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生あるモノへ  作者: 雄すけ
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町は彩られ、人は操られて

 人はみな色を持っている。固有の色、個性の色かな。人に取り巻く色もある。憧れ、癒し、ホットな、クールな、デフォルメな、リアルな、ポジティブな、ネガティブな、プラスアルフアな、マイナスベーターな<あるんかいな>、それぞれの色だ。さらに歌じゃないけど悲しい色やねん、恋しい色もある。

 僕は、何色? 問うてみる。やっぱり、黄色かな? 

バナナ、グレープフルーツ、とうもろこし、黄まっか、あげくフライドポテトまで。

黄色の食べ物の羅列やないか。<みんな好きや>。

好きな花は小菊、ビオラ、菜の花、あげく向上心の向日葵まで。<みんな黄色や>。

好きな動物はタイガー、キリン、ひよこ、紋黄蝶、あげく歌を忘れたカナリアまで黄色。

菜の花畑に舞う紋黄蝶は時を忘れて見とれていた。


 妻はどうだろう? 以前聞いたところ、「真綿色だよ」と。思わずシクラメンかとツッコミいれそうになったが、「光沢のある白にほんのり薄く黄がかっている色やねん」と妻は続けていった。微妙な白やね。シルクか。それが妻にとっては一番の美しい色らしい。白と、ほんのり薄い黄、本当の美しさの黄金律らしい。そう言えば、「ウエディングドレスは真綿色がいい」と、遠い昔、妻が言っていたような気がする。

ある時、今でもそうと聞いた。

「うん、真綿色は自分も周りもあったかくするの」と妻の返事。<ふぅ~ん、やっぱり>。

 

 今年六月、遅生まれの紫陽花あじさいと早生まれの百日紅さるすべり、その間にピンキーなバラ、みな同時、一気に咲いた。町は彩られて、人は操られて、運命のメカニズムだ。

妻が裏庭から真綿色じゃなかったけれど紫陽花を切ってきた。何をするのかな?

「トイレに吊るすの」、「年をとってから下の世話にならないんだって」妻が立て続けに言った。向かいの池さんちのおばぁさんから、六月の六のつく日に紫陽花をトイレに逆さに吊るしておくと婦人病、痛風にならないと教えてもらったらしい。<何でやねん? >。

昔の人は紫陽花には霊力が宿るとみなして魔除け、金運アップにつながると信じたらしい。

 

 向かいの池さんちのおばぁさんは花が好きだ。だから飼い犬の名前だってハナって付けている。おばぁさんはいろんな花を育てている。四季折々の花だ。

この間まで三色すみれの蕾が下を向き物思い悩むような姿であったが、いまは花開き、その様

は人が笑った顔のようだ<悩み事、解決したんだ>。

その隣には白いくちなしの花、黄色になるまで、その名前の通り、口がないから寡黙な花だ。蚊を寄せ付けないライトピンキーな蚊取草だってある。<これで蚊退治、ゆっくり眠れるね>。

それからパレードのように白と赤の躑躅が咲いている。小さい頃、甘いからとその花蜜を吸ったね。<ディープキスで唇はれちゃった>。


 池さんちの庭にはそんな花々が犇めきあって色とりどりに咲き誇っている。

あっ、忘れていた。百日紅よりも長く咲き続ける千日紅せんにちこうだってある。なんかその名前って線香みたいだ。その花たちを目の当たりにすれば「やばい」、「やばっ」リアルな若者が花火を見た時のようにそう言うやろね。 

 

 ある晴れた日、池さんちから鉢植えの紫陽花を貰った。なっ、なんと真綿色の紫陽花。おばぁちゃんとハナが持ってきてくれた。妻がハナの頭を撫ぜる。ハナは嬉しそうに尾っぽを振っていた。「うわぁ、うわぁ、真綿色の紫陽花だ」、「ありがとう」と、妻も尾っぽを振って喜んでいた。<妻? 尾っぽ? あったっけ? >。

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