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生あるモノへ  作者: 雄すけ
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独りの部屋で

もの静かな部屋にスーツケースぽつりとあった。その傍らには、部屋着やら下着やら、物言わぬお泊まりセットまで置いてあった。

 <なんか切ないネ>僕は思った。 

 

 妻が入院・手術をするのだ。コロナ禍での入院は大変だ。入院前、ひと手間もふた手間も増える。前二週間から毎日健康チェック、前日にはPCR検査、陰性証明がいるのだ。

入院後、面会は原則禁止、家族は許されても五分程度、洗濯物の受け渡し、ハイそこまでだ。三分待ちのインスタントラーメンなら出来上がり、二口、三口、サヨナラ、サヨナラだ。勿論、猫舌なら何をか言わんだ。


 妻が淋しげな肩でスーツケースにあれもこれも、心までも? 入れようとしながら

「これが旅行ならワクワクなのに、あぁ、あぁ、、、、」と、ひと言呟いた。

その言葉はいたいけさ一層いや二層増し、僕の心のなかリアルに響いた。

「大丈夫、試練の先には希望が、、、」と、僕の言葉は上滑りし、つるりと落ちていくような気がした。滑り止めはナァに?


 女は一夜にして変わる。入院当日、妻は吹っ切れていた。女は度胸がすわれば怖いものなどない。昨日までの弱さ、我が儘、あれはどこへ消えた。恐れ入谷の鬼子母神だ。

夫婦って不思議だ。妻が強くなれば夫は弱く、妻が弱くなれば夫は強く、それが夫婦の絆というものなのかもしれない。支え合っていく。

 若い頃、女は男で変わる。妻は夫に従う。歳とともに、女は男を変える。夫が妻に従うようになるのだ。男女間、夫婦間のデスティニーみたいなものだ。


 手術前、誰にも見送られることなく、「頑張って、、、」と、手を握られながらのお定まりの儀式もなく、妻は手術室へいく。

 手術後、戻ってきた妻。「お疲れさまでした」看護師の声。家族の声はない、ない、ないのだ。家族と会うのはまだお預けだ。コロナ禍、家族の絆さえソーシャルディスタンスだ。


スマホのライン通知だけが日常を取り戻そうとブルブル震えている。恐ろしやコロナ。

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