五十六話 ハルバードの達人
ありがとうございます。
今日は日差しが強くて、日焼けしそうでした。
でも、風は冷たかったです。
確実に、秋冬に入ってますね。
鼻風邪に御注意ください。
朝日が登りかけの早朝。
タイ・クォーン教会神殿敷地の、援兵場。
「第三聖騎士部隊、出立!」
聖騎士十人分隊が四部隊の四十名と、戦術神官分隊十名で出立する。
五十人くらいの部隊が、最近の討伐での標準なのかな。
それより。そうか、 聖騎士だったのか。
教会衛兵隊より、年齢層が高そうだね。
二十代のベテラン揃いかな。
揃いのハルバードや盾が、決まっている。
サブ・ウエポンは、標準ソードかな。
フルフェイス兜より、視界の広いハーフキャップ兜が、多い様だ。
安全性よりも『視界』を優先とは、だいぶ『戦慣れ』している。
猛は、地球でもロードを走る時用のフロートバイクに跨り、隊列について行く。
無論タイヤは無く、浮いている。
カウル形状はレーサーレプリカ・タイプで、真正面にはこちらのシールドを装着した。
ガチで魔獣に突っ込めば、シールド・バッシュ出来る。
現在は地上高10cmに設定してあるが、通常の戦闘機と同様に、音速突破速度で飛べる。
小さく小回りが効くので、戦闘機同士のドッグ・ファイトも、お手の物だ。
機会があれば、ワイバーン?とかの飛行魔獣にでも、シールド・バッシュしてみたいなぁ。
装着した『盾』は、こちらでも戦士なら気になるデザインの様で、チラチラ見られる。
中二病ぽく、格好良い『ランス』も、装着して見ようかな。
また、皆、浮かぶフロートバイク自体にも興味津々である。
(説明が面倒くさい時は、『勇者の御業』で済むので、助かるなぁ)
出かける時、ニーグさまはまだ、夢の中だった。
まぁ簡易COPもあるし、目覚めたら飛んで来るだろう。
「コレは、楽ですねぇ」
フロートバイクの左側に、サイドカーの距離で追随させている、
シートポッドに座って貰っているワードマンさんは、御満悦だ。
『はい。私も飛べるとは言え、乗り物に乗っていた方が地上の移動は、楽ですし』
「なるほど、適材適所ですな」
『お名前は?』
ワードマンさんとの話題が途切れた所で、隣で騎馬を闊歩していた、 威風堂々の僧兵に声をかける。
「えっ?あ、はい。ベルター・フォン・ゲルスタイトと、申します」
(貴族さんか)
(ローカル・ネットワーク情報によりますと、『下級貴族』に当たる様で)
(そうかー。腕とチャンスさえあれば、出世出来るんだな)
(ゲルスタイト家の次男として、勤勉な方だそうです。
お兄さんは、王都教会の聖騎士さん見たいですね)
(良いねぇ)
『宜しく、ベルター。で今日は、どこで討伐があるのかな?』
「はい。ホイロード村の農耕地近くに、魔獣が目撃されたそうです」
『発見されたのは、いつかな?』
脳内で、ホイロード村を『共通作戦状況図』で確認しながら、会話をすすめる。
確かに村から、やや離れた雑木林の中に、赤い点がいくつかある。
魔獣は夜行性と聞くから、まだ寝ているのだろう。
「二日前だそうで......本当は昨日出動する予定でしたが......」
『そうかー、昨日の神殿の状況だと、出撃は無理だよね。
......農民が心配だね』
「はい......」ベルターも、浮かない顔をする。
(スクランブル出動出来ないのも、問題だなぁ)
(魔道通信が出来るのは、魔法使いだけですからね。
魔獣が暴れている急報でも、足で教会に駆け込まなくてはなりません)
『うーん』
銀色ヘルメットのアゴ辺りに、右手親指を当てて考え込む。
『ベルター。こちらでは、緊急時の連絡方法には、どんな方法があるのかな?』
「一番確実で早いのは、魔道通信ですが......」
『通話したい二点に、それぞれ魔法が使える者が居ないといけない、か』
「はい......他には狼煙や、伝書動物、早馬、ですかね」
『えーと。勇者とか、渡り人の技術とかは?
例えば魔力伝達させる線を、遠い二点で繋いで通話とか、それこそ無線通信とか?』
「『勇者の御業』系の技術は、その技術を有する勇者様か、その系譜しか使用を許されておりません......
中には『技術解放』して下さる勇者様も居られますが、
後の系譜に代替わりされますと、有料になってしまわれたり......」
『あー......『勇者の御業』は、『タブー』の意味も持ってしまったのか。
だからそう言うと、それ以上踏み込んでは来ないのね......
どの世でも......『利権・既得権益』には、困ったモンだねぇー』
「はい」
ワードマンさんが、寂しげに会話を引き継ぐ。
「だから、便利で豊かな世の中に、ならないのです。
本来は王室の権威主導で、経済活動に有効な遠方通話や安全な移動等の技術の、情報開示を指導すべきなのです。
が、四百年前の『魔王戦争』の影響が、政財界に現在も残ってまして......
地方貴族や財閥豪族達の実力と発言力も、無視は出来ないのです。
無論、王室の現在の権威や軍事力は確かに国一番なのですが......」
『あ、『魔王戦争』の切っ掛けが、周辺諸国へのヤーディン大国からの征服戦争で、
短期決戦のはずが長引いてしまい、増悪した『絶望と瘴気』が原因でしたっけ』
「はい。『魔王戦争』で開戦した王が戦死し、次王が『王の暴走を調整しよう』と
『貴族の多数決の意見で、お諌め』を示す、貴族院を設けました......
『魔王戦争』を体験した者が存命中は、上手く調整されていたのですが......」
『『魔王戦争』を知らない世代になると......』
「貴族院の権利の都合良い『拡大解釈』の横行が、蔓延り出しますな」
『それで現在は『政治闘争』が得意な、王侯貴族が『世にはばかる』と』
「『権力は蜜ノ味』ですからね。欲望剥き出しの現タイ公爵は、分かりやすい方です」
『『能ある鷹は爪を隠す』タイプの王侯貴族は『裏も表も』面倒ですねぇ』
「......『聖光剣の勇者』様なら、『裏も表も』......得意そうですが?」
『............』
聖光剣の勇者は、意味深に黙り込む。
『......まぁ、『面倒臭いのは『表も裏も』変わりませんからね』
「そうですね......ヴォーグ神様が『守破離されるまで』
持ちこたえさせて頂けたら、助かります」
『ヴォーグ神様ねぇ......』
猛は、ちろりと空を見る。
バリバリ バリバリ バリバリ
少量の雲だけの、晴れている空の真上から突然!
雷鳴の大音量が響き、
猛にまっしぐらに雷撃が襲いかかる。
ブン
自然の流れて漆黒の八角・六尺棒を、天にブン投げる。
キカッ!
ドンッ!!
ブワーン!
「「「「うわあああ!」」」
凄まじい落雷の爆光と爆風と爆発の衝撃波に、聖騎士の騎馬隊は、いささか乱れてしまう。
「おぉ、お?」
「おう!アレも『聖光剣の勇者』様の、得物だ!」
「アレで、ファザンを追い詰められていたそうだぞ!」
頭上にうかぶ漆黒の八角・六尺棒が、また避雷針になってくれた。
(しかし、敵魔法使いも居ない様子だし、今の雷撃魔法は、どこから?)ヒソヒソ
(あんな強力な雷撃魔法は、初めて見たぞ)ヒソヒソ
(でも、さすがは『聖光剣の勇者』様!、片手間で御守りくださった)ヒソヒソ
(本当だな! なんでも、あのファザンも子供扱いだったそうだぞ!)ヒソヒソ
(オレも聞いたぞ! ロイヤル・ガードが邪魔しなかったら、
あの『ディープ・パープル騎士団』を捕縛出来そうだったんだろ)ヒソヒソ
聖騎士達の『らしからぬ』囁きが、止まらない。
『ワードマンさん。教会に寄進しました依代は、どうされましたっけ?』
「はい。教会の宝物殿に、大切に......」
『しばらく、そのままにしておきましょうかねー』
急に、空の......大気がゆらぎ始めた様な?
「そうですねぇ。数十年になるのか、数百年になるのか......」
ぱぁー!
あっという間に雲が飛び去り、雲ひとつ無い快晴と変わる。
「む?」
急に、ワードマンさんが空を見る。
「......『ずるいぞ!』だそうで」
猛は、じろりと空を睨む。
『レシピも、回収しましょうか......』
「『わ、わかった!もう口を挟まぬ!』だそうです」
『やれやれ......では、また『お茶会』を致しましょう』
「......はぁ、『言うたな!約束じゃぞ!絶対じゃぞ!』......申し訳、ありません」
猛の目は、スっと細くなる。
『二言はありません』
ピリっとした、気配が出る。
「......『よ、よし!』だそうです。あ、切断されました。はぁ」
ワードマンさんは苦笑しながら、ガックリと疲れる。
「やれやれ、神をビビらせるとは......」
『任せるならば、任せるべきかと』
少し硬い声が、出てしまう。
「......ごもっとも」
ワードマンさんが、また、上司のポカを庇う表情となる。
ふぅ
『進軍しましょうか』
猛も、苦笑を浮かべた口調になる。
「「「「「?」」」」」
天とのやり取りは、違和感を感じても、一般庶民には理解出来ない。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
「へぇー、ハルバードも良いねぇ」
猛は小休息に入ると、ハルバードの基本型を教えて貰う。
「では、僭越ながら......失礼します」
ブン ブンブン ブォン
先程話しかけたベルターは分隊長だったらしくて、ハルバードの扱い方は天下一品だった。
(いい腕だ)
「まぁ、こんな感じです」
ベルターは、振り終わったハルバードを渡してくる。
受け取ったハルバードは、バランス良く手に馴染む。
『どれ』
フォン フッ シュシュン フシュン
借り物のハルバードは、猛の手の中で、美しく舞い踊る。
(戦斧とか付いてるから、均一の棒とかと、振る感じは違うか)
ヒュ ボヒュ シュン ボシュン
ざわざわ
(おいおい、ハルバードの動きじゃ無いぞ!)ヒソヒソ
(斬撃が、見えない!)ヒソヒソ
(ゆったりで......早い!)ヒソヒソ
(なるほど!石付の使い方も、こうすれば良いのか!)ヒソヒソ
(いわゆる『スキル勇者】様、じゃ無いぞぉ......)ヒソヒソ
(ファザンを打ちのめされるだけ、あるよな......)ヒソヒソ
猛はハルバードの二又形状部分に、可能性を感じた。
(どれ)
シュオン くるくる
シュオン くるくる
(よし)
この二又形状部分で、敵の得物を『巻き上げ』れば、簡単に奪える。
もしくは挟み込めば、刀身を折れる。
((((!))))
さすがにベルターと同じ、分隊長達は、『聖光剣の勇者』様が『いま、何をした』か、理解したようだ。
腕ある聖騎士も、何人か気付いた。
シュン
ふー
演武終えた猛は、美しく構え、ゆったりと一礼する。
おおおお!!!
ウラー!!!
皆、歓喜の雄叫びを、上げてしまう。
『ありがとう。ハルバード、良いねぇ』
ベルターにハルバードを返し、礼を言う。
「使って頂き、有難うございます!光栄です!」
ベルターも、感動の笑顔でいっぱいだ。
彼の理想の演武が、そこにあった。
ハルバードの、さらなる可能性を見た。
(よぉし!『聖光剣の勇者』様の動きの残像が消えない内に、振りまくるぞ!絶対身に付けてやる!)
ほど近い未来、ハルバード・マスターと呼ばれる、ベルター・フォン・ゲルスタイトの始まりだ。
普通の貴族であったゲルスタイト家の系譜は、以後『武門の家系』として、代々名を馳せて行く。
「さぁさぁ!休息は終わりだ!出るぞ!」
本日の指揮官の、バクスターが発令する。
「「「「「は!」」」」」」」
宜しく御願い致します。
誤字脱字、御感想頂けたら嬉しいです。




