幼馴染み一家は帰してくれない
ここに来るのはいつぶりだろう。
幼いころにはよく遊びにいっていたが、意識しだしてからなぜかいくのを躊躇い行くことが無くなった。
「あら?」
僕が玄関前でインターホンを押そうとすると、声がしたので見る。
紅羽の母親青羽さんがスーツ姿で仕事終わりだったのだろう。
「誠一君?」
「はい、お久しぶりです」
久しぶりに見た青羽さんは少しも変わっていなかった。
青羽さんを一言で言い表すとすれば、紅羽に似ていることだ。
紅羽と違う所と言えば、少し髪が長いというだけで大きくなれば紅羽も青羽さんのように綺麗になるだろう。
「紅羽に用事?」
「えぇ、少し本を貸しに」
「あらあら、なら上がっていって」
そう言って鍵を開けると人差し指を唇に当ててこちらを見る。
「少し静かにしてたら、面白い物が見れるわ」
面白い物?
「ただいま~」
青羽さんがそう言うと、それに呼応するかのように紅羽が降りてくる。
「おかえりお母さ……」
ホットパンツにTシャツ姿の何とも僕の目に猛毒な服装で降りてくる。
紅羽が僕と目が合うと、時が止まったかのように降りる脚を止めた。
「誠一君、来てくれたわよ~」
「なっななな……」
そう言うと、彼女は振り向きながら全力ダッシュで階段を上がっていった。
「あらあら」
面白そうに、階段を駆け上がっていく紅羽を見ている。
親子そろって人を弄ぶのがお好きなようだ。
上の階がバタバタ騒がしい。
「ぎゃ~!!」
悲鳴が聞こえた。
何事かと思いながら向かうと、下着姿の紅羽が本の下敷きになっていた。
状況から察するに急いで着替えようとして本棚に当たったのだろう。
僕は彼女の安否を確認すると、ゆっくり扉を閉めた。
彼女だって下着姿をあまり見られたくないだろうし、生きてるのが確認できたので出ていった方が僕の身の安全は保障される。
「これ、置いてくからな~」
そう言って玄関に向かい、出ていこうとする。
「あら、もう帰るの?」
「えぇ、貸しに来ただけですし」
それにあの状況の後で紅羽と会うのは気まずさ極まりない。
そう思っていると、着信音が鳴る。
母からだった。
「何かよう?」
「あ、誠一? 話は青羽さんから聞いたわ~、あまり迷惑かけないようにね~」
ん?
状況が読み込めない。
「あの、何の話して……」
その言葉を最後に切れてしまった。
泊まる?
何も用意してないんですけど。
それに女の子の家にしかも彼女でもない同級生の家に泊まるのは少し抵抗がある。
「聞いてないんですけど」
「うん、今決めたからね」
もう何を言っても無駄だ。
紅羽もそうだが、青羽さんもこれと言ったら即行動の行動力のある人だった。
流石親子。
「ま、そういう事だから着替えは君が泊まることになったように一着あるからとりあえず風呂に入ってきなさい」
どこから突っ込むべきだろうか?
っというか、何?
お泊りように一着用意してるって、用意周到すぎて怖いんですけど。
「あの、やっぱり帰りますよ」
流石に幼馴染と言えど、年頃の男女……流石に不味いだろう。
レインからメッセージが表示される。
母からだ。
頑張りなさい。
何を!?
今日は家には入れません。
なんで?
お父さんと久々に燃え上がりたいので。
……聞きたくない情報だ。
僕の両親は僕を二十歳で産んでいる。
それだけならまだいい、二人は今も互いに息子の前で胸やけがするくらいラブラブなのだ。
「早く入ってよ~、ご飯の支度終わったら入りたいから」
そう言って彼女は台所へ向かう。
こうなったら仕方ない。
僕は風呂に入る事にした。
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