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ババア トロトロ にんにく卵黄

 お題の時点で面白い。

 ガベジョラがこの街に来るのは今日で2回目だった。


 腐ったセメントをぶちまけたような道路にはショボイ建物が乳首みたいにピョコピョコ生えていて、そのへんにあるソーリ大臣のポスターには片っ端から「弁当」と落書きされていた。


「相変わらず辛気臭ぇ街だぜ」


 食べログでババア食べ放題の情報を見てわざわざ東京から出てきたガベジョラが、自身の育った環境と対極に位置しているであろう景色を前に独りごちた。


「フンニョフンニョフンニョフンニョ」


 フニョフニョ言いながら後をついて来るのは、ガベジョラの弟分を自称している12分前に出会ったばかりの身分不詳のいかれポンチ、マゼゴハンだ。


 マゼゴハンから逃げるように早歩きをするガベジョラの前を、ブラジャー一丁の盲目の筋肉ゴリラ男が横切った。


「トロトロの〜ババアは要らんかえ〜」


 男はババア屋さんであったが、ガベジョラの今日の目的は食べ放題であるため、泣く泣く男をビンタしてその場を離れた。


 それから目的地へ向かう途中、2人はサンタクロースに遭遇した。


「てめえ殺すぞ」


 にんにく卵黄を配って歩いているサンタクロースは、人と目を合わせるのがこの世で1番嫌いなことらしく、目が合った2人に対して殺意を抱いたのであった。


「ああ殺してくれ。こんな人生もうたくさんだ」


 マゼゴハンが涙を流しながら満面の笑みでそう呟いた。

 するとサンタクロースはろくろ首の要領で首を伸ばし「あいわかった。しばし待たれよ」とマゼゴハンの目の前で言った。


 首を戻したサンタはケツでシャベルを挟み、穴を掘り始めた。


 寒空の下、サンタの穴掘りを待つ2人の体温はみるみるうちに低下し、やがて0℃と6℃になった。


「しっこが凍ってやがる」


 0℃になったガベジョラが電柱に向かいながら不満をこぼした。

 普段はそうめんのように頼りないガベジョラのチンポも、この時ばかりは乾麺時代のように真っ直ぐ先を見据えていた。


 ガキン!


 サンタが掘り進めている穴から音がした。


「出たぞ!」


 リングの貞子よろしく指先に血を滲ませながら穴から這い上がってきたサンタは、3本の手に3種類の肉を持っていた。


「ふむ、これはモモとバラとロースだな」


 元肉屋であるガベジョラはそう言うと靴を脱ぎ、足の甲を掻いた。かゆかったのだ。


「選ぶがよい」


 穴の上に立ち、それぞれの手に凍った肉を1つずつ掲げ、ガベジョラに訊ねるサンタ。その佇まいはまるで金銀の斧を持った泉の精のようであった。


「というのはミスリードで、本命は3択ロースだ! だから正解はロース!」


「ブッブー! 殺します」


 そう言ってサンタは2人ににんにく卵黄を手渡し、裏声でふるさとを歌いながらあさっての方向へ駆けていった。


「兄さん、雪が⋯⋯」


「誰が兄さんだ。誰なんだお前は」


「僕はマゼゴハン! 趣味は寿司!」


 まあ寿司が趣味なら仕方がないと、ガベジョラは彼の右手の小指を引っこ抜き、しゃぶりながら歩き始めた。


「僕らの冒険は続く」


「続かねぇよ。130メートル先のババア食べ放題屋に着いたらお別れだ」


「ちぇっ、おケチ⋯⋯」


 回転三角の目でガベジョラをひと睨みし、マゼゴハンは山へと帰って行った。


「よし、着いた⋯⋯ってここジジイ屋じゃないか!」


 それからガベジョラは120分ジジイを堪能した。サラダとデザートのカルパッチョのジジイ巻きが1番美味しかったそうだ。

 感想待ってるぜ(ФωФ)

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― 新着の感想 ―
[一言]  三択ロースのギャグは、そこで使うか! って感じでした。
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