誠一、出走
「そろそろ時間だね」
「そうだね」
もうすぐ誠一の走る番になる。
「優勝するかな?」
「勝ってほしいよね~」
正直、紅羽の速度についてこれたといっても、女子の中で早いだけの速度だ。
男性陣の中で着いていけるかと言われれば、う~んといった感じだ。
誠一の番になり、走っている。
中々いい位置だ。
走るのも終盤に差し掛かかる。
「「頑張れ!!」」
私達は心の中で声を上げる。
その一生懸命な姿は、昔のテニスをしていた時の誠一の姿だった。
「「負けるな~!!」」
心の声を張り上げて叫んでいた。
一瞬、ほんの一瞬目が合った気がした。
「いける~!!」
誠一は最後の力を振り絞り、必死に駆け出す。
そして、彼がゴールすると同時に私はゴールに向かって駆けだしていた。
超えてはいけない線を飛び越え、彼の元へ駆け出す。
「やった、勝った!!」
自身が優勝したことより、もう一度誠一が頑張って優勝したことの方がはるかに嬉しかった。
彼の元へ急ぐ。
彼は、力を振り絞ったのか膝から崩れ落ちて座り込んでいる。
「大丈夫?」
ここで歩かないとだめだよと言いたかったが、頑張ったのだから言わないでおく。
誠一は問いかけると、私の方を見た。
焦点が虚ろだ。
きっと頑張りすぎたのだろう。
そうして、何かを言おうとしたが、疲れているのかパクパクと口を開けている。
「よく頑張った、流石誠一」
私がそう言うと、彼は笑う。
その笑顔はやり切ったという爽やかな笑顔だった。
「全く、無理するんだから……誠一?」
笑顔で私を見た後、彼は倒れそうになるので、私は身体で支えようとするが支えきれない。
「大丈夫か? 全く、これじゃあ体育祭メインの意味ねぇじゃねえか」
海斗はそう言って私と反対側の肩を持ち上げると、共に保健室へ向かう。
告白、ここで優勝して公開告白すれば、ずっと一緒に居れるというものだ。
「ううん、これでいいんだよ」
「言い訳あるか、他の奴らの屍を乗り越えたんだ……見ただろ、二着の奴」
「屍って」
分からなくもないが、言い方と思ったが彼にそれを解いても無駄なのはわかっている。
こいつはそう言う奴だ。
「ま、あいつの狙いはお前じゃなくマネージャーみたいだけど、彼女三年だしいたたまれないな」
「それも勝負の世界だから仕方でしょ」
「違いねぇ、それよりさお前どうして最終走出たんだよ」
「ん? 内緒」
「それにしちゃ質悪いぜ?」
「別に告白しなきゃいけないってルールなわけじゃないんだから」
「そりゃそうだけどさ」
「勝ちは勝ち、相手の事を思ってたら競技なんてできないよ」
「まぁ、そうなんだけどさ」
「お前ってそういう価値観の癖に、告白《他の所》は全然だな」
「何か言った?」
「別に」
誠一を保健室に送り、ベッドで寝かせる。
「俺は戻るけど、お前はどうする?」
「私はもう少し見てるよ」
そう言うと、海斗は保健室から出ていく。
私は誠一の寝顔をじっと見つめる。
「これは、少しお得かな」
私はボソッとそう呟く。
そうして誠一が目覚めるまで私は隣にいるだった。
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
続けば続くほど、どう表現したらいいか迷ってしまいます。
今回気持ちの表現が難しく、後日書き直す所存なのでお許しを~!!
これからも応援していただけるように頑張っていきますのでどうかよろしくお願いします。
今回も表現について何かあれば指摘してください。
まだまだ勉強中なので、どんどん意見を取り入れてより良い作品にしていきたいのでどんどん意見をお待ちしてます!!
ブクマや評価もしていただけると励みになりますので、どうかご検討ください。
け、決して5にしてほしいとかは言いませんが、出来れば5がいいななんて……。
まぁ、純粋に評価をしていただけると僕は嬉しいです。
それではまた次回、よろしくお願いします。




