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コントレイル(ヒコーキ雲)
ゴールを走り抜けた馬、疾風
馬の首筋を優しくポンポンと騎手、感涙
馬の名はコントレイル、ヒコーキ雲の果て
騎手の見上げた青空
滲んでゆれる涙目のなか
風までどよめいて、拍手、拍手
勝利のインタビュー、感激、絶句、
「この馬は凄いんです」絞り出すかのように
「本当に強いんです」言葉をつないだ騎手
無敗の三冠馬は以降勝てず、三連敗
これが三冠馬? あれは虚像? 白日の幻?
ヒコーキ雲消えちゃった、飛び交う言葉
「3,000米を走れる馬じゃないのです」
騎手は訥々(とつとつ)としゃべる
「なのに、昨年、菊花賞を勝ったのです」
ふたたび「本当に強いんです」
トドメさすかのような騎手の声
最後のレースの最後の脚、上がり33.7秒
コントレイルは一礼するかのように
ターフを去って行く、嘶きひとつ残して




