24/112
桜並木
桜並木のなか、母子が歩いてきた。陽は温暖も、風が強い。
野球帽が飛ばされ、私の足もとに。
駆け寄って来る坊主頭、
「お母さんの手を離しちゃダメだよ」
遠い昔のオフレコ話、手と手が離れ、プツンと、母が遠ざかった。
泣くことさへ失った幼いボク。
桜色の女が通る。繁華街の片隅に桜、桜、一気、リアル、秘めやかに咲く。
大人になったボクは母を捜す、捜す、桜色の母を。
捨てた、捨てられたと、戸惑いながら桜、私の肩に。
捨てられ、捨てたと、人生の例えのように桜、母の肩に。
強がる母、哀しい眦の母。
それでも、桜、仁義を、正義を、志しを乗せて舞う。
そんなこと、なんもかも、忘れたネ。
車椅子のなか、穏やかな母、自分の夢路のなかで。
桜並木のなか、二組の、母子が歩いていく。




