七話 完了!
ありがとうございます。
こんかいも、ちと長いです。
お楽しみ頂けたら幸いです。
しーん
ついさっきまで四方八方にシェイクされていた、
超巨大豪華旅客宇宙船『ホワイト・コメット』の
脱出カプセル群の内側は、突然静寂に包まれる。
「「「「「......」」」」」
さんざんシェイクされていた乗客の全員は、放心状態だ。
『侍』高羽の姪の早苗も、放心状態だ。
「...... ねぇ、まま...... おふね、静かになったよ」
「! えっ!?」
お寝坊した母親をそっと起こすように、
晴人の小さな手が早苗の頬に優しく触れる。
ポーン
『......御乗客の皆様に御知らせ致します。
当船の落下は『侍』救助隊の御活躍で回避されました。
おめでとうございます。
只今より、避難解除の手順に入ります。
後に、JFネオ宇宙港への航路を、再開させて頂きたいと思います。
今少しそのままでお待ち下さいませ』
やさしいチャイムと共に、ホワイト・コメットの管制AIラークの優しい声で、放送が流れる。
うおおおおおおおおおおお!
多くの脱出ポッドから、乗客の歓声が沸き起こる。
◯ ◯ ◯
「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
渋谷スクランブル交差点で立ち止まってしまい、TATSUYAビルの大型3Dモニターを固唾を飲んでいた大勢の歩行者達は、大型宇宙旅客船ホワイト・コメット救助成功に、歓喜の声を上げる。
「やった!」
「すげぇ」
「クール!」
「えと。横浜ランドマークタワー位のを、受け止めたんでしょ?」
可愛い女性は、恋人に確認する
「……もうちょっと大きいな……しかし」
恋人は、渋い表情をする。
「うん?」
「『侍』と言う人造超人て、どんだけのパワーを持ってるんだよ……」
恋人の表情は、驚きと畏怖を、あらわしている。
◯ ◯ ◯
世界中のありとあらゆるメディアに映し出された、
人造超人『侍』達のホワイト・コメットの救出劇に、
全世界の人々は歓喜と安堵した。
同時に、メテオ・バスター・ミサイルやデブリ・ブラスターを、
容赦無く放った宇宙エレベーターJFKネオ防衛局には、全世界からの避難が集中する。
◯ ◯ ◯
え? 猛お兄さん?
(おっと個人情報は、控えてね)
え? あ!ごめんなさい。
あ、あなた『も』、『侍』なの?
あなたも、船を救ってくれたの?
どうやら『ユグドラシルの生体エナジー』である青白い光に、船体ごと包まれて居るので、
チャクラが解放されて居る才能ある乗客・乗員の
霊子線と『侍』クラウドが、
リンクしてしまった様だ。
猛おにーちゃん?
え〜と?どこにいるの?
この、おこえはなぁに?
猛は、晴人に『お兄ちゃん』と呼ばれて、思わず右手がガッツポーズを握る。
(えー。ただいま私と『念話』できて居られる方々は、『侍』適性検査にパス出来るでしょう。
その気に成られましたら、お近くの『侍』分所へどうぞ。歓迎しますよ♪)
すると、歓喜・不安・恐怖・嫌悪・戸惑いの感情が伝わって来る。
(あぁ。御安心下さい。この念話は、この光に包まれている間だけ可能です。
周りの方に『話さなければ』このやり取りは、周りに一切気付かれません。
私はただ『『侍』の才能がある』と言っただけで、『侍』に成れ! とは一切強制いたしません。
ということで『嬉しい方々』も、周りに明言は『守秘義務』を願います。
『『侍』になりたい』と言う方だけ『こっそり』『侍』分所へ、おいで下さい)
武良が明言すると、『喜んだ方々』以外の感情をもった人々は安堵する。
『じゃぁ、船を持ち上げます。そのまま宇宙エレベーターの高度まで、運びます』
ブッワッ!
青白いオーブの輝きが、さらに強く増す!
ホワイト・コメットの巨大な船体は、ゆっくりと宇宙エレベーター宇宙港の高度に戻る。
猛はJFKネオ宇宙港と、船体の相対速度を合わせる。
『JFKネオ宇宙港!こちら『侍』円鐘 猛。ホワイト・コメットの接岸許可は出るか?』
『はい。Bー23埠頭に、誘導を御願い致します』
デブリ・ブラスターまで撃って来たのに、JFKネオ宇宙港の女性オペレーターは、アッサリ入港を認める。
『あれ? 入港良いのか? えーと、防衛局長は?』
武良は女性オペレーターに、防衛局長の様子をたずねる。
『はい。ホワイト・コメットは『安全な航行』を取り戻しましたので。
(大きなデブリ)では無くなりました。
ので船籍が、回復されました。
また防衛局長は、先程罷免されました。
現在は副局長が指揮を取ります』
『あー。メタバース放送を無視しての、攻撃デスもんね〜』
『あー......ははは』
女性オペレーターも、乾いた笑い声を出してしまう。
ピンポーン
『接岸の準備が出来ました。『侍』円鐘 猛様、操舵を引継ぎます』
豪華客船の航行管制AIラークは、柔らかな電子音声で、武良に進言して来る。
『了解ラーク。ユアハブ・コントロール』
猛は、ユグドラシル・エナジーを止める。
『アイハブ・コントロール』
外装全体が地球に再突入したアポロ宇宙船の様に、
真っ黒くススけたホワイト・コメットは、
自力で無事に宇宙港に接岸する。
シュン
ホワイト・コメット船体のあちこちから、赤い光が周囲に伸びる。
『ディメンション・アンカー付設完了。今便の航行終了。
......『侍』円鐘 猛様。
救助頂きまして、誠にありがとうございます』
『応。ラーク、おつかれ様』
猛は、まるで『戦友』に話し掛ける様に、気安く話しかける。
『恐れ入ります。……小耳に挟みましたが『侍』様かたがたに『事件を解決していただいた報酬』は、我らがもて成せる『御食事』や『寝床』だそうで。
如何でしょう。御時間が御座いましたら、御足労頂いた『侍』皆様を、ささやかですがホワイト・コメットの中央レストランの御食事や御茶に、是非御招待致したいのですが。
船長や、料理長や、船員総スタッフが『是非に』と申して居ります』
豪華客船の航行管制AIラークは、柔らかな電子音声で、提案して来る。
『ありがとう。
では、喜んで『報酬』を、いただきましょう』
猛は、優雅に一礼する。
『やったぁ♪ ホワイト・コメットの『A5レベル』人造肉プラントは有名ですよ♪ それに中央レストランは、ミットラン三ツ星の常連ですし。あぁ! こないだ各種フレーバーのプチケーキ・バイキングの特集もしてましたよね♪』
『侍』高畑久美子は暗い宇宙空間で、キレッキレで喜びの舞を立体機動的に舞う。
サスガは若い女性、グルメやスィーツにも、アンテナを張り巡らせているようだ。
『あぁ、高畑さん。まだ『個人や公的のドローン』が一杯飛んでて、コッチを撮影してるよ。貴女の『喜びの舞』は、動画アップされちゃうよ。そのへんでコッチ来て』
猛は、高畑に進言する。
『きゃー!』
焦る高畠は、慌てて猛の隣に、姿勢を正して並ぶ。
……残念ながら猛の言うとおり高畑の『喜びの舞』は、『多数の各方面ドローン・カメラで撮影動画』が、動画サイトに複数アップされてしまい、彼女が後悔の日々を送るのは、いま少し先の話。
『おおう、ウイリアムさん、久しぶり。おうデニス!も、はやく来て』
猛は他の『侍』達に、楽しげに声をかける。
ホワイト・コメット周囲に待機していた数十名の『侍』達は次々と、ホワイト・コメットの左舷の中央部エアロックの前に集合する。
『いらっしゃいませ。豪華旅客船ホワイト・コメットへ、ようこそ』
エアロックが開き、『侍』達は次々と吸い込まれて行く。
『あ! そうだ』
最後尾の猛は、漂う二十発のミサイルを思い出す。
『高羽さん!先に行って、始めて下さい。バスター・ミサイルをまとめときます』
『おう!5分で来いよ!出ないと、今日の功労者の高畑さんが、食い尽くすぞ!』
高羽は、浮かれた様に叫ぶ。
『『『『わははははは♪』』』』
『たしかに!』
デニス・カーマインも、思わず同意してしまう。
『......高羽さん、デニス......』
『『あっ』』
高畑から肩をワシ掴みにされた高羽とデニスは、ホワイト・コメットのエアロックに、呑み込まれる様に引きずり込まれる。
(雉も鳴かずば撃たれまい......)
猛は、二人にあわれみの視線を送る。
気をとりなおして船から離れた猛は、ただよう二十発のミサイル群に、近付く。
『侍』念動ハンドを二十本繰り出し、すべてのミサイルを確保すると、ひょいひょい自分の『無限収納』へ放り込む。ちなみに、文字通り『無限』に広い。
ピーピーピーピー
『おう? 隼、『何に対する』警告音だ?』
ミサイル最後の一本を、ゆっくり引き寄せながら、自分の戦術AIに問う。
『ディメンションの歪みを感知! 何かガ、正面に転移して来まス!』
『え?』
正面見通すと、確かに青い光が、渦巻き出し始める。
『シールドを、強化!』
『了解』
目を凝らすと、淡い青い光が太陽プロミネンスの様に、球形の周りを飛び交って居る。
太陽ミニチュアの、3D動画を見て居る様だ。
『記録は?』
『空間の歪みヲ、感知してからでス』
ピコン
再度、警告音が鳴る。
『近付いて来まス!』
確かに太陽ミニチュアは、ジワジワ近付いて来る。
まるで猛を、飲みこもうとするように?
『おっと?!テレキネシス・ハンドで、太陽のミニチュア?を捕捉!』
『捕捉!』
太陽ミニチュアの動きが、ピタリ止まる。
しかしミニ太陽の表面は、蠢いている。
『何かな?』
『……何処かへの転移ゲートの様でスね。ブラック・ホール迄とは行きませんガ、エネルギーが吸い込まれる傾向でス』
『転移先は?』
『探査中 ……? やたラ、深いですネ』
『深い?』
『……んー? 何でしょウ? 探査・ハンズを一本送り込んで居るのですガ、何処までも深く深く潜りこんで行きまス』
しばらく隼は、押し黙る。
『中々転移先にたどり着けませン……転移先は、地球上では無い様ナ……』
『ほう。では、外宇宙かな?』
バチッ!
静電気が放電した様な音がして、ローマ時代のトーガ風の上質な衣装を纏った金髪色白豊満美女が、急に現れる。
彼女の双丘は、ゆったりした衣装を突き破る様に、その存在感を主張して居る。
『マジか』
ありがとうございます。