4/大事なモノ
●メガネ屋”真心
「ほい、出来たよ。待たせてしまって申し訳ないね」
老人、オレのメガネを小綺麗なトレーに入れて差し出してくる。
レンズは照明を反射し、艶やかさが増したようにも見える。
オレは畳んだメガネを手に取り、顔にかける。
邪眼の右眼を、ゆっくりと開く。
かすむ視界。
徐々に老人の姿が鮮明に映っていく。
「どうだい?」
破顔する老人。
「…………」
当然、右のレンズにヒビはない。
視界もクリアだ。
違和感もなく、戦う前と同じ使用感を味わう。
右眼を、もう1度閉じて、開く。
痛みはない。
無事に邪眼の封印も、できているようだ。
「スッキリ視えます! ありがとうございます!」
その後、レンズ代を払って店を出ようとした時。
老人の店主は、入口まで見送りをしてくれた。
「若いうちは、譲れない気持ちもあるのはイイ事だけど、たまには尊重する気持ちも大切だよ」
「尊重、ですか?」
「ああ、尊重だ。悪い所ばかり見ないで、お互いの良い所を伸ばし合うんだ。そうすれば喧嘩もなくなるよ、きっと」
「”アイツら”とは仲良くできませんよ」
「じゃあ君はずっとそのスタンスで生きていくのかね? 少なくとも学生生活ずっと?」
「……その、つもりです。友達なんて邪魔ですから。特別なオレには必要ありませんよ」
「特別なオレ、か……ふふ、若いな君は……あ、失礼。馬鹿にしたわけじゃないんだが」
老人、大げさに手を振り弁明する。
そもそも話がかみ合わない理由も、老人が”アイツら”を同級生とでも勘違いしているからだろう。
「ボクも昔はそうだった。自分はすごい、独りでなんでもできる。そう思ってたよ」
でもね、と老人は続ける。
「大人になったらわかるよ。どれだけ自分の無力を痛感した上で、周囲と助け合って生きてきた人間ほど強い人はいないってね」
読了ありがとうございました。
またまた短編書こうとして、長編4部になりました(汗)
でも、簡単にまとめたつもりです。
この作品を通して、懐かしさや気恥しさが伝わっていただけたら嬉しいです。
もし感慨深くなった方や面白いと思った方。
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