。
海苔ヶ島では海苔が乾いたりベチョベチョになったりして悪さをしていました。
と思ったのですが、よく考えたら乾いたりベチョベチョになったりすることは特段悪いことではないような気がするので、栗たちは海苔退治を中止しました。
暇になった4人は一緒にボーリングに行ったあと、犬の家で朝まで麻雀をして過ごしましたとさ、めでたしめでたし。




