高田郡
「あの、いいですか?」
椎名さんが分かれた後、もう一人の女の子がこちらに近づいてきた。
おかっぱ頭の黒髪で一目見れば、小学生に見間違えるほどの小さな女の子だ。
確か、高田郡ちゃんだったか?
自己紹介で聞いたが、紅羽の圧で曖昧だった。
「あの、高田郡ちゃんでよかった?」
「あ、はい!! 高田郡であってます!!」
こわばった表情で僕に返事を返してくる。
人見知りなのだろうか?
「失礼します」
「どうぞどうぞ」
そう言って彼女が席に座ると、緊張しているのか黙り込んでしまう。
この状況、僕にとっては地獄だ。
海斗のように、話の幅が大きければよいが僕のように狭い人間ではどのように話していいかわからなかった。
彼女も話しかけたいのだろう。
こちらをチラチラと見ながら様子を伺っている。
それが酷く可愛らしい。
「あ、あの……」
そう思っていると、彼女の方からこちらに話しかけてきた。
「そのキャラ、好きなんですか!?」
彼女の指をさした方を見ると、鞄の小さいチャックの方の持ち手にアニメキャラのストラップがあった。
すべて外したはずなのだが、忘れていた。
「えっと、うん」
どうやら、この子はこっち側の人間の様だった。
僕の言葉に、彼女はテンションが上がっていることに気が付いたのか恥ずかしそうな顔をする。
「す、すみません」
どうやらこの子はこういう系の話が話しやすそうだ。
「いいよ、僕も同じ趣味の人がいて嬉しいし……僕もこういう話の方が話せるから」
そう言うと、彼女は嬉しそうに僕の方を見ると口を開き僕もそれに答える。
彼女は人見知りというか、自分がオタクだという事をバレたくない……いわば隠れオタクのようだ。
まぁ、その見た目でアニメ好きというのは、彼女のコンプレックスもあって隠したいというのは想像できた。
彼女は話してみると、とても可愛らしい子だった。
共通の話題で緊張が出来たのか、彼女は自身の事を話すようになった。
「私、コスプレもしているんです」
そう言って彼女は自身のコスプレしているキャラを見せてくれた。
主に小さい系のキャラのアニメキャラだった。
当然と言えば、当然なのだが。
「私も大人っぽいキャラをしてみたいんですけど、どうしても背が足りなくて」
「似合ってると思うけど」
正直背伸びせず、自分に合ったコスプレをしている時点でいいと思う。
「それ、私が子供っぽいって意味?」
「いや、そういうわけじゃ」
彼女は頬をリスのように膨らませ、プンスカというにふさわしく顔で怒っている。
その表情が余計に子供っぽく見えるのだが。
それを言うと、怒りそうなので言わないでおくが。
「わかってますよ、私が子供っぽいってことくらい」
そう言って彼女は口を尖らせながら、下を向く。
勝手に地雷が押されてしまったようだ。
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