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生あるモノへ  作者: 雄すけ
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夕子とタマちゃん、そしてピエロの涙

「行ってみるしか あらしません」タマちゃんが京言葉を真似て言った。だから天気の良い日、タマちゃんと渡月橋、嵐山から金閣寺へ行った。初めてのデートだ。歩きながら、ボクたちはコトバ遊びをする。

「癒されたい」って、渡月橋わたりながらタマちゃんが言う。

「空は晴れてるよ。ソラソラ(空々)に抱かれたら」って、ボクは答える。

目のまえに嵐山、大覚寺。随分、歩いたネ。

「迷っているの、心が宙をさ迷って」、子羊のような目をしてタマちゃんが言う。

「チュウチュウ(宙々)に吸ってもらったら」って、ストローハットをかぶってボクは答える。

「不安感いっぱいやねん」金閣寺を前にして、タマちゃんが言う。

「バクバク(漠々)に食べてもらったら」って、ボクが答えている。

「京都は、景色だけや あらしません。ソラソラ(空々)も、チュウチュウ(宙々)も、バクバク(漠々)だっている」。


 また、ある日、タマちゃんとそれに夕子と一緒に丸山公園へいった。

「夕子? 誰? 」誰やろね。


 四条通りを東へ。八坂神社の交差点の角、明るく小綺麗な菓子店でつつましく夕子は待っていた。

「待ったぁ? 」「う~ん、ちょっとだけよ」と言って、夕子は腰をくねらせた。エロな仕種やね。夕子の匂いはいつも甘く切ない。ボクの欲情をそそる。八坂神社前の信号が赤の時代から青の時代へ、横断歩道をゴー、ゴー。

 ボクの右手は夕子にあづける。左隣にタマちゃんがいるのに、おかまいなし、夕子はボクの腰に脚に纏わり付いてーー あれぇ! あれぇ!「やめろや」でもちょっとうれしい。

タマちゃんも笑っていく。トライアングルな関係なのにタマちゃんは笑い飯のように微笑み返しだ。

 円山公園から知恩院へ、その三門を見上げる。おぉーー なんか手を合わせたくなるね。男坂は空まで続くように。ボクは右手に力をこめる。夕子が少しゆれて、こたえる。女人坂を上がり御影堂まで。樹木は鏡のような池に映え、いにしえまで幻想的かつ立体感溢れている。


「夕子? いったい誰やねん」誰やろね。

「なんかおなかすいたネ」タマちゃんが言う。

「食べよか」ボクは手に持った袋を見ながら言う。

袋のなかにはつぶあん入り、生八ツ橋『夕子』だ。


「なぁ~んやね、夕子って生八ツ橋の名前か」

「そうや、つぶあん入り、生八ツ橋『夕子』でおます」。 


「いただきます」タマちゃんが言う。

『夕子』は蜜の味、ファンタジックやね。口のなかで可憐に、そして清楚にはじける。もういちど「いただきます」ボクも言う。

「おいしいネ」タマちゃんが尚も言った。


 帰り道、ボクらは新京極で三角帽子をかぶったピエロを見た。ピエロはいつも涙を流している。「哀しい人のために俺が泣いてやる」と、一粒、二粒、三粒、ピエロの涙だ。ピエロは歩く。お道化ながら歩く。人々はその様を見て笑う。

ピエロは人が笑ったぶんだけ涙を流す。ピエロは歌う。ピエロはなおもお道化て歩く。

「世の中の不幸は俺が背負ってやるさ」と、古都を訪ねてピエロは行く。

ピエロはいつもどこかで歌っている。

笑いと涙が同居している、まるで人生。

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